配偶者が風俗通いをしていることを理由に離婚や慰謝料は請求できる?請求できるケースとできないケースを紹介
不倫夫が風俗通いをしているため、離婚や慰謝料請求したいと考えている方もいるでしょう。
一回きりや数回だけの風俗ではなく、風俗通いをしていれば夫婦関係や生活に支障をきたすような場合があります。
また、風俗嬢と店外で不倫しているというパターンもあるかもしれません。
夫の風俗通いを理由に離婚や慰謝料請求をすることは可能なのでしょうか?
今回は、夫の風俗通いに対する離婚や慰謝料請求について解説します。
風俗通いをしている夫と離婚することはできる?
仕事や付き合いで風俗に行くだけではなく、配偶者が風俗通いをしているというようなケースもあります。
妻の立場からすると、風俗通いを理由に離婚したいと考えることもあるかもしれません。
風俗通いを理由に離婚をすることはできるのでしょうか?
1.協議ならば離婚理由は関係ない
離婚をする方法には「協議」と「調停」と「裁判」の3種類があります。
協議とは夫婦が話し合って離婚について決める方法で、双方が合意すれば離婚を成立させられます。
そのため、離婚の理由は関係なく離婚することが可能です。
しかし、一方が離婚を拒否している場合には離婚することはできず、調停や裁判で離婚について争うことになります。
調停では調停員が介入して意見をまとめてくれますが、合意に至らない場合には裁判へ移行します。
2.裁判では法定離婚事由が必要
裁判で離婚が認められれば、相手が離婚を拒否していても法的に離婚を成立させることができます。
ただし、裁判で離婚が認められるには、「法定離婚事由」と呼ばれる法律で定められた離婚の理由が必要です。
配偶者が風俗通いをしている場合、次の法定離婚事由が該当する可能性があります。
①不貞行為
不貞行為とは、配偶者以外の人と性交渉を行うことです。
風俗通いにより風俗嬢と性交渉を行っていた場合は不貞行為になり、法定離婚事由として認められれば離婚することができます。
ただし、風俗嬢と食事などのデートを行うことや、キスや手を繋ぐなどの軽度のスキンシップは不貞行為には該当しません。
そのため、性交渉のない風俗店の利用や、風俗嬢と店外で会っていたものの性交渉をしていない場合は不貞行為が成立しないということになります。
②悪意の遺棄
夫婦には、同居して協力し合って生活する義務があります。
しかし、正当な理由なくこの義務に履行しないことを「悪意の遺棄」と呼びます。
風俗通いをしていること自体は悪意の遺棄に該当しません。
しかし、次のようなケースでは悪意の遺棄が成立する可能性が高いでしょう。
- 風俗嬢に入れ込んでしまい、家に全く帰ってこなくなった
- 生活費を風俗通いに使い込み、生活が困窮してしまっている。
- 妻の収入だけでは生活が厳しいにも関わらず、夫は自分の収入を全て風俗に使っている。
風俗通いにより、こうした状態に陥っていれば悪意の遺棄が成立するため、法的な離婚ができる可能性があります。
③婚姻関係を継続し難い事由
法定離婚事由の1つに「婚姻関係を継続し難い事由」というものがあり、夫婦関係の継続が客観的に見ても難しいを認められる場合には法的に離婚することができます。
風俗通いをしているという理由だけでは婚姻を継続し難い事由には該当しません。
しかし、次のようなケースでは離婚が認められる可能性があります。
- 風俗通いを止めるように何度もお願いしているが聞く耳を持ってもらえない
- 夫が風俗通いをするようになってからセックスレスになってしまった
- 風俗通いが原因で別居生活が長期化している
夫婦が別居をしている場合には離婚が認められやすいですが、離婚が認められる別居期間は5年が目安とされています。
ただし、婚姻年数やその他の事情なども考慮されるため、離婚できるかどうかは弁護士に相談してみることをおすすめします。
夫の風俗通いを理由に慰謝料は請求できるのか?
夫が風俗通いをしていることに対し、妻は精神的な苦痛を受けるでしょう。
そのため、その精神的苦痛に対して慰謝料を請求したいと考える方もいるかもしれません。
夫の風俗通いを理由に慰謝料は請求できるのでしょうか?
1.そもそも慰謝料とは
慰謝料とは損害賠償の一種で、精神的に受けた損害に対する賠償金のことを指します。
法律では、他人の利益や権利を不法に侵害する不法行為があった場合に加害者は被害者に損害を賠償する責任が生じることが定められています。(民法第709条)
不法行為に対する慰謝料は、当事者同士の協議や裁判で請求することが可能です。
2.不倫が離婚原因ならば請求できる
夫の風俗通いから不倫があったことが判明した場合であれば、不貞行為(不倫)を理由に慰謝料を請求することができます。
不貞行為は、夫婦の婚姻共同生活の平和の維持という法律で保護されている権利を侵害する行為に当たるため、不法行為に該当します。
また、不貞行為は不倫相手と配偶者の二人が共同で行う不法行為になるため、二人に共同で損害を賠償する責任が生じます。
夫の風俗通いを理由に慰謝料請求できるケースとは
夫の風俗通いを理由に慰謝料を請求するには、不法行為が成立しなければなりません。
夫へ慰謝料を請求できるようなケースは、次の通りになります。
1.風俗で性交渉をしたという証拠がある
不貞行為が成立していれば慰謝料を請求できるため、風俗で性交渉をしていた場合には不貞行為があったとして慰謝料を請求することができます。
ただし、慰謝料を請求するには証拠が必要です。
性交渉があったことの分かる証拠がなければ相手は慰謝料の支払いを拒否する可能性があるだけではなく、裁判になっても請求が認められません。
2.風俗嬢と店外で個人的に肉体関係を持っている
風俗嬢と店外で個人的に肉体関係を持ち、いわゆる不倫関係になっているようなケースもあるでしょう。
この場合、不貞行為が婚姻生活を破綻させたことになり、配偶者と風俗嬢に対して慰謝料を請求することができます。
ただし、この場合にも肉体関係があることの分かる証拠が必要になります。
夫の風俗通いを理由に慰謝料請求できないケースとは
夫の風俗通いを理由に慰謝料を請求できるケースを紹介しましたが、反対に慰謝料を請求できないようなケースもあります。
どのような場合に慰謝料を請求することが難しいのかご紹介します。
1.風俗で性交渉があったという証拠がない
前項で解説したように、慰謝料を請求するには証拠が必要です。
そのため、あなたが風俗で性交渉をしていると考えていても、実際に性交渉があったことの分かる証拠がなければ慰謝料を請求することは難しいと考えられます。
証拠がなければ、「ただ風俗に行っただけで性的サービスは受けていない」「風俗ではない」など相手は虚偽の主張をするかもしれません。
また、裁判で慰謝料を請求したいと考えても、証拠が提出できなければ裁判で慰謝料請求は認められないでしょう。
2.風俗嬢とデートしていたが肉体関係はなかった
風俗嬢と個人的に店外で会っていたことが判明したとしても、肉体関係がなければ不貞行為にはなりません。
食事や映画などのデートを二人で楽しんでいたり、手を繋ぐなどのスキンシップをしていたりしたとして、不貞行為ではないので慰謝料の請求は難しいといえます。
ただし、プラトニックな関係でも夫婦関係を破綻させるほど二人の関係が親密だった場合には慰謝料を請求できるケースもあるので、弁護士に相談してみるべきでしょう。
3.婚姻関係がすでに破綻していた
風俗で性行為をしていた場合や、風俗嬢と店外で肉体関係を持っていた場合には慰謝料を請求することができます。
しかし、それ以前から夫婦の関係が破綻していたような場合には慰謝料を請求することができません。
なぜならば、夫婦関係が破綻しているのであれば、法で守られるべき夫婦の婚姻共同生活の平和を維持する権利は存在しないと考えられるからです。
ただし、夫が一方的に夫婦関係が破綻していると考えていたとしても、妻が夫婦関係を修復しようとしていたような場合には、夫婦関係が破綻しているとは言えません。
夫の風俗通いを理由に慰謝料や離婚請求をする際のポイント
夫の風俗通いを理由に慰謝料や離婚を請求したいと考えているのであれば、請求を実現させるためにもいくつかのポイントを押さえておくべきです。
慰謝料や離婚請求を行う前に、次のポイントについて確認しておきましょう。
1.肉体関係はあったのか?
慰謝料を請求するのであれば、不貞行為が成立していなければなりません。
不貞行為は配偶者以外の人と性交渉を行うことになるため、まずは性交渉があったのかどうか確認することから始めるべきでしょう。
不貞行為があった場合には慰謝料だけではなく、法的に離婚請求を行うことも可能です。
2.証拠はあるのか?
慰謝料や離婚請求を行うのであれば、証拠が必要になります。
不貞行為が原因で慰謝料や離婚請求を行うのであれば、不貞行為の証拠が必要です。
また、不貞行為ではなく、悪意の遺棄や婚姻関係を継続し難い事由として離婚する場合でも証拠が必要になります。
証拠がなければ裁判では認められないため、証拠集めを行うようにしましょう。
どのような証拠が有効になるのか判断が難しいという場合には、弁護士に相談してみてください。
3.風俗通いが婚姻関係の破綻の原因と言えるのか?
そもそも婚姻関係の破綻した原因は、風俗通いにあったと言えるのか考え直してみてください。
もし風俗通いが始まる前から夫婦生活が破綻していたのであれば、風俗通いから発生した不貞行為や悪意の遺棄などを理由に離婚や慰謝料を請求することはできません。
風俗通いの前から夫婦関係が破綻していたのであれば、その原因で離婚や慰謝料請求が可能であるか検討し直す必要があります。
風俗嬢に対して慰謝料を請求することはできるのか?
風俗嬢と夫が性交渉を行ったのであれば、理論的には風俗嬢相手に慰謝料を請求することができます。
なぜならば、不貞行為は「共同不法行為」になるため、不貞行為を行った二人は共同で責任を負う義務が発生するからです。
しかし、店舗で性交渉を行っていた場合には、風俗嬢はあくまでも仕事として性交渉を行っているものと考えられます。
そのため、慰謝料の支払い義務を負うほどの違法性が認められないようなケースも多いです。
しかし、店外で個人的に風俗嬢に会って性交渉を行っていた場合には慰謝料を請求できる可能性は高いです。
ただし、風俗嬢は偽名を使っていることも多いため、相手の名前や住所を特定することが難しいようなケースも少なくありません。
相手の情報を特定できない場合には、探偵や興信所に相談してみましょう。
風俗通いを理由に慰謝料や離婚請求する場合にすべきこと
夫の風俗通いを理由に慰謝料や離婚請求を行う場合には、しっかりと準備をしてから請求を行うべきです。
慰謝料や離婚請求に向けて、次のことを行いましょう。
1.証拠を集める
慰謝料や離婚請求を行うのであれば、証拠が必ず必要です。
慰謝料や離婚を請求する原因となっていることを証明する証拠を集めましょう。
証拠は、客観的に見て判断できるような証拠が認められやすです。
相手に証拠集めをしていることがバレてしまうと証拠を隠されてしまう恐れがあるので、相手にはバレないように証拠集めを行うようにしましょう。
2.離婚する場合は財産を把握する
夫の風俗通いを理由に離婚したいと考えている場合には、離婚請求を行う前に夫婦の財産を把握しておきましょう。
離婚時には夫婦が婚姻期間中に築き上げた財産は分割されます。
基本的に財産は夫婦で2分割されることが多いので、預金や現金だけではなく、所有する車やマンションなど資産価値のあるものはノートなどに書き出しておくことをおすすめします。
そうすれば、相手が財産隠しや財産を処分してしまうことを予防でき、公平に財産分割を行えると考えられます。
3.弁護士に相談する
夫の風俗通いを理由に慰謝料や離婚を請求したいと考えている場合には、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士に相談することで、ご自身の場合は慰謝料や離婚請求することができるのかどうかを知ることができ、請求のために今後何をすべきか見通しを立てられるようになります。
また、相手と協議を行う場合でも全てを任せることができるため、精神的な負担も大幅に軽減されるでしょう。
慰謝料や離婚問題は解決まで精神的に辛いことも多くなるため、一人で抱え込まずに弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。
まとめ
今回は、風俗通いする夫への慰謝料や離婚請求について解説しました。
風俗通いをしているという理由で慰謝料や離婚を請求することは難しいですが、風俗通いから不貞行為や悪意の遺棄などがあった場合には慰謝料や離婚を請求することができます。
しかし、不貞行為や悪意の遺棄などを証明することが難しいというようなケースもあるでしょう。
お一人では問題解決が難しいようなケースも多いので、まずは専門家である弁護士に相談してみてください。
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