不倫慰謝料を支払う義務が生じるのは、どんなとき?

 
 

不倫した場合、必ず、慰謝料を支払う義務が生じるのでしょうか?

 
 
 

慰謝料とは

 

慰謝料請求とは、不法行為によって受けた精神的損害を金銭に換算した額を請求することをいいます。

 

このように、慰謝料を支払う義務が生じるためには、民法上の不法行為が成立しなければなりません。そのため、不倫行為があったとして、それが不法行為にあたらない場合は、慰謝料支払い義務は発生しません。

 

不法行為が成立するための要件は、次のとおりです。

 

  • ① 故意又は過失
  • ② 加害行為
  • ③ 損害の発生
  • ④ ②と③の因果関係

 

これらを不倫に即して、裁判になった場合の立証の場面にも留意して説明します。

 
 
 

①故意又は過失

 

不倫における「故意又は過失」とは、不倫した相手が結婚していることを知っていたか、又は、注意すれば知ることができたという意味です。
たとえば、本当に知らなかったとしても、相手が結婚指輪をしている、交際中一度も自宅に招かないなどの不自然な事情があると、注意すれば知ることができたといえ、過失が認められやすくなります。

 
 

[「独身だ」]

逆に言うと、不倫相手が独身だと巧妙に嘘をつき、身なりや交友関係も不自然なことがないため、これを真実と信じた場合は、故意過失がないことになります。この場合は慰謝料を支払う義務が生じません

 
 

言い逃れの限界

しかし、不倫期間が長ければ長いほど、相手が婚姻していることや、夫婦関係が維持できていることに気づく可能性が高くなるため、これらを知らなかったとの言い訳は難しくなります。
また、この故意過失が主観的なものであるからといって、単に「知らなかった」と主張すればよいわけではありません。
慰謝料を請求する側としては、加害者の認識そのものを立証するのではなく、これを推認させる事実により立証します。
具体的には、加害者や配偶者からの聞き取り、さらには、メールやLINE等のやりとりの履歴や内容によって、夫婦関係を知った上での言動の存在を、証拠として出してきます。このような場合には、もはや、「知らない」の言い逃れはできません。

 
 
 
 

②加害行為

 

不倫における加害行為の代表例は、不貞行為です。
不貞行為とは、配偶者としての貞操義務の不履行をいい、わかりやすいのが、配偶者ある者が、配偶者以外の異性と複数回にわたって性交渉、あるいはこれに類似する行為(口淫、手淫等)をすることです。

 
 

[肉体関係だけでない]

しかし、近年、性交渉にいたらないものであっても、夫婦の平穏、平和が害され、婚姻関係を継続させることを困難とするものであれば、精神的苦痛への賠償として、慰謝料支払い義務を認める裁判例が増えています。たとえば、愛情表現を含むメールのやりとりが対象となる裁判例もあります。

 
 

言い逃れの限界

不貞行為があったことを立証されない限り、慰謝料の支払い義務は生じません。
それでは、たとえば、ホテルや自宅での肉体関係の現場を押さえられなければ慰謝料を支払う義務が生じないということでしょうか?いいえ、その現場を押さえられなくても、肉体関係にあったことを間接的に立証されれば、慰謝料の支払い義務が生じます。
たとえば、ラブホテルへの出入り写真、LINEでセックスについてのやりとりがあれば、肉体関係の存在が推認されるのです。それだけでアウトです。

 
 
 

③損害の発生

 

不倫における損害とは、平穏な家庭・婚姻生活を壊されたことにより受けた精神的苦痛をいいます。不倫当事者の間で不貞行為があった場合、不倫された配偶者に精神的苦痛が生じるのは当然のことです。
逆に、不倫が始まる前から夫婦関係が破綻していたならば、もはや保護させる法的利益はありません。したがって、この場合の慰謝料支払い義務は発生しません。

 
 

④加害行為と損害の因果関係

 

不貞行為の結果として不倫相手の配偶者に精神的な苦痛を与えたという関係が必要です。
このため、すでに夫婦関係が破綻状態であった場合は、不貞行為との因果関係は認められず、この場合は、慰謝料の支払い義務が生じません。

 
 

立証上の注意点

ここで、婚姻破綻状態といっても幅があり、どこまでいけばその状態にあるか認定が難しいため、実際には慰謝料額の減額要因となるに過ぎない場合が多いです。

 

  • ・子も成人して、すでに別居状態であった
  • ・家ではほとんど会話もなく、夫婦で出かけることがなかった
  • ・離婚調停中であった、離婚に向けての話し合いが進みあとは条件だけの調整であった

 

これらの事情が認められる場合は、婚姻破綻状態に近いと言えます。慰謝料を請求された側は、その事実を立証する証拠をできるだけ集めなければならず、そのためには、不倫相手からの協力がとても重要になってきます。

 
 
 
 

時効消滅していない・除斥期間を経過しない

 

不法行為に基づく慰謝料請求権は、不倫相手の配偶者が不貞行為及びその相手を知った時から3年で、時効消滅します。また、不貞行為が始まった時から20年の経過で、除斥期間により自動的に消滅します。

 

このため、慰謝料請求された時点でこれらの期間を経過していない場合には、慰謝料支払い義務があります。

 
 

最後に

 

裁判上、不倫慰謝料請求は、これを主張する側で不貞行為等について立証責任を負います。請求された側は指摘された事実や証拠に争いがある場合は、自ら集めた証拠を用いて反証していくことになります。

 

仮に裁判にはよらずに当事者のみで話し合う場合でも、後にこじれて裁判に発展したときのことを視野に入れて交渉を進める必要があります。不倫問題でお悩みの方は一度弁護士にご相談ください。

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