配偶者の死後に浮気発覚した場合、慰謝料は請求できるのか?
不倫配偶者の死後に遺品整理や遺書で浮気が発覚するようなケースもあります。
すでに亡くなってしまった配偶者の浮気に怒りや悲しみを感じても、慰謝料を請求したいと考える配偶者はすでに亡くなってしまっています。
配偶者の死後の浮気発覚では、慰謝料を請求することができないのでしょうか?
配偶者の死後の場合、浮気の慰謝料の請求はできるケースと請求できないケースがあります。
そこで今回は、配偶者の死後に浮気発覚した場合の慰謝料について解説します。
ご自身の状況で慰謝料を請求できるのかどうか照らし合わせて確認してみてください。
配偶者の死後に浮気発覚した場合の慰謝料請求はどうなる?!
配偶者の死後に浮気が発覚した場合、慰謝料請求をしたくても請求すべき当事者がいない状態です。
すでに亡くなっている相手だからと諦めなければならないのでしょうか?
配偶者の死後に発覚した浮気の慰謝料請求について解説していきます。
1.そもそも浮気の慰謝料とは?
そもそも浮気の慰謝料とは、浮気をされたことで受けた精神的苦痛に対する損害賠償金を指します。
浮気や不倫は「不貞行為」と呼ばれ、民法上における不法行為に該当します。
不法行為があった場合、加害者は被害者に損害を賠償する責任が生じます。(民法第709条)
そのため、配偶者に浮気をされた場合は、不法行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償として慰謝料を請求することができるのです。
2.亡くなった配偶者への慰謝料はどうなるのか?
亡くなった配偶者の遺品整理をしていて浮気が発覚したり、遺書に浮気を謝罪する言葉があることで浮気が発覚したりするようなケースがあります。
この場合は慰謝料を請求したい相手が亡くなってしまっているため、慰謝料の請求権が失われてしまうと考えてしまう方もいるかもしれません。
しかし、加害者である配偶者が亡くなっても不法行為があったこと自体が消失するわけではありません。
そのため、浮気の慰謝料を請求することは可能です。
浮気をした配偶者が亡くなってしまっている場合、慰謝料を請求できる相手は「配偶者の相続人」と「浮気相手」になります。
配偶者の死後に浮気発覚した場合の慰謝料請求における4つのポイント
配偶者の死後に発覚した浮気に対する慰謝料請求の場合、知っておくべきポイントが4つあります。
慰謝料請求を行う前に、次の4つのポイントについて確認しておきましょう。
1.浮気の慰謝料請求には証拠が必要
浮気の慰謝料を請求するには、不貞行為があったということを立証できる証拠が必要です。
不貞行為とは、「配偶者以外の人と肉体関係を持つこと」を指します。
一般的に浮気の有効な証拠と言われているものは、ホテルに出入りしている写真や肉体関係があることの分かるメール内容、ホテルや旅行のレシートや領収書などが挙げられます。
ただし、現在進行形の浮気ではないため、ホテルに出入りしている写真など決定的な証拠を集めることが難しいようなケースがあります。
しかし、亡くなった配偶者の遺品整理をしていれば、メールや手紙、レシートや写真などの証拠が見つかるかもしれません。
また、遺書に浮気をしたことが記載されていれば「自白」として証拠になり得ます。
2.亡くなった配偶者の相続人には慰謝料を支払う義務が生じる
浮気をした配偶者に慰謝料を請求したいと考えても、すでにその配偶者が亡くなっている場合、相続人が慰謝料を支払うことになります。
原則的に亡くなった人の債務は相続人が受け継ぐことになり、慰謝料は債務の扱いになります。
そのため、浮気をした配偶者の相続人に慰謝料を請求することができます。
3.浮気の慰謝料請求には時効がある
浮気の慰謝料請求には時効があります。
不法行為による損害賠償の請求権は、「損害及び加害者を知った時から3年」「不法行為の時から20年が経過した時」に時効が消滅することが法律で定められています。(民法第724条)
つまり、浮気や浮気相手を知ってから3年間経過すれば、慰謝料を請求することはできません。
また、浮気自体が起こってから20年経過している場合も同様に時効が成立してしまい、慰謝料の請求権が消滅します。
4.浮気相手にも慰謝料を請求できる
浮気をした配偶者が亡くなってしまっていれば、配偶者側から慰謝料を請求することは現実的に考えると難しいと言えます。
しかし、浮気の慰謝料は浮気をした配偶者だけではなく、浮気相手にも請求することが可能です。
配偶者側に請求が難しい場合には、浮気相手への慰謝料請求を検討しましょう。
配偶者の死後の浮気発覚で慰謝料が請求できるケースとは
配偶者の死後に発覚した浮気の慰謝料請求の4つのポイントを基に、慰謝料が請求できるケースをご紹介します。
慰謝料が請求できるのは、次のようなケースです。
1.浮気の証拠が遺留品として残っている
浮気の慰謝料を請求する場合、不貞を証明できる証拠が必要です。
遺留品に浮気の証拠が残っているのであれば、浮気をした配偶者が亡くなっていたとしても浮気を証明することができます。
浮気相手と肉体関係があることの分かる証拠や、浮気を認める内容のメッセージや書面などを探しましょう。
2.自分以外の人が浮気した配偶者の相続人になっている場合
亡くなった配偶者自身に慰謝料を請求することはできなくても、その債務は配偶者の相続人が受け継ぐことになります。
離婚していなかった場合は配偶者(あなた)が相続人になるため、受け継いだ債務(慰謝料)は消滅します。
しかし、その他に子どもや亡くなった配偶者の両親、兄弟姉妹が相続人になる場合は、債務が法定相続に応じて分割されます。
浮気をした配偶者の親族が法定相続した分に対しては、浮気の慰謝料として請求することが可能です。
3.夫婦関係が破綻していない状態で浮気も知らなかった場合
そもそも亡くなった配偶者が浮気をしていた時期に、すでに夫婦関係が破綻していれば慰謝料を請求することはできません。
なぜならば、夫婦関係が破綻していれば法律で守られるべき夫婦生活の平和を維持する権利は存在しないと考えられるからです。
また、慰謝料請求には時効があるため、浮気や浮気相手を知ってから3年経過していれば慰謝料を請求できなくなってしまいます。
そのため、浮気や浮気相手を知って3年経っていない状態であれば慰謝料を請求することができます。
4.遺書に慰謝料を支払うことが記載されていた場合
亡くなった夫の遺書に浮気の事実を認め、慰謝料を支払うことが記載されていたのであれば慰謝料を受け取ることができます。
ただし、この場合も債務が慰謝料として亡くなった配偶者が第三者に金銭などを預けていた場合などを除けば、債務として法定相続人に分割されます。
そのため、浮気をした配偶者の親族に慰謝料として支払ってもらうことになると考えられます。
5.浮気相手が分かっている場合
亡くなった配偶者が浮気をしていた場合、浮気相手にも慰謝料を請求することができます。
ただし、慰謝料を請求するには浮気相手の情報が分かっている状態でなければなりません。
浮気相手も生存していれば、浮気相手に慰謝料を請求することが可能です。
もし浮気相手もなくなっている場合でも、浮気相手の相続人が債務を受け継ぐことになるため、浮気相手の相続人に請求することができます。
配偶者の死後の浮気発覚で慰謝料が請求できないケースとは
配偶者の死後の浮気発覚で慰謝料を請求できるケースを紹介しましたが、慰謝料を請求できないようなケースもあります。
慰謝料が請求できないケースは、次のような場合です。
1.すでに夫婦関係が破綻もしくは離婚していた
亡くなった配偶者が浮気をしていた時にはすでに夫婦関係が破綻していたり、離婚をしていた場合には、慰謝料を請求することができません。
そのため、配偶者の死後に浮気が発覚した場合、いつから不貞行為が始まったのかが慰謝料請求において重要なポイントになるでしょう。
配偶者が亡くなったタイミングで夫婦関係が破綻していたとしても、浮気が始まった時は夫婦関係が良好だったのであれば慰謝料を請求することができます。
2.相続人が相続を放棄した場合
配偶者が亡くなっていても浮気の慰謝料は相続人が債務として引き継ぐことになるため、請求することができます。
しかし、その相続人が相続を放棄すれば、財産だけではなく債務も受け継がれなくなってしまいます。
そうすると、相続人にも請求することができなくなってしまいます。
3.時効が成立している
浮気や浮気相手を知ってから3年、または浮気自体が起こってから20年が経過すれば、慰謝料の請求権の時効が成立します。
時効が成立すれば請求権が消滅するため、慰謝料を請求することができません。
慰謝料請求の時効が迫っているような場合には、内容証明の送付や裁判の申立てを行い、時効の進行を中断させましょう。
4.浮気相手に故意や過失がない
浮気相手に浮気の慰謝料を請求できるのは、相手に故意や過失があった場合です。
故意や過失とは、既婚者と知っていて肉体関係を持った場合や、注意深く観察すれば既婚者であることが分かった場合などが該当します。
しかし、亡くなった配偶者が独身や離婚手続き中だという嘘をついて相手と関係を迫った場合には、浮気相手に故意や過失はなかったと考えられます。
そのため、慰謝料を請求することはできません。
反対に、浮気相手に慰謝料を請求することで亡くなった配偶者が既婚であることを知れば、貞操権の侵害として慰謝料を請求される恐れがあります。
そうすると、浮気をした配偶者が亡くなっているため、相続人としてあなたが慰謝料を支払うことになります。
配偶者の死後に浮気相手へ慰謝料を請求する場合の注意点
配偶者の死後の浮気発覚で浮気相手へ慰謝料を請求する場合、注意すべき点があります。
浮気相手に慰謝料請求を行う前に、次の注意点について確認しておきましょう。
1.相手の情報が必要
浮気相手に慰謝料を請求するのであれば、相手の情報が必要です。
浮気相手が誰か分からない状態では、慰謝料を請求することはできません。
また、相手が分かっていたとしても、相手の名前や住所などの情報が必要になります。
慰謝料請求は電話やメールなどでも行えますが、内容証明郵便という郵送サービスを利用して書面を送付することが一般的です。
内容証明郵便で送付すれば、送付日や受取日、差出人、書面内容などを証明することができ、裁判に発展する際にも証拠として提出することができます。
内容証明は自宅だけではなく勤務先に送付することもできるため、相手の自宅もしくは勤務先の住所が必要です。
もし住所は分からないものの電話番号が分かっている場合には、弁護士に依頼すれば電話番号から契約者の情報を得ることができます。
2.配偶者が死亡していても求償権は存在する
浮気の慰謝料は本来であれば、亡くなった配偶者と浮気相手が責任を連帯して支払うものです。
しかし、配偶者が死亡していれば全額を浮気相手に請求したいと考える方も多いかもしれませんが、浮気相手が求償権を行使する恐れがあります。
求償権とは、自分の責任を超えて支払った損害賠償を共同不法行為者に請求できる権利です。
配偶者が死亡していれば、この義務は相続人であるあなたや子どもに継承されます。
そのため、浮気相手に慰謝料を請求する際には慰謝料を全額請求しないようにすることや、合意の際に求償権の放棄を約束してもらうことが大切です。
配偶者の死後に浮気発覚した場合の慰謝料は弁護士に相談しましょう
配偶者の死後に発覚した浮気の慰謝料を請求する場合、当事者が死亡しているため慰謝料の請求先や証拠集めなどが本来の慰謝料請求よりも複雑化してしまいます。
そのため、まずは専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、慰謝料を請求できるケースであるのか判断してもらえるだけではなく、証拠集めや今後の対処法などについてもアドバイスを得られます。
また、弁護士に依頼すれば慰謝料請求や交渉、示談書の作成など全てを任せられるため、精神的負担が大幅に軽減されるというメリットがあります。
まとめ
今回は、配偶者の死後に浮気発覚した場合の慰謝料請求について解説しました。
配偶者の死後に発覚した浮気でも慰謝料を請求できる可能性があります。
そのため、浮気をした配偶者が死亡しているからという理由で慰謝料を諦めるのではなく、相続人や浮気相手への慰謝料請求などに請求できることを知っておきましょう。
しかし、通常の慰謝料請求よりも複雑なことも多いため、まずは弁護士に相談してみてください。
弁護士に状況を説明すれば、慰謝料請求に向けて今後すべきことが明確になるはずです。
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