慰謝料とは?慰謝料はどんな時に請求でき、どのように請求するものなのかを解説

慰謝料とは?慰謝料はどんな時に請求でき、どのように請求するものなのかを解説

「慰謝料」という言葉を耳にしたことがあるという方は多いでしょう。

テレビのニュースやドラマなどでも出てくる言葉ですが、日常生活では頻繁に使用することが少ないものです。

そのため、実際に「慰謝料を請求する」「慰謝料を請求された」という場面になった時に、詳しい知識がなくて困ってしまうことが大半だと思います。

そこで今回は、慰謝料とはどんなものなのかについて詳しく解説します。

どんな時に慰謝料を請求することができ、どのように慰謝料が請求されるのかについても併せてご紹介します。

 

慰謝料とは?

 

慰謝料という言葉を聞いたことはあっても、慰謝料がどんなものなのか詳しくご存じない方もいるでしょう。

慰謝料とはどのような金銭のことを指すのでしょうか?

 

1.損害賠償について

 

慰謝料について知るにあたり、まずは損害賠償について解説していきます。

損害賠償とは、「他人に損害を与えた場合、被害者に対して加害者が損害を補償する」ことを指します。

つまり、治療費や通院費、修理費など加害者に対して請求できる損害の全ての総称が損害賠償です。

そして、損害を補償するように請求する権利を「損害賠償請求権」と呼びます。

損害賠償請求権は、債務不履行と不法行為の場合に生じることが法律によって定められています。

 

2.慰謝料は損害賠償の一部です

 

慰謝料とは、他人から何らかの損害を与えられた際に受けた精神的苦痛に対して支払われる金銭を指します。

損害賠償では他人に与えた損害を金銭で補償することになりますが、精神的損害も慰謝料として賠償を求めることができます。

例えば、自分の所有する物が他人によって破壊された場合、その物の金額を請求することで損害の賠償をすることができます。

それと同様に、他人に権利や名誉などを傷つけられた場合には、精神的損害を金銭で賠償することで心の傷が癒すという考えです。

 

慰謝料はどんな時に請求することができるのか?

 

慰謝料は損害賠償の一部であり、民法上で請求が認められている権利です。

それでは、慰謝料はどんな場合に請求することができるのでしょうか?

具体的に慰謝料が請求できるケースについてご紹介します。

 

1.不法行為と慰謝料について

 

他人の権利や利益を不法に侵害する行為は、「不法行為」と呼ばれています。

民法第709条には、「故意又は過失によって他人の権利または利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」ことが定められています。

つまり、不法行為によって損害が発生すれば、損害賠償を請求することができることが法律上で規定されていることが分かります。

そして、民法第710条には「他人の身体、自由もしくは名誉を侵害した場合は財産以外の損害に対しても賠償をしなければならない」ことが規定されています。

つまり、不法行為の責任を負う者には、精神的損害として慰謝料を請求できるということになります。

 

2.慰謝料が請求できるケース

 

前述したように合法的に慰謝料が認められるケースとは、不法行為があった場合です。

それでは、具体的にどのようなことが不法行為に該当し、慰謝料を請求できるのかみていきましょう。

 

①交通事故の被害に遭った場合

 

交通事故の被害に遭った場合、事故によるケガの治療費や通院費、休業補償などを含む損害賠償を請求することができます。

そして、交通事故では肉体的かつ精神的に苦痛を受けることになるため、慰謝料も請求することが可能です。

交通事故の慰謝料には、交通事故のケガが改善するまでの傷害慰謝料や、交通事故によって残ってしまった後遺症に対する後遺症慰謝料などの種類があります。

交通事故の慰謝料相場は入院日数や後遺症の程度によって算出されます。

 

②他人から暴力や暴言を受けた場合

 

他人から暴力を受けた場合は、暴行罪や傷害罪などの刑事罰が科せられます。

それと併せて、民事上で暴力を受けたことに対する苦痛への慰謝料を請求することが可能です。

また、暴言も言葉の暴力に該当し、侮辱罪や恐喝罪などの刑事罰だけではなく民法上の慰謝料を別途請求することができます。

暴力や暴言によって受けた被害の程度によって慰謝料の金額には大きな差が出ますが、相場は50万円~300万円と言われています。

 

③会社でセクハラやパワハラを受けた場合

 

近年、セクハラやパワハラという言葉が一般的に浸透していますが、職場内などで行われるセクハラやパワハラに対しても慰謝料を請求することが可能です。

セクハラは性的な嫌がらせのことを指し、パワハラは優位な立場の人が行う嫌がらせのことを指します。

セクハラやパワハラの慰謝料の相場は、数十万円~100万円と言われています。

セクハラやパワハラの内容や悪質性によって金額に変動があります。

 

④既婚者に独身だと騙されて肉体関係を持った場合

 

最近ではマッチングアプリでの出会いが一般的になりつつあり、その中で起こるトラブルの中で多いものが「相手が実は既婚者だった」というものです。

独身と偽る相手と知らずに肉体関係を持ってしまい、あとから既婚者だと分かった場合には、「貞操権の侵害」として慰謝料を請求することができます。

未婚の場合は性交渉する相手を自由意志で選ぶことができ、その権利を貞操権と呼びます。

貞操権の侵害は不法行為に該当し、慰謝料の相場は50万円~200万円です。

相手の交際への積極性や悪質性などが慰謝料の金額を決める判断材料になります。

 

離婚における慰謝料請求とは

 

離婚する際には、慰謝料を請求できるようなケースがあります。

離婚時には誰もが精神的苦痛を受けることになりますが、離婚時に必ず慰謝料が支払われるというものではありません。

どのような場合に離婚の慰謝料を請求することができるのでしょうか?

 

1.有責配偶者に対して慰謝料請求できる

 

離婚の慰謝料とは、離婚によって被る精神的苦痛に対する金銭です。

離婚の原因を作った配偶者のことを有責配偶者と呼び、精神的苦痛を受けた他方の配偶者が慰謝料を請求することができます。

そのため、性格や価値観の不一致など、一方の配偶者に非があるというわけではない場合には慰謝料の請求は認められない可能性が高いです。

 

2.離婚の慰謝料が請求できるケース

 

離婚時に慰謝料が請求できるケースは、法定離婚事由と共通する部分が多いです。

法定離婚事由とは法律で規定されている離婚理由のことで、法定離婚事由に該当すれば相手の合意がなくても裁判で離婚することができます。

離婚の慰謝料が請求できる具体的なケースについて見ていきましょう。

 

①不貞行為

 

不貞行為とは、いわゆる「不倫」や「浮気」のことを指します。

夫婦には貞操義務があり、配偶者以外の人と肉体関係を持つことは禁じられています。

貞操義務に違反する不貞行為は、法律上守られるべき夫婦の共同生活の平和を維持する権利を侵害するものです。

そのため、不貞行為を行った配偶者に対して、他方の配偶者は慰謝料を請求することができます。

不貞行為による慰謝料を請求する場合には、不貞行為を立証できる証拠を集めましょう。

肉体関係を持っていたことが分かるような写真やメッセージなどが有力な証拠になります。

 

②DVやモラハラ

 

DVやモラハラが離婚原因の場合、被害を受けた配偶者は慰謝料を請求することができます。

他人から受ける暴力や暴言は不法行為に該当し、それは夫婦関係でも同様です。

DVやモラハラによって身体や精神に被害を受けて医療機関に通院していた場合、その治療費や通院費用も請求することができます。

医師の診断書やケガの写真、モラハラ行為を行っている録音などを証拠として集めておくことをおすすめします。

 

③悪意の遺棄

 

民法第752条には、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。

こうした夫婦の義務を意図的に守らない行為を「悪意の遺棄」と呼びます。

例えば、次のような行為が悪意の遺棄に該当します。
 

  • 不倫相手の家から帰ってこなくなった
  • 妻が働くことを認めないにも関わらず、生活費を渡さない
  • 配偶者の合意を得ずに一方的に家を出て行き、別居している

 
悪意の遺棄により配偶者は精神的な苦痛を受けることになるため、慰謝料を請求することが可能です。

 

④性交渉の拒否

 

法定離婚事由は不貞行為や悪意の遺棄など具体的に定められているものもありますが、「その他の婚姻を継続し難い事由」も法定離婚事由として民法第770号に規定されています。

そして、この項目に一方の配偶者による性交渉の拒否(セックスレス)も含まれています。

ただし、セックスレスの判断基準は難しいものです。

性交渉はできるものの、「一方が拒否している」もしくは「一方が配偶者と性交渉したくないと考えている」といったようなケースで認められます。

 

3.不倫の場合は不倫相手にも慰謝料請求ができる

 

配偶者の不貞行為があった場合、慰謝料は配偶者だけではなく不倫相手にも請求することができます。

なぜならば、不貞行為は一人で行うものではなく、不倫相手と不倫をして配偶者の二人が共同して行う「共同不法行為」に該当するからです。

そのため、不倫をした配偶者と不倫相手が共同して責任を負うことになります。

配偶者の不倫が発覚して離婚しない場合には不倫相手にだけ慰謝料を請求するというケースが多いでしょう。

 

慰謝料請求はどのように行うのか?

 

慰謝料を請求できるケースについてご紹介しましたが、実際に慰謝料を請求する場合にはどのように請求すべきか困ってしまう方も多いでしょう。

慰謝料を請求する方法は、大きく分けると次の3つの方法があります。

 

1.当事者同士の協議

 

裁判所を通さずに慰謝料は請求することができ、その場合は当事者同士の協議になります。

被害者は加害者に対して直接慰謝料を請求し、示談するための話し合いを行います。

ご自身で慰謝料を請求する方法はメールや電話などでも可能ですが、内容証明郵便という証拠をして残すことができる郵便で行われることが多いです。

また、当事者同士の話し合いはスムーズに進みにくいため、弁護士が代理人として請求を行うケースも少なくありません。

 

2.調停

 

当事者同士の協議で慰謝料の合意に至らなかった場合、家庭裁判所に申し立てて調停を行うことができます。

調停とは、裁判とは異なり和解や合意を目指すための裁判手続きです。

裁判所で選定された調停員という第三者が介入者することで、双方の意見を聞いた上で意見をまとめて調整を行います。

ここで双方が合意に至れば調停証書が作成され、この調停証書は裁判の判決と同様の効力を持ちます。

 

3.裁判

 

当事者同士の協議や調停で合意が得られなかった場合、相手もしくは自身の居住する地方裁判所に申立てを行い訴訟で争うことになります。

裁判で慰謝料を請求すれば、証拠などを踏まえて裁判官が判断をします。

相手の合意は必要なく、判決には強い強制力があるため、相手が従わなかった場合には差し押さえを行うことが可能です。

 

慰謝料を請求する場合に注意すべきこと

 

慰謝料を請求する方法をご紹介しましたが、慰謝料請求を成功させるには注意点について知っておく必要があります。

あとから慰謝料請求で失敗や後悔しないためにも、次のことに注意しましょう。

 

1.慰謝料を請求するには証拠が必要

 

慰謝料を請求するためには、まず慰謝料を請求する理由になった不法行為の証拠が必要です。

証拠がなければ相手は不法行為を否定する可能性や、慰謝料の支払いを拒否する可能性があります。

また、裁判所の申立てにも証拠が必要になるため、証拠がなければ慰謝料の支払いは認められない可能性が高いです。

慰謝料の請求を行う前に、しっかりと証拠集めをしておきましょう。

 

2.慰謝料請求の合意に至った場合は公正証書を作成すべき

 

当事者同士の協議で慰謝料請求が合意に至った場合、合意書や示談書を作成します。

口約束では後でトラブルになる可能性があるため、必ず書面に残しておくべきです。

そして、こうした書面は公正証書で作成することをおすすめします。

公正証書とは公正役場で作成できる書面で、強制執行許諾文言付きで作成すれば裁判の判決書と同様の効力があります。

そのため、相手が慰謝料の支払いを怠れば、その書面によって財産を差し押さえることが可能です。

 

3.慰謝料請求には時効がある

 

慰謝料を請求するかどうか悩んでしまったり、後回しにしてしまったりしていると、時効が成立してしまうことがあるので注意が必要です。

慰謝料の請求権は、3年で消滅してしまいます。

被害者が損害や加害者を知った日が起算点になり、時効が成立すれば慰謝料を請求することは出来ません。

そのため、少しでも早く慰謝料は請求することをおすすめします。

 

まとめ

 

今回は慰謝料について解説しました。

不法行為があった場合に精神的に受けたダメージに対して慰謝料を請求することができます。

慰謝料が請求できるのかどうか判断が難しい場合や、慰謝料の相場額を知りたいという場合には、弁護士に相談しましょう。

また、弁護士に慰謝料請求を任せれば、手続きや交渉など全てを任せることができます。

慰謝料を請求できるようなケースかもしれないという場合には、一人で悩まずにまずは弁護士に話を聞いてみてください。

 

 

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