不倫の慰謝料請求には時効がある?!時効成立前の慰謝料請求には要注意!

配偶者が不倫をした場合、慰謝料請求をすることができます。
しかし、その慰謝料請求には時効があるということはご存知でしょうか?
 
いつでも慰謝料請求できるだろうと放っておけば、時効が成立して慰謝料請求できなくなってしまう恐れがあります。
そうは言っても、不倫の事実を知るまでに時間がかかってしまったケースや、相手の特定に時間がかかってしまうようなケースもあるでしょう。
こうした場合には慰謝料請求の時効はどのようになるのでしょうか?
 
今回は、不倫慰謝料請求の時効について解説します。
 

不倫の慰謝料請求には時効がある?!

 
不倫は民法上の不法行為であり、被害者に対して損害を賠償する義務負うことが民法709条に定められています。
そのため、配偶者が不倫をしていた場合には賠償責任として慰謝料を請求することができます。
ただし、不倫の慰謝料請求には時効があるので注意が必要です。
 

1.不倫慰謝料請求の時効とは

 
配偶者の不倫が事実であれば慰謝料請求をすることができますが、不法行為への慰謝料請求には時効が存在します。
不倫があったことを無かったことにできるというものではありませんが、不倫に対する慰謝料請求をできる期限として時効が設けられているのです。
 
不倫を含む不法行為への慰謝料請求の時効に関しては、民法724条に「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき」「不法行為の時から20年間行使しないとき」と規定されています。
つまり、不倫の事実や不倫相手を知った時から3年間慰謝料請求を行わなかった場合や、不倫から20年経過した場合に時効が成立するということになります。
時効が成立すれば、慰謝料を請求する権利は消滅するため慰謝料請求することはできません。
 

2.民法改正による時効の注意点

 
不倫の慰謝料請求の時効に関しては、民法改正によって変更された部分があるため注意が必要です。
「不法行為の時から20年間」という期間は旧民法では除斥期間とされていました。
除斥期間なので時効とは異なる扱いになり、時効の中断や停止をすることができなかったのです。
しかし、民法改正によって20年間の期間も時効と明記されるようになったため、慰謝料請求できる範囲が広がったと言えます。
 
ただし、2020年(令和2年)3月31日までに不倫から20年経過している場合には、改正前の民法が適用されることになり、除斥期間の経過により慰謝料請求することはできません。
 

不倫慰謝料の時効はいつから起算される?

 
不倫の慰謝料請求には「3年」「20年」という時効があるということが分かりましたが、時効はいつからカウントダウンされるのでしょうか?
時効のカウントダウンが始まる日のことを「起算日」と呼びます。
不倫の慰謝料を配偶者に請求する場合と、不倫相手に請求する場合と、それぞれの時効の起算日について見ていきましょう。
 

1.配偶者に請求する場合

配偶者へ不倫慰謝料の請求を行う場合の時効の起算日は、次の3通りがあります。
 

  • 不倫の事実を知った日
  • 不法行為があった日
  • 離婚した日

 
慰謝料請求の時効は「損害を知ってから3年間」になるため、「不倫の事実を知った日」が起算日になり、そこから3年以内に慰謝料請求を行いう必要があります。
また、「不法行為から20年間」という時効の考え方もあるため、「不法行為があった日」が起算日となり、そこから20年間の間であれば慰謝料請求を行うことができます。
 
つまり、配偶者の不倫に気付いた時点で3年を経過していた場合でも、不法行為があった日から20年以内であれば慰謝料請求を行うことができるのです。
さらに、配偶者の不倫が原因で離婚する場合には、「離婚した日」を起算日として3年以内であれば慰謝料請求を行うことができます。
 
不倫は法定離婚事由の1つであり、配偶者が不倫をすれば法律上の離婚原因として認められます。
そのため、不倫が原因で離婚するのであれば「離婚した日」を起算日として考えることができ、離婚後にも3年以内であれば慰謝料請求を行うことが可能です。
 

2.不倫相手に請求する場合

不倫は共同不法行為であり、不倫を行った二人に責任が生じるものと考えられています。
そのため、配偶者だけではなく不倫相手にも慰謝料請求することが可能です。
不倫相手へ不倫慰謝料を請求行う場合の時効の起算日は、次の2通りがあります。
 

  • 不倫の事実を知り、不倫相手を特定できた時
  • 不法行為があった日

 
不法行為の慰謝料請求の時効は、「損害及び加害者を知った時から3年間」です。
つまり、不倫相手へ慰謝料請求を行う場合の時効の起算日は「不倫の事実を知り、不倫相手を特定できた時」になります。
 
配偶者の不倫をしていることが判明したものの相手を特定できない場合には、時効のカウントダウンは始まりません。
不倫相手を特定することができてから時効が起算され、3年で時効になるのです。
ただし、「不法行為があった日」を起算日として20年経過すれば時効は成立するため、相手が特定できなくても20年経過すれば慰謝料請求することはできません。
 

不倫の時効が成立したら慰謝料請求はできないのか?

 
不倫の慰謝料請求には法律で定められた時効がありますが、これらの時効を過ぎてしまった場合には慰謝料を請求することはできないのかと疑問に思っている方もいるでしょう。
裁判で慰謝料を請求する場合であれば、基本的に法律上の時効が経過していれば慰謝料請求は認められません。
 
しかし、当事者同士の話し合いの場合であれば、慰謝料請求を行うことは可能です。
相手が慰謝料の支払いに合意をすれば、慰謝料を受け取ることができます。
相手が時効のことを知らない場合でも、請求する側は時効に関して相手に伝える義務はありません。
 
もし相手が後から「時効を知らなかった」と主張したとしても、支払いは有効になります。
ただし、時効を過ぎた相手に執拗に慰謝料を請求することや、脅迫と思われるような言葉で請求すれば、脅迫罪など罪に問われる可能性があるので注意が必要です。
 

不倫慰謝料請求の時効は止められる?

 
不倫の慰謝料請求の時効が迫っている場合には、時効に間に合うように慰謝料請求の準備をしなければならないと焦ってしまうでしょう。
しかし、慰謝料請求の時効は「更新」することが可能です。
慰謝料請求の時効の更新や、時効を更新する方法についてご紹介します。
 

1.時効の更新とは

 
不倫の慰謝料請求の時効が迫っている時に何もしなければ時効は成立してしまいます。
しかし、時効がカウントダウンされることを止め、新しく時効を進行させることができます。
このことを「時効の更新」と呼びます。
 
民法改正前には「時効の中断」や「時効の停止」などと呼ばれていましたが、2020年4月1日より「時効の更新」と呼ばれています。
時効が止まれば、これまでカウントダウンされていた期間はリセットされ、時効が止まった段階から起算して時効の進行が開始されることになります。
 

2.不倫慰謝料請求の時効を更新する方法

 
不倫の慰謝料請求の時効を更新するには、法律で定められた時効の完成猶予事由を行う必要があります。
完成猶予とは、時効を完成させることに猶予期間を与えるという意味です。
時効の完成猶予事由は、次の5つの方法が挙げられます。
 

①裁判で請求する

 
裁判上の慰謝料請求の手続きを行えば、時効の完成が猶予されることが民法147条に規定されています。
つまり、裁判所へ不倫慰謝料請求の訴訟を提起した時点から時効を更新することができるということになります。
 
不倫の慰謝料請求を行う方法は当事者同士の協議でも可能ですが、時効が迫っている場合には裁判で請求して時効を更新することを検討すべきです。
確定判決によって慰謝料請求の権利が確定すれば、時効はリセットされ、ゼロからカウントダウンされることになります。
 

②内容証明で催告する

 
書面で相手に慰謝料の支払いを請求する「催告」を行えば、時効の完成が猶予されます。
催告をした時から6カ月間は時効の完成が猶予されることが民法150条に定められています。
 
一般的に慰謝料請求を行う場合には、内容証明郵便と呼ばれる文書の内容を証明する郵便を利用します。
催告でも内容証明を使用すれば、いつ・誰に・どんな内容の書面を送付したのか証明することができます。
また、相手が書面を受け取ったのかどうかも知ることができるため、相手の手元に書面が届いたのかどうか心配する必要がありません。
そのため、時効が迫っている場合には内容証明郵便で催告をするようにしましょう。
 

③債務承認を行う

 
債務承認とは、相手が慰謝料の支払い義務を認めることを指します。
債務承認を行えば、債務を認めた日を起算日として新たに時効を更新することができます。
ただし、債務承認を行う際には慰謝料を支払う義務を認めたことや、署名捺印などを書面化して証拠として残すようにしましょう。
 

④強制執行・仮差押え・仮処分

 
強制執行の手続きを行えば、時効の猶予が完成され、手続きを終えた時に時効が更新されることが民法148条に定められています。
また、仮差押・仮処分の手続きを行った場合にも時効の完成が猶予されます。
 

⑤協議を行うことへの合意を得る

 
慰謝料の権利について協議を行うことに相手が合意し、このことを書面もしくは電磁的記録した場合には時効の完成が猶予されます。
この完成猶予事由は民法改正によって新たに加わった内容であり、民法151条に定められています。
この場合の時効の完成の猶予は、次の内のいずれかが採用されます。
 

  • 協議への合意を得た時から1年
  • 協議への合意において定められた協議期間(1年未満に限る)を経過した時
  • どちらかが協議の続行を拒絶する旨の書面による通知をした場合は、その通知から6カ月を経過した時

 

慰謝料請求の時効が迫っている時にすべきこと

 
不倫の慰謝料請求の時効が迫っている場合には、迅速に行動をすることが重要になります。
しかし、慌てて慰謝料請求の準備を行えば、適切な慰謝料請求ができない可能性もあります。
慰謝料請求の時効が迫っている場合には、次のことを行うようにしましょう。
 

1.迅速に証拠を集める

 
不倫の慰謝料請求を行うには、不貞行為があったという証拠が必要です。
証拠がなければ相手は不倫を否定する可能性もありますし、裁判では証拠がなければ慰謝料請求は認められません。
そのため、不貞行為を立証できるような証拠を集めなければならないのです。
 
不貞行為とは「配偶者以外と肉体関係を持つこと」なので、肉体関係があったことの分かる写真や動画、メッセージなどを探しましょう。
ホテルに出入りしている写真や、ホテルや旅行の利用明細なども証拠になります。
時効が迫っているため迅速に証拠を集める必要があるので、弁護士に証拠集めの相談を行うことや、探偵や興信所を利用することも検討しましょう。
 

2.時効の更新を行う

 
不倫の慰謝料請求の時効が迫っている場合には、早急に時効が完成することへ猶予を持たせるための手続きを行う必要があります。
 
裁判所に提起することで時効の完成に猶予を持たせることができますが、書類を作成するには時間がかかってしまいます。
そのため、多くの場合は内容証明郵便で相手に催告を行う方法で時効が完成することを止めます。
どの方法を選ぶべきかはケースバイケースなので、ご自身の状況に合った時効の完成猶予事由を選ぶようにしましょう。
 

3.弁護士に相談する

 
時効が迫っている場合には迅速に証拠集めや時効の更新を行う必要がありますが、ご自身の力だけで全てを行うことは難しいケースも多いでしょう。
手続きに不備があったり、証拠が不十分だったりすれば、再び準備をしなければならないので時効がどんどん迫ってきてしまいます。
 
迅速に全ての手続きを進めるためにも、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、証拠集めのアドバイスや内容証明郵便などの書面作成も任せることができます。
また、協議の場合には相手と交渉することなども任せられるため、精神的な負担を減らせるでしょう。
 

まとめ

 
今回は不倫の慰謝料請求の時効について解説しました。
不倫の慰謝料請求の時効は「3年」と「20年」の2種類があり、時効までまだ余裕があると考えている方もいるかもしれません。
しかし、不倫の慰謝料請求は早い段階で行う方が証拠集めなどもスムーズに行いやすいため、慰謝料請求は少しでも早く行うことがおすすめです。
 
時効が迫ってきている場合でも、時効を更新させる方法があるので落ち着いて対処をすることが大切です。
確実な慰謝料請求を行うためにも、まずは弁護士に相談するようにしましょう。

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