不倫相手が妊娠した場合、不倫慰謝料はどうなる?今後どのように対処すべきか?
不倫をした結果、不倫相手が妊娠してしまったことでお悩みではありませんか?
妊娠が発覚した場合には、どういった不倫の形であったとしてもお腹の子供のことをどのようにすべきか真剣に考えなければなりません。
いずれも相手の女性にとっては大きな決断が必要になりますし、妻が不倫と妊娠を同時に知れば大きな衝撃を受けることになるでしょう。
そのため、あらかじめ慰謝料や今後の対処法について知っておきたい方も多いはずです。
そこで今回は、不倫が妊娠した場合の不倫慰謝料や今後の対処法について解説します。
不倫相手が妊娠してしまった場合、慰謝料請求はどのなるのか?
法律上で不倫は「不貞行為」と呼ばれ、配偶者以外の異性と肉体関係を持つことを指します。
そして、不貞行為は民法709条に定められている不法行為に該当します。
不法行為で損害を与えた場合には損害賠償を行うことが法制度により定められており、不倫では慰謝料として請求することができます。
不倫相手が妊娠してしまった場合に発生すると考えられる慰謝料について見ていきましょう。
1.配偶者からの慰謝料請求
夫(妻)が不倫をしていたことを知った場合、夫婦間でも慰謝料請求を行うことができます。
不倫慰謝料の金額はさまざまな状況を全て考慮した上で決められますが、精神的苦痛が大きいと判断されるほど慰謝料額は高額になります。
不倫相手の妊娠は配偶者に精神的に大きな苦痛を与えることと判断されるため、慰謝料金額は高額になる傾向です。
ただし、配偶者と離婚しない場合には慰謝料の請求をしても同じ家計から支払われることになるため、配偶者に対する慰謝料請求を行ないことが多くなっています。
2.配偶者から不倫相手への慰謝料請求
不倫は共同不法行為に該当し、不倫をした当事者同士に共同の責任が生じます。
そのため、配偶者は夫だけではなく不倫相手にも慰謝料請求を行うことができるのです。
不倫相手が妊娠してしまったから慰謝料を請求できないということはありません。
既婚者と知っていながら肉体関係を持ったことは故意に不法故意を行ったことになります。
そのため、配偶者は不倫相手に対して慰謝料を請求することができます。
3.不倫相手の配偶者からの慰謝料請求
もし不倫相手も既婚者だった場合、相手の配偶者から慰謝料請求をされる可能性もあります。
不倫相手の配偶者からの慰謝料の金額の場合も、妊娠させたことは慰謝料金額が増額になる要素になります。
ただし、不倫相手側の夫婦関係が破綻していた場合には、法律上で守られる夫婦の権利や利益は存在しないと判断されるため、慰謝料を支払う必要はありません。
また、双方の夫婦が不倫発覚後も婚姻関係を継続する場合には、互いに慰謝料を請求しても金銭的なメリットが少ないため慰謝料請求が行われないことも多いです。
4.不倫相手からの慰謝料請求
不倫相手を妊娠させてしまったことで、不倫相手から妊娠に関する慰謝料請求をされることはありません。
性交渉は男女が合意の基で行われるため、妊娠させたとしても権利は侵害されたとは言えません。
ただし、レイプや避妊していると嘘をついて性交渉した場合には権利が侵害されたとして慰謝料請求される場合があります。
また、既婚者であることを隠して性交渉を行った場合も慰謝料を請求される可能性があります。
その場合は、「貞操権の侵害」による不法行為が成立し、慰謝料を請求されることになります。
貞操権とは性的な関係を結ぶかどうか自由に決定する権利ですが、独身と偽って性交渉をさせられた場合には貞操権が侵害されたことになります。
この場合の慰謝料金額も妊娠させたことは増額の要素となるため、慰謝料が高額になる可能性があります。
不倫の慰謝料請求を請求するための条件
不倫相手を妊娠させたことで発生する可能性のある慰謝料について紹介しましたが、慰謝料請求をするには一定の条件を満たしている必要があります。
不倫の慰謝料を請求するための条件は次の通りです。
1.当事者同士に肉体関係がある
不倫の基準についての考え方は個人差がありますが、法律上の不貞行為とは「配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと」を指します。
そのため、当事者同士に肉体関係がある場合に不倫は成立しますが、肉体関係がなければ法律上で不倫とは言えません。
ただし、不倫相手が妊娠している時点で肉体関係があることは明確なので、この場合には慰謝料が発生します。
2.不倫前や不倫時に夫婦関係が破綻していない
夫婦は「共同婚姻生活の平和を維持する権利や利益」が法によって守られています。
不貞行為はこの権利や利益を侵害するため不法行為と判断され、慰謝料が発生することになります。
しかし、不倫が始まる前や不倫をしていた時に、夫婦関係が破綻していれば守るべき権利や利益は存在しないため、慰謝料も発生しません。
つまり、不倫の慰謝料を請求できるのは、不倫前や不倫時に夫婦関係が良好だった場合です。
ただし、夫婦両者が破綻していると考えている場合のみとなり、一方的に片側が離婚などを主張している場合は夫婦関係が破綻しているとは言えません。
3.不倫相手に故意や過失がない
不貞行為は不法行為ですが、不法行為は故意や過失によって相手に損害を与えることを指します。
つまり、不貞行為も故意や過失が存在しなければ成立しません。
相手が既婚者であることを知りながらも肉体関係を持った場合や、最初は知らなかったものの途中で既婚者である事実を知っても関係を継続した場合には故意や過失があったと判断されます。
反対に、独身であると偽って肉体関係を結んだ場合や、既婚者と思われないように行動して関係を継続していた場合には故意や過失は認められず、慰謝料請求することはできません。
不倫相手の妊娠が発覚した場合にすべきこと
不倫相手の妊娠が発覚した時には、混乱してどのように対処すべきか分からなくなってしまう方も多いでしょう。
妊娠は女性にとって大きな出来事になるため、相手の身体のことを考えながら慎重に対処する必要があります。
不倫相手の妊娠が発覚した場合には、落ち着いて次のことを順に行っていきましょう。
1.妊娠の事実確認を行う
相手から妊娠したという話を聞いた後には、妊娠の事実を確認する必要があります。
ただ月経が遅れているだけの可能性もあるため、妊娠検査薬で検査を行ってもらうようにしましょう。
市販の妊娠検査薬で検査できるのは、一般的に妊娠5週目(月経予定日から1週間後)からです。
適切なタイミングで妊娠検査薬による検査を行い、陽性反応が出た場合には産婦人科での検査も行います。
また、不倫相手と妊娠が成立しそうなタイミングで性交渉を行っていたのかも確認する必要があります。
女性が妊娠するタイミングは排卵日の前後になるため、月経開始から2週間前後経過した時です。
そのタイミングで避妊をせずに性行為を行っていたのであれば、妊娠に繋がったと考えられます。
2.お腹の子供の今後について話し合う
妊娠検査などを行って妊娠していることが確定した場合には、お腹の子供の今後について話し合わなければなりません。
出産するのか、中絶するのか、2択の選択肢になります。
「決められない」「話し合いたくない」などと話し合いを引き延ばしたとしても、その間にもお腹の子供は成長していきます。
もし中絶を行うのであれば、母体保護法により妊娠21週6日までに中絶手術を受けなければなりません。
すぐに中絶手術は受けられるものではなく、事前の検査や手術日を決める必要があります。
そのため、なるべく早い段階で双方の意見を出し合い、話し合いの場を持つべきでしょう。
3.当事者同士の今後の関係について話し合う
お腹の子供の今後だけではなく、不倫をした当事者同士の今後の関係について話し合う必要もあります。
双方が既婚者の場合、不倫相手は自身の配偶者に黙ったまま出産することは法的な問題だけではなく倫理的にも困難であると考えられます。
もし出産するのであれば相手の配偶者とも話し合い、今後どちらが出産した子供と母親と生活するのかといった点について話し合います。
不倫に相手が独身の場合には、配偶者と離婚して不倫相手と再婚を前提に出産してもらうという選択肢もありますが、離婚や再婚をせずに不倫相手が一人で出産して子供を育てるという選択肢もあります。
不倫相手が一人で出産するという選択をした場合には、認知をしなければ不貞相手の男性は法的な父親にはなりません。
4.夫婦の今後の婚姻関係について話し合う
不倫相手が中絶を行うのであれば、自身の配偶者には不倫や妊娠を隠すことができるかもしれません。
しかし、相手が出産する場合や、中絶をするもののトラブルが大きく発展した場合には配偶者には不倫や相手の妊娠について打ち明けなければならないでしょう。
そうすると、夫婦が今後も婚姻関係を継続するのか、それとも一度別居をして考えるのか、離婚をするのか、夫婦の関係性について話し合うことになります。
自分が今後の婚姻関係をどうしたいのか考え、相手に冷静に伝えましょう。
不倫相手の女性が中絶をする場合はどうなるのか?
不倫相手の女性が妊娠したものの話し合った結果、中絶を選ぶという場合もあるでしょう。
中絶をするには手術を行う必要があり、女性にとっての負担は大きいものとなります。
中絶する場合にもいくつか行うべきことがあるので、相手の体と心を気使いながら話し合いを行いましょう。
1.中絶する場合に発生する費用
中絶をするには費用が発生します。
妊娠初期の段階であれば15~20万円ほどが相場となり、妊娠13週目以降になると入院も必要になるため30~50万円ほど費用が必要になります。
また、妊娠検査や中絶手術前の検査、交通費なども発生します。
双方の合意の基で中絶を行うため、医療費は折半するという裁判例があります。
そのため、半額を負担することを提示することができますが、女性の体への負担や後からのトラブルを避けるために男性側が全額負担するケースも少なくありません。
また、妊娠や中絶で仕事を休んでいる場合には休業損害も請求される可能性もあります。
2.中絶同意書へのサインや、費用に関する誓約書の作成
中絶を行うのであれば、中絶を行う本人と妊娠させた相手の二人が中絶同意書にサインしなければなりません。
中絶同意書は中絶手術を行う前に病院から渡される書類であり、レイプなどで相手が分からないという場合でない限りは双方のサインが必要になります。
また、医療費や休業損害などの支払いは、後から請求金額の変更や追加請求が行われることがないように誓約書を作成します。
配偶者に内密にする場合であれば、秘密保持についても誓約書に記載します。
一方的に誓約書を作成することはできないので、誓約書の内容については事前に話し合いましょう。
3.手術への付き添いやアフターケアの相談
中絶手術の当日の付き添いや、アフターケアについても話し合う必要があります。
妊娠初期であれば日帰り手術になりますが、手術後は麻酔が効いている状態なので一人で帰宅することは避けるように病院からの注意があります。
また、手術をしたからといって全てが終わるというわけではなく、術後1~2週間は出血や発熱などが症状として現れるケースもあります。
女性にとって術後も身体への負担があるため、必要なケアについても話し合っておくべきでしょう。
配偶者と離婚する場合はどうなるのか?
不倫と不倫相手の妊娠が発覚したことにより、配偶者が離婚を希望する場合もあるでしょう。
もし配偶者と離婚することになった場合、どのようなことが起こる可能性があるのでしょうか?
1.慰謝料請求が高額になる可能性がある
離婚をするのであれば、配偶者から不倫に対しての慰謝料を請求される可能性があります。
もし慰謝料を請求された場合、不倫によって婚姻関係を破綻させてしまったと判断されるため、慰謝料の金額は高額になるでしょう。
また、相手が妊娠したことは配偶者にとって精神的に大きな苦痛を受けることになるため、さらに慰謝料金額は増額されると考えられます。
2.その他の離婚条件が不利になる可能性がある
離婚するのであれば、さまざまな離婚条件について話し合いが行われます。
不倫だけではなく相手を妊娠させてしまったことは、離婚条件を決める際にも不利に働く可能性があります。
もし子供がいる場合であれば、親権獲得にも影響があるでしょう。
不倫相手が妊娠した場合の慰謝料請求は弁護士に相談すべき
不倫相手が妊娠した場合、さまざまな慰謝料請求が行われる可能性が考えられます。
慰謝料請求をされたからといって全てを言われたままに支払っていては、相場よりも遥かに高額な慰謝料を支払うことになるかもしれません。
ご自身で解決しようとするのではなく、弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士に相談することで慰謝料の減額を期待することができますし、交渉や今後の対処についてもアドバイスを受けられます。
まとめ
今回は不倫相手が妊娠した場合の慰謝料について解説しました。
妊娠したという話を聞いて困惑してしまい、一人で慌てて対処をすれば後悔するような結果や大きなトラブルに発展してしまう恐れがあります。
そのため、早期段階で弁護士に今後の対処について相談することをおすすめします。
不倫相手の妊娠による慰謝料請求は複雑な点も多いので、専門家である弁護士のサポートを受けましょう。
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