不倫が原因で熟年離婚...どれくらい慰謝料を請求できるのか?少しでも高額な慰謝料を請求するためのポイントを紹介
不倫長年連れ添った夫婦でも離婚に至るようなケースは珍しくありません。
熟年離婚の原因にはさまざまなものがありますが、不倫が原因で離婚するような場合もあるでしょう。
長く人生を共にしたパートナーだからこそ不倫していたことが判明すれば、受ける精神的苦痛も大きいと考えられます。
不倫が原因で熟年離婚する場合、どれくらいの慰謝料の金額を請求できるのでしょうか?
今回は、不倫が原因で熟年離婚する場合に少しでも高額な慰謝料を請求するためのポイントについて解説します。
熟年離婚したい場合、不倫が原因で離婚はできるのか?
熟年婚をしたいと考える理由はさまざまなものがあると思いますが、不倫が原因で離婚をすることはできるのでしょうか?
不倫が原因で熟年離婚することができるのかどうかみていきましょう。
1.協議離婚ならば理由は関係ない
離婚をする場合、まずは当事者同士の話し合いによる「協議離婚」を行うことが多いです。
協議離婚の場合は双方が離婚に合意すれば、離婚手続きを進めることで離婚を成立させることができます。
つまり、離婚理由に関係なく離婚できるということになります。
そのため、不倫が原因でも離婚することもできますし、その他の理由で離婚をすることもできるということになります。
2.相手が合意しなくても裁判で離婚できる
離婚をしたいと考えていても、相手が離婚に合意してくれないというケースもあるでしょう。
相手が離婚に合意してくれない場合には調停や裁判を行うことになります。
離婚では調停委員が介入して意見を調整しながら問題解決を目指しますが、それでも問題が解決しない場合に裁判へ発展します。
裁判で離婚する場合は、法定離婚事由と呼ばれる法律で定められた離婚理由が必要になります。
そして、不倫は法定離婚事由に該当するため、相手が裁判で離婚が成立する可能性があります。
裁判で離婚が成立すれば、相手が離婚に合意していなくても離婚することができます。
不倫が原因で熟年離婚した場合、慰謝料は請求できるのか?
不倫が原因で熟年離婚する場合、精神的に受けた苦痛に対する慰謝料を請求したいと考える方もいるでしょう。
熟年離婚で不倫に対する慰謝料を請求することはできるのでしょうか?
1.不倫は不法行為に該当する
不倫は、民法上の不法行為に該当します。
不法行為とは、他人の権利や利益を違法に侵害する行為です。
不倫は夫婦の平和を維持する権利や利益を侵害する行為だと考えられるため、不法行為になります。
そして、不法行為があった場合、加害者は被害者に対して損害を賠償する責任を負うことが民法第770条に定められています。
そのため、不倫を行えば損害の賠償として慰謝料を支払う義務が生じることになります。
2.不倫慰謝料を請求できないケースとは
上記で説明したように、不倫をすれば加害者は被害者に対して慰謝料を支払う義務が生じます。
ただし、場合によっては慰謝料の支払い義務が生じないようなケースもあります。
不倫慰謝料が請求できないケースは次の通りです。
①肉体関係がなかった
夫婦には貞操義務があり、配偶者以外の人と肉体関係を持つことが禁じられています。
そのため、法律上における不倫は「配偶者以外の人との肉体関係を持つこと」になります。
不倫に対する見解には個人差がありますが、食事などのデートを数回していただけの場合や、手を繋ぐなどのスキンシップをしたものの肉体関係はなかった場合には法律上における不貞(不倫)が認められないため慰謝料を請求できない可能性があるのです。
ただし、肉体関係がなくても二人の関係性が深く、夫婦関係を破綻させる原因になったということが証明できる場合には慰謝料請求が認められる可能性があります。
②夫婦関係がすでに破綻していた
不倫前から夫婦関係が破綻していたという場合も、不倫慰謝料は認められません。
夫婦は婚姻生活の平和を維持する権利や利益が存在し、不倫はその権利や利益を損害するものだと考えられています。
しかし、例え離婚手続きをまだ行っていない場合でも、夫婦関係が破綻していたのであれば、こうした権利や利益はすでに存在しないものだと判断されてしまうのです。
そのため、配偶者以外の人と肉体関係を持った場合でも慰謝料を請求することが難しくなると言えます。
夫婦関係が破綻していると判断される基準は、別居期間が5年以上など長引いている場合や、離婚調停を行っているような場合が該当します。
③不倫の証拠がない
不倫の証拠がない場合、不倫慰謝料を請求することは難しいでしょう。
証拠がなければ相手が不倫を否定する可能性があるからです。
また、相手が慰謝料に応じないからといって裁判所に申し立てたいと考えたとしても、証拠がなければ裁判でも慰謝料が認められない可能性が高いと言えます。
そのため、不倫の慰謝料請求を行う際には証拠集めが重要なポイントになります。
熟年離婚の原因が不倫だった場合、慰謝料金額はどれくらいになるのか?
基本的に慰謝料請求を行う際には、請求者の言い値で請求を行うことができます。
しかし、どれくらいの慰謝料を請求すべきか分からないという方も多いと思います。
不倫の慰謝料を請求するためにも、まずは不倫慰謝料の相場額について知っておきましょう。
1.一般的な不倫の慰謝料の相場額とは
不倫の慰謝料の金額は法律で定められているものではありません。
しかし、裁判では過去の判例などを参考にして慰謝料の金額が定められます。
一般的な不倫の慰謝料の相場額は50~300万円だと言われています。
50~300万円というと相場でも大きな差があるように感じられますが、慰謝料の金額は状況などを総合して判断されるものです。
そのため、慰謝料の金額はケースごとに異なります。
2.熟年離婚の場合は慰謝料金額が高額になる傾向がある
不倫の慰謝料の場合、慰謝料金額を決める要件の1つとして婚姻期間が挙げられます。
婚姻期間が長ければがないほど精神的に受ける苦痛が大きいと考えられるため、慰謝料の金額が高額になる傾向があるのです。
つまり、熟年離婚の場合であれば慰謝料が高額になる可能性があると言えます。
また、高齢になるほど新しくやり直すことが難しくなることもあり、慰謝料金額に反映されやすいと言えます。
その他には、不倫の悪質性が高いと判断されるほど慰謝料の金額も高額になりやすいです。
不倫相手の妊娠や不倫期間の長さ、反省の態度なども慰謝料金額に考慮されます。
不倫が原因で熟年離婚する場合に請求できるもの
不倫が原因で熟年離婚をする場合、請求できるものがいくつかあります。
新しい生活を始めるためには、あらかじめ請求できるものを把握しておくことが大切でしょう。
熟年離婚する場合に請求できるものは、次の通りです。
1.不倫に対する慰謝料
配偶者の不倫が原因で離婚する場合、不法行為である不倫に対して慰謝料を請求することができます。
不倫慰謝料を請求できる相手は、配偶者と不倫相手の二人です。
①配偶者への請求
不貞を行った配偶者には、精神的苦痛を受けたという損害に対する慰謝料を請求することができます。
ただし、配偶者に対する慰謝料を請求するのは離婚をする場合に限られることが多いです。
なぜならば、婚姻生活を続けるのであれば慰謝料を請求しても、同じ家計から支払われることになるからです。
そのため、離婚を考えているという場合に配偶者に対する慰謝料請求が行われることが一般的です。
②不倫相手への請求
不倫は共同不法行為であり、不倫をした二人が連帯して責任を負うことが民法第719条で定められています。
そのため、不倫慰謝料の請求は配偶者だけではなく、不倫相手にも請求することができます。
ただし、不倫相手に故意や過失がなかった場合には慰謝料を支払う義務は発生しません。
故意や過失がないケースとは、配偶者が独身と偽って肉体関係を持った場合や、離婚すると積極的に騙して肉体関係を持った場合が該当します。
2.財産分与
離婚をする際には、夫婦の財産を離婚時に貢献度に応じて分配する「財産分与」を行います。
民法第768条にも離婚時には財産の分与を請求できることが定められています。
財産分与では貢献度に応じで分配するとされていますが、一般的には夫婦で2分の1の分配を行います。
対象となる財産は、婚姻期間中に夫婦が協力して形成した共有財産です。
夫婦で購入した不動産や家財、預貯金、車、有価証券などが対象になります。
婚姻期間が長いほど夫婦の共有財産は多くなるため、熟年離婚で分配される財産は多くなると考えられます。
3.退職金の分与
離婚時の財産分与では、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産が対象になります。
そして、将来支払われる予定のある退職金も、婚姻期間中に形成される財産であると考えられます。
退職予定日までの期間が長い場合などには退職金は財産分与に含まれないこともありますが、熟年離婚では退職金も分与される可能性があります。
ただし、退職金は将来支払われる財産になるため、財産分与の対象にするには退職金の予定額を算出する必要があります。
また、すでに退職金が支払われている場合には、婚姻期間や退職金の形成への貢献度を考慮して算出します。
4.年金分割
離婚時には、婚姻期間中の保険料の納付額に対応する年金を分割し、受け取ることができる年金分割制度というものがあります。
例えば、一方が仕事をして保険料の納付を行っていたものの一方が専業主婦をしていた場合、夫婦で協力していたとしても離婚すれば一方だけが年金を全額受給できることになります。
それでは不公平が生じるため、年金分割制度が導入されるようになったのです。
とくに熟年離婚において年金分割制度は大事なものになると言えるでしょう。
5.子供がいる場合は養育費
夫婦に子供がいる場合、どちらか一方が子供の親権を持つことになります。
そして、子供が未成年の場合には、親権を持たない方の親が成人になるまでの子供の養育費を支払うことになります。
親子間には扶養義務があることが民法第877条に規定されていることからも、養育費を請求することができます。
養育費の金額は協議で決めることになりますが、「養育費算定法表」というものを参考にして算出されることが多いです。
不倫が原因の熟年離婚で少しでも多くの慰謝料や財産を獲得するためにすべきこと
不倫が原因で熟年離婚するのであれば、新しい生活を始めるために少しでも多くの慰謝料や財産を獲得したいと考えることは当然です。
慰謝料や財産をできるだけ多く獲得するためには、次のことを行いましょう。
1.不倫の証拠を集める
不倫の慰謝料を請求するには、不倫の証拠を集める必要があります。
不倫の証拠とは、肉体関係があったことを立証できるものです。
- ホテルに出入りしている写真
- 性行為の動画、写真
- 肉体関係のあることが分かるメッセージ内容
- 旅行に行った際の写真や動画
こうしたものがあれば、決定的な証拠であると言えるでしょう。
また、デートやホテル利用時の領収書やクレジット明細、通話履歴、交際していることの分かるメッセージの内容などの証拠も複数組み合わせることで証拠として立証できる可能性があります。
2.離婚前に財産を把握しておく
離婚をするのであれば、離婚をする前に配偶者にバレないように財産を把握しておくことも大切です。
なぜならば、相手が財産を隠すことや処分してしまうようなケースもあるからです。
公平に財産分与を行うためにも、預貯金や不動産や自動車の評価額、保険料などを把握しておきましょう。
もし離婚を切り出したことで共有財産が勝手に処分されてしまいそうな場合には、家庭裁判所へ財産分与請求の調停を申し立てると同時に「財産処分禁止の審判前保全処分」の申立て行うことで共有財産を保全することができます。
3.弁護士に相談する
不倫が原因で熟年離婚するという場合には、専門家である弁護士へ相談することをおすすめします。
不倫の慰謝料請求では証拠集めや適切な慰謝料金額の請求、慰謝料金額の交渉などが必要になります。
それに加えて離婚の手続きや財産分与などの請求も行うとなれば、精神的な負担も大きいものになるでしょう。
弁護士には全ての手続きを任せることができ、少しでも有利な条件で離婚できるようにサポートを受けられます。
熟年離婚では離婚時に分与する財産なども複雑化しやすいため、専門家の弁護士の助力が必要になるはずです。
まとめ
今回は、不倫で熟年離婚した場合の慰謝料請求について解説しました。
熟年離婚であれば不倫慰謝料も高額になる可能性がありますが、離婚において分与すべき財産も多くなると予想されます。
そのため、離婚の手続きや協議は当事者同士ではスムーズに進められないというケースも珍しくありません。
スムーズかつ少しでも良い条件で離婚するためにも、まずは弁護士に相談してみてください。
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