不倫の示談書はどうやって書く?示談書作成時のポイントや注意点とは
不倫の慰謝料請求が当事者間の話し合いで合意に至った場合には、示談書を作成します。
しかし、日常生活の中で示談書を作成する機会は少ないため、示談書がどのようなものであり、示談書にどのような内容を記載すべきか分からないという方が多いでしょう。
不倫の慰謝料請求において示談書は非常に大切な役割があります。
そこで今回は不倫の示談書の書き方や、示談書作成時のポイント、注意点について解説します。
不倫の示談書とは
不倫の示談書を作成するためには、示談書がどのような書類であるのか知っておく必要があります。
示談書以外にも不倫では誓約書や和解書などが作成されることもありますが、示談書との違いについても見ていきましょう。
1.示談書とは
示談とは何らかのトラブルを当事者同士が話し合いで解決することを指し、その解決内容や解決のための条件を書面にしたものを示談書と言います。
不倫の示談書の場合、不倫の事実や慰謝料など当事者同士で話し合い、合意に至った内容が示談書に書かれることになります。
示談書は当事者間で法律上の解決に合意したことを記録として残すことができ、法的な効力を有します。
2.合意書や誓約書、和解書との違い
示談書以外にも、合意書や誓約書、和解書などが存在します。
これらは全て契約書の一種となりますが、それぞれ名前が異なるものの原則として法的な違いはありません。
不倫の慰謝料請求の話し合いがまとまった際に書面化するとなると書面の表題にどの名前を付けるのか悩む方も多いですが、基本的にはどの名前を付けたとしても法的な効力を有します。
不倫の場合は「示談書」として表題が使われることが多いですが、合意書や和解書などでも問題はありません。
3.不倫の示談書が必要な理由
不倫の慰謝料は裁判でも請求することができますが、速やかに解決するためにも当事者間もしくは弁護士を介して話し合いで解決することが多くなっています。
このことを示談交渉と呼びますが、示談交渉は口約束やメールでも効力を持ちます。
しかし、示談書として書面化することは、示談後のトラブルを防ぐという大切な役割を持ちます。
口約束であれば言った・言わないというトラブルになりますし、メールも内容を両者が消去してしまえば確認が難しくなります。
書面で残しておけば、合意したはずの慰謝料を支払ってくれないというトラブルを防ぐことができるのです。
また、慰謝料を支払う側からしても、金額や支払い方法を勝手に変更されるというリスクを避けることができます。
不倫の示談書を作成する前に確認しておきたいポイント
不倫の示談書を作成するにあたり、いくつか事前に確認しておきたいポイントがあります。
適切に示談書を作成するためにも次のことを示談書作成前に確認しておきましょう。
1.本当に不倫は成立しているのか
不倫の示談書を作成するのであれば、不倫が法的に成立している状態なのか確認する必要があります。
法的用語で不倫は「不貞行為」と呼ばれ、配偶者以外と肉体関係を持つことを指します。
不倫の基準に対して個人間の意見はあるかもしれませんが、肉体関係がなければ法的には不倫として認められにくくなっています。
不倫の慰謝料を請求するには不貞行為の証拠が必要になるので、示談書作成を考える前に肉体関係があることが証明できるような証拠を探しましょう。
2.示談交渉で両者が合意しているのか
示談書を作成するには、示談内容に両者が合意している必要があります。
どちらかが納得していない状態で示談書を作成しても相手が合意していないのでサインすることはありませんし、合意の上で両者のサインがなければ示談書自体が無効になります。
また、示談書は片側が一方的に作成して合意するように強要するものではありません。
きちんと話し合いで相手の合意を経てから書面を作成するようにしましょう。
3.示談の条件や慰謝料の支払いについて
不倫の示談書では、示談の条件や慰謝料について記載することになります。
示談書として書面化して互いにサインをすれば、法的な効力を持つことになるため、書面化する前に示談内容についてはしっかりと確認しておくべきです。
条件や慰謝料に関しては、支払日や支払い方法など細かい部分まで事前に決めるようにします。
大まかな内容の示談書になれば、後から「示談書には書かれていない」といったトラブルが起こる恐れがあります。
4.示談書は誰がどのように作成するのか
示談書は示談する当事者が一緒に作成してもいいですし、片側交渉の内容をまとめて作成して相手側に送付しても構いません。
また、当事者ではなく弁護士に依頼して示談書を作成することも可能です。
弁護士に依頼すれば法的な知識を持って示談書を作成することができ、示談で決めておくべき内容が洩れてしまうことも予防できます。
不倫の示談書に記載すべき内容とは
不倫の示談書は弁護士に依頼することもできますが、ご自身で作成するというケースもあるでしょう。
示談書は法的な効力がある書面になるため、当事者本人のどちらかが示談書を作成するのであれば、記入漏れなどのないように作成すべきです。
そこで、不倫の示談書に記載すべき内容を順番にご紹介します。
1.タイトル、氏名や連絡先、日付
まずは表題として書面の上記部分には「示談書」と記載します。
示談書ではなく、合意書や和解書と記載しても問題ありません。
そして、氏名と連絡先を記入し、その隣には押印もしくはサインをします。
氏名やサインなどがなければ法的に無効になってしまう可能性があるので、忘れずに記入してください。
氏名や連絡先、示談書の作成日の記載は示談書の表題の下でも、示談書の末尾でもどちらでも構いません。
2.不倫の事実
示談書には、どんなトラブルへの示談内容なのかを明確にするためにもトラブルの内容を記載します。
ここでは不倫の示談書になるため、配偶者と不倫相手の間で不貞行為があったという事実について記載しましょう。
誰と誰が不貞行為を行ったことで誰が被害を受けたのか明記し、詳しい不貞行為の期間や回数や精神的苦痛を受けたことなども内容に盛り込みます。
3.慰謝料の詳細
不倫の示談交渉の中心となる部分は、慰謝料です。
示談交渉で双方が合意した慰謝料金額だけではなく、支払い期日や支払い方法、支払いにかかる手数料の負担なども細かく明記します。
慰謝料における支払い回数は一括が基本ですが、話し合いで示談する場合には分割になるようなケースもあります。
その場合には、分割回数や、分割回数の支払いを怠った場合のペナルティについても記載しましょう。
4.慰謝料以外の条件
慰謝料以外にも示談交渉で合意した条件がある場合には、全て記載します。
配偶者と不倫発覚後も夫婦関係を継続するのであれば、相手に配偶者と接触しないように誓約してもらうケースが多くなっています。
示談書で記載しておけば不倫関係の再発の防止になるので、誓約した内容が破られた場合のペナルティも決めておきましょう。
また、不倫相手が妊娠や中絶した場合には、医療費負担や今後のケアについて決めた内容も記載します。
5.求償権の放棄
不倫は当事者二人による共同不法行為になるため、当事者二人に慰謝料を支払う義務があります。
不倫発覚後に離婚をするのであれば不倫をした双方に慰謝料を請求しても問題ありませんが、婚姻関係を継続するのであれば配偶者に慰謝料を請求しても家計から支払われることになります。
そのため、慰謝料の全額を不倫相手に請求することになります。
しかし、不倫相手には本来であれば配偶者が支払うべき責任の金額を請求することができる「求償権」という権利があります。
この求償権が慰謝料支払い後に行使されないようにするために、不倫相手のみに慰謝料請求する場合には求償権を放棄するという旨を示談書に盛り込むようにしましょう。
6.守秘義務
不倫について第三者に口外することや、SNSなどインターネットに書き込んだりすることは違法です。
しかし、違法とは知らずに相手が知人や職場などで話してしまい、拡散されてしまう可能性があります。
そうすると、浮気された被害者や配偶者の社会的な信頼に影響が出てしまいます。
こうしたことが起こらないように示談書には守秘義務についても記載しておくべきです。
7.清算条項
清算条項とは、「示談書に記載した以外に請求することはなく、不倫問題が解決した」ということを示す条項です。
清算条項が記載されれば、示談書に記載されていること以外に互いに債権や債務がないことを表すため、追加で慰謝料を請求することや条件を加えることができなくなります。
互いに示談した後に追加で請求などを行うことがないようにするためにも、清算条項を記載することは大切なことと言えます。
示談書作成の際の注意点
示談書を作成する際には、上記で紹介した内容を全て記載することになります。
しかし、紹介した記載内容以外の点で、示談書作成の際にはいくつか注意すべきことがあります。
示談書の作成を行う前に、次の注意点についても確認しておいてください。
1.示談書は簡潔かつ漏れなく記載する
不倫の示談書を作成する目的は、不倫問題の解決や示談後のトラブルを避けることです。
そのため、示談書には漏れがないように記載をするようにしましょう。
曖昧な表現は避け、明確に記載することがポイントです。
また、トラブルが再発することを避けるためにも、誰が読んでも分かりやすい簡潔な文章にするようにしましょう。
2.示談書の内容に違反があった場合のペナルティについても記載する
示談する際の交渉では慰謝料の金額や示談するための条件について話し合うことが中心になるため、示談書にも慰謝料や示談の条件についてはしっかり記載されることが多いです。
しかし、示談書を作成して示談が成立したと思われても、相手が示談書の内容に違反するようなケースもあります。
相手が示談書の内容に違反することを予防するためにもペナルティを決めておき、示談書に記載しておきましょう。
違反行為には罰金〇〇円など記載されていれば、相手も示談書に違反しないように努力する可能性が高まります。
3.公正証書で作成する
公正証書とは事実内容や契約の成立を法的に証明することができる文書です。
示談後に不倫慰謝料を一括もしくは分割で支払うという場合には、公正証書で示談書を作成すことで支払い不履行に備えられるというメリットがあります。
公正証書で示談書を作成すれば、もし慰謝料が支払われなかった場合には裁判をすることなく相手の財産を差し押さえすることができるのです。
公正証書は公証人と呼ばれる公的資格を持つ専門家が公証役場にて作成を行います。
4.弁護士に依頼する
示談書はご自身で作成することはできますが、弁護士に依頼することもできます。
示談書を確実に法的効力のあるものとして作成し、示談後のトラブルを回避したいという場合には弁護士に作成を任せるべきでしょう。
弁護士には示談書の作成だけではなく、示談交渉なども任せることができるため、不倫が発覚した時点で相談することがおすすめと言えます。
そうすれば、慰謝料の増額や有利な条件での示談が期待できます。
示談書の内容に違反する行為が行われた場合は?
示談に双方が合意して示談書を作成したとしても、必ず相手が示談内容を守るとは限りません。
もし示談書の内容に違反するような行為を相手が行った場合、どのような対処を取ることができるのでしょうか?
1.示談書に記載したペナルティ通りの請求ができる
示談書に違反行為に対するペナルティを記載している場合、ペナルティ通りの請求を行うことができます。
慰謝料の支払いの拒否や遅延などがあった場合には、ペナルティとして遅延料が発生する旨を記載していたのであれば遅延料を慰謝料に上乗せして請求することができます。
また、誓約内容として再び配偶者と連絡を取らないように記載していたにも関わらず連絡を取り、ペナルティとして罰金〇〇円と記載していたのであれば、その罰金を請求することができます。
2.強制執行による差し押さえができる
示談書で慰謝料の金額や支払い日、支払い方法など全て記載しているにも関わらず、慰謝料が支払われないというケースもあります。
その場合には、裁判を行うことで強制執行による差し押さえができます。
示談書は証拠として提出できるため、法外な慰謝料金額の設定になっていない限りは示談書の内容通りの請求が認められます。
公正証書で示談書を作成している場合には、裁判を省いて差し押さえが可能です。
まとめ
今回は不倫の示談書について解説しました。
配偶者に不倫をされて慰謝料請求を行う場合には、示談後のトラブルを避けるためにもしっかり示談書を作成する必要があります。
示談書を法的な有効性が認められる内容にするためにも、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、示談書だけではなく示談交渉についても任せることができます。
精神的な負担も軽減されるので、一人で悩まずに専門家へご相談ください。
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