略奪婚で慰謝料を請求されることはある?略奪婚による慰謝料請求の相場と対処法を解説
相手が既婚者だけれども離婚して自分と結婚してもらおうと考えているという方や、配偶者と別れて不倫相手と結婚したいと考えている方もいるでしょう。
略奪婚になった場合、不倫関係や両者の夫婦関係によって慰謝料の請求が発生する可能性があります。
しかし、全てのケースにおいて慰謝料の支払い義務が生じるわけではありません。
そこで今回は、略奪婚による慰謝料請求について解説します。
慰謝料請求の相場額や対処法も併せて紹介するので、是非参考にしてください。
略奪婚とは
略奪婚とは、すでにパートナーのいる相手と恋愛関係になり、パートナーと別れさせて婚姻関係を結ぶことを指します。
既婚者だけではなく、婚約者や恋人関係にでも当てはまるものです。
ただし、恋人関係であれば自由恋愛の下で行われているため、法的に責任を問われることはありません。
しかし、配偶者のいる相手と性的関係を持つことは不貞行為であり、民法上の不法行為として慰謝料を支払う責任を負うことになります。
内縁関係(事実婚)も法律婚と同様に扱われ、婚約関係であっても慰謝料請求の対象になります。
略奪婚で起こる問題点
略奪婚をする場合は、一般的な結婚よりも障害が多いものです。
そして、さまざまな問題が生じることが予想されます。
略奪婚で起こり得る問題点として、次のことが挙げられます。
1.子供の親権や養育費
相手もしくは自分に子供がいる場合、まずは親権問題について考える必要があります。
親権を持つことができるのは片方の親だけです。
そして、親権を持たない親は、子供が成人するまでの間の養育費を支払うことになります。
略奪婚の相手に子供がいて母親が親権を持つ場合、男性は養育費を支払うことになるので略奪婚をしても養育費の支払いで経済的に苦しくなる可能性があるのです。
2.離婚による財産分与
相手もしくは自分が既婚者であり、略奪婚によって離婚するのであれば離婚時に財産分与が行われます。
財産分与とは、夫婦の共有財産は離婚時に公平に分配するという制度です。
婚姻期間中に形成された財産は、基本的に2分の1に分割されることになります。
そのため、離婚前の財産の状態を維持できるわけではありません。
3.慰謝料請求
相手が既婚者だった場合、離婚前から性的な関係を持つことは不法行為の1種である不貞行為に該当します。
不法行為を行えば、被害者に与えた損害を賠償する義務を負うことが民法第770条に定められています。
つまり、相手の配偶者から慰謝料を請求される可能性があるのです。
また、あなたが結婚している場合であれば、自身の配偶者から不貞行為に対する慰謝料を請求される可能性があります。
略奪婚で慰謝料請求されるケースとは
略奪婚では慰謝料を請求去れる可能性がありますが、具体的にどのようなケースで慰謝料は請求されるのでしょうか?
略奪婚で慰謝料請求されるケースについてみていきましょう。
1.既婚者と知っていて不倫をしていた場合
夫婦には貞操義務があり、配偶者以外の人と性的関係を持つことは禁じられています。
そして、配偶者のいる人と性的関係を持つことは夫婦の婚姻生活の平和を破綻させる不法行為です。
そのため、相手が既婚者と知っていながら不倫関係になっていた場合、不貞が成立して慰謝料を請求されることになります。
また、関係を持ったばかりの時は既婚者であることを知らなかったとしても、既婚者であることを知ってからも関係を継続していれば不貞行為になります。
2.不貞行為が原因で相手が離婚した場合
離婚原因が不貞行為だった場合には、慰謝料を請求されることになる可能性が高いでしょう。
例えば、不貞関係になったことが原因で相手の夫婦関係が悪化して離婚に至った場合には、不貞によって夫婦生活の平和を維持する権利が侵害されたと考えられます。
そのため、不貞が不法行為であるとみなされ、賠償責任を負うことになります。
略奪婚でも慰謝料の支払い義務が生じないケースとは
略奪婚だったとしても、慰謝料の支払い義務が生じないようなケースもあります。
具体的にはどのようなケースならば慰謝料を支払う必要がないと言えるでしょうか?
1.交際前から夫婦関係が破綻していた
夫婦は、婚姻生活の平和を維持する権利や利益が法律によって守られています。
しかし、夫婦関係が破綻している場合には、こうした権利や利益は存在しないと考えられます。
そのため、相手との交際前から相手夫婦の関係が破綻していたという場合であれば、交際を始めたとしても不法に権利や侵害をすることにはならないと考えられます。
夫婦関係が破綻していると考えられる基準は、離婚協議をしている段階の場合や、別居期間が長期に渡っているような場合です。
2.離婚前までプラトニックな関係だった
不貞とは、配偶者以外の人と性的関係を持つことを指します。
つまり、性的関係のないプラトニックな関係ならば不貞行為とは言えず、慰謝料請求の義務も生じない可能性が高いでしょう。
ただし、性交に近い行為を行っていた場合や、プラトニックな関係でも二人の関係性が婚姻生活を破綻させる原因となる深い関係であると判断された場合には、慰謝料の請求が認められるようなケースもあります。
3.相手が既婚者であることを知らなかった
相手が未婚だと偽っていた場合や、恋人がいると聞かされていたものの婚約していることは知らなかった場合などもあるでしょう。
こうした場合には、故意や過失なく相手と交際していたと考えられます。
不法行為は故意や過失があって行われるものだと考えらえれているため、故意や過失がない場合には慰謝料を請求されても支払う義務は生じません。
しかし、「結婚していることを知らなかった」「婚約していると知らなかった」という言葉で相手のパートナーは納得しない可能性があるので、故意や過失がなかったという証拠を集めて説明する必要があります。
4.慰謝料請求の時効が成立している
不倫の慰謝料請求は、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求になります。
不法行為に対する損害賠償の請求権には時効が存在し、損害や加害者を知った時から3年が時効であることが民法第724条に定められています。
つまり、不倫の事実を知った時や、不倫相手を知った時から3年経過すれば慰謝料を請求する権利が消失するということになります。
また、不法行為から20年経過した場合にも慰謝料請求権は消失します。
略奪婚の慰謝料請求の相場とは?
略奪婚になる場合、どれくらいの慰謝料を請求される可能性があるのか事前に知っておきたいと考える方も多いでしょう。
略奪婚における慰謝料請求の相場や、慰謝料金額が増減されるケースは次の通りです。
1.慰謝料の相場金額
不貞行為に対する慰謝料金額は法律で決められているわけではありません。
そのため、請求者の言い値から交渉や裁判などを通して決まることになりますが、過去の裁判の判決から相場金額は100~300万円と言われています。
そして、略奪婚の場合でもどうように慰謝料の相場額は100~300万円だと考えられています。
慰謝料金額は個々の事情が考慮されるため、相場金額から金額が増減することになると考えましょう。
2.略奪婚の慰謝料金額が増額されるケースとは
慰謝料の金額は、不法行為の背景などを踏まえて決められるものです。
略奪婚の慰謝料請求の場合、どのようなことが慰謝料金額を増額させる要件になり得るのでしょうか?
略奪婚の慰謝料金額が増額されるケースについてみていきましょう。
①不貞行為の期間が長い、回数が多い
不貞関係の期間が長く、性的関係を持った回数が多いほど慰謝料金額は増額される傾向があります。
交際期間が長いほど被害者の受ける精神的苦痛が大きいと考えられるからです。
略奪婚は交際から離婚に至るまでの期間が長期に渡るケースも多いため、慰謝料金額が高額になることも少なくありません。
②婚姻期間が長い、子供がいる
婚姻期間が長ければ長いほど不貞行為があった場合には、精神的に受ける苦痛は大きいと考えられます。
また、子供がいる場合には子供への影響なども考慮されます。
とくに子供の年齢が小さいほど両親が必要な時期であり、離婚することは子供への影響が大きいと考えられます。
そのため、婚姻期間が長い場合や、子供がいる場合には慰謝料金額が高額になります。
③被害者の精神的苦痛が大きい
不貞行為による被害者の精神的苦痛が大きいと判断されるようなケースにも慰謝料は増額される傾向にあります。
不倫が原因で精神的に不安定になって病院へ通院していた場合には精神的苦痛が大きかったと判断されるでしょう。
また、不倫相手が妊娠した場合や、不倫相手と生活するために配偶者へ生活費を渡さなかった場合など、不倫の悪質性が高いと判断されるような場合には慰謝料が増額されると考えられます。
略奪婚で慰謝料請求をされた場合にすべきこと
略奪婚をしたことで慰謝料請求をされた場合には、いくつかの注意すべき点があります。
誤った対処をすればトラブルが大きく発展してしまう恐れもあるため、注意点を事前に把握しておき、適切に対処するようにしましょう。
1.慰謝料請求を無視してはいけない
慰謝料請求は一般的に内容証明郵便と呼ばれる郵便で送付されてくることが多いです。
内容証明郵便が届いた場合、そのまま無視してはいけません。
文書内に返答期限などが記載されていると思うので、その期限までに相手もしくは相手の弁護士に連絡するようにしましょう。
慰謝料の支払い義務がないような場合であったとしても、請求を無視すれば相手が逆上してしまう恐れがあります。
また、無視すれば裁判になった場合に不利になる可能性もあるので、無視せずに相手を刺激しないように対応することが大切です。
2.慰謝料の支払い義務を確認する
慰謝料請求が届いたら、まずは慰謝料の支払い義務の有無を確認しましょう。
慰謝料請求の書面には何に対する慰謝料請求なのか記載されているため、内容確認を行うと同時にご自身の状況を整理してください。
慰謝料請求の義務がないような場合であれば、請求者が納得するように慰謝料請求の義務がないことを説明しなければなりません。
慰謝料の支払い義務があるのかどうか分からないという場合には、専門家である弁護士に相談してみましょう。
最近では初回は無料相談の法律事務所も多いので、状況を説明することで慰謝料の支払い義務の有無を確認することができるはずです。
3.請求された金額の妥当性を検討する
慰謝料の支払い義務があるような状況の場合、請求金額の妥当性についても検討する必要があります。
送付されてきた慰謝料請求の文書には慰謝料の金額が記載されているはずです。
相場金額よりも高額な場合や、支払いが難しいというような場合には、請求相手に減額交渉を行います。
多くの場合は、減額交渉を見込んで高額な金額に設定されています。
適切な慰謝料の金額を知りたいという場合には、慰謝料金額の妥当性について弁護士に相談してみましょう。
4.弁護士に依頼する
略奪婚で慰謝料請求をされた場合、弁護士に依頼することをおすすめします。
慰謝料の支払い義務の有無や、請求金額の妥当性などを知ることができるだけではなく、相手との交渉なども任せることができます。
当事者同士で交渉を行えば、とくに略奪婚の場合は感情的になってしまうことで話し合いが進まないことも多いです。
弁護士が代理人として交渉を行うことでスムーズに解決まで進められる可能性が高まります。
また、慰謝料だけではなく離婚による財産分与や養育費などの問題も併せて任せることができるため、心強いサポートを受けられるでしょう。
まとめ
今回は、略奪婚の慰謝料請求について解説しました。
略奪婚で慰謝料請求をされた場合、慰謝料の支払い義務の確認や金額の妥当性など知識がなければ判断することが難しいものです。
そして、当事者同士の感情も絡み合うことでトラブルが大きくなってしまう可能性もあります。
問題を穏便かつスムーズに解決へ導くためにも、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
略奪婚は離婚や慰謝料請求などの問題が複雑化することも多いので、弁護士の助力は欠かせない言えます。
一人で悩みを抱え込まずに、まずは相談することから始めてみてください。
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