協議離婚で慰謝料はどうやって請求する?少しでも高額な慰謝料を請求するためにすべきこと

夫婦の話し合いで離婚を決める協議離婚を行う方は多いでしょう。
しかし、協議離婚では離婚だけではなく財産分与などさまざまなことを自分達で決める必要があります。
そのため、相手に離婚の慰謝料を請求したいと考える場合、どのように慰謝料を請求すべきか悩んでしまう方も多いと思います。
 
そこで今回は、協議離婚の場合の慰謝料請求について解説します。
慰謝料請求する方法だけではなく、少しでも高額な慰謝料を請求するためのポイントも併せてご紹介するので参考にしてください。
 

協議離婚とは

 
夫婦が離婚をする場合、離婚方法は3種類から選ぶことができます。
「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3種類です。
協議離婚とは、当事者同士で離婚について話し合いを行い、双方が合意すれば離婚が成立するという方法です。
多くの場合、まずは協議離婚から始めることが多いでしょう。
 
しかし、一方が離婚に合意しない場合や、離婚条件で合意が得られない場合、DVやモラハラによって協議ができない状態の場合などもあります。
そういった場合には協議離婚ではなく、調停離婚を行うことができます。
調停離婚では裁判所にて調停員が間に入り、解決を図る方法になります。
そして、調停でも離婚の合意に至らない場合には、裁判で離婚を争うことになります。
 

協議離婚で慰謝料を請求できるケース

 
離婚をするからといって全てのケースで離婚の慰謝料を請求できるわけではありません。
慰謝料とは、相手の不法行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償金です。
不法行為があった場合には加害者側は賠償責任が生じることが民法第709条に定められています。
 
そのため、相手の不法行為があった場合に慰謝料を請求することができます。
協議離婚で慰謝料を請求できるようなケースは次の通りになります。
 

1.不貞行為があった場合

 
配偶者が不倫することを法律上では「不貞行為」と呼びます。
不貞行為は離婚事由になるだけではなく、不法行為に該当するため慰謝料を請求することが可能です。
ただし、不貞行為とは「配偶者以外の人と肉体関係を持つこと」を指します。
連絡を取り合っていた、食事を数回した、キスなどのスキンシップをしただけでは不貞行為があったと認められることは難しいと言えます。
不貞行為で慰謝料請求を行う場合には、肉体関係があったことの分かる証拠を集めて請求を行うようにしましょう。
 

2.DVやモラハラを受けていた場合

 
DVやモラハラは、相手の身体や心を傷つける不法行為です。
そのため、家庭内でのDVやモラハラであった場合にも慰謝料を請求することができます。
DVやモラハラで慰謝料請求をする際には、DVやモラハラを受けていたという証拠が必要です。
被害に遭っている動画や音声の録音、医者の診断書、通院記録などが証拠になります。
 
ただし、慰謝料が請求できるのは継続的にDVやモラハラが行われていた場合です。
たった一度軽く平手で叩いただけで、これまでは暴力や暴言はなかったというような場合であれば慰謝料請求が認められにくいと考えられます。
 

3.悪意の遺棄があった場合

 
悪意の遺棄とは、悪意を持って相手を見捨てることを指します。
故意に相手を傷つける行為になるため、この場合も不法行為として慰謝料請求することが可能です。
具体的な悪意の遺棄には、次のようなことが挙げられます。
 

  • 生活費を渡さない
  • 正当な理由なく一方的に同居を拒否する
  • 配偶者を家から追い出す
  • 健康なのに働かない
  • 頻繁に家出を繰り返す

 
夫婦には互いに協力して扶助し合い、同居するという義務が民法第752条に定められています。
悪意の遺棄は、こうした義務を果たしていない状態を指します。
 

4.相手が慰謝料の支払いに合意した場合

 
離婚をする場合、相手に不法行為があった場合に慰謝料を請求できます。
しかし、協議離婚であれば相手に不法行為がなかった場合でも相手が慰謝料の支払いに合意すれば慰謝料を請求することができます。
どんな理由であっても互いに納得できればいいので、裁判では認められにくいようなケースでも協議離婚ならば慰謝料を受け取れる可能性があると言えます。
 
例えば、「性格の不一致」「価値観の違い」などの理由で離婚する場合、本来であれば一方に離婚の原因があるとは言えないため、慰謝料請求することは出来ません。
しかし、相手が慰謝料の支払いに合意しているのであれば、理由は関係なく慰謝料を受け取ることに問題はありません。
 

協議離婚で慰謝料請求できる相手

 
協議離婚で慰謝料を請求する相手は、基本的に配偶者です。
離婚原因を作った側のことを「有責配偶者」と呼び、有責配偶者には慰謝料を支払う義務が生じます。
しかし、場合によっては有責配偶者以外にも慰謝料請求できるようなケースがあります。
それは、不貞行為があった場合です。
 
不貞行為は共同不法行為に該当するため、不貞行為を行った配偶者と不倫相手の二人に共同の責任が生じます。
ただし、慰謝料の二重取りをすることはできないため注意が必要です。
また、不倫相手に故意や過失がない場合には慰謝料請求を行うことはできません。
故意や過失とは、配偶者が独身であると偽っていた場合や、離婚すると嘘をついて肉体関係を持っていた場合などが該当します。
 

協議離婚における慰謝料金額の決め方

 
協議離婚で慰謝料を請求する場合、まずは相手に請求する前に請求する慰謝料の金額を決めなければなりません。
慰謝料の金額はどのように決めればいいのでしょうか?
協議離婚における慰謝料金額の相場や、慰謝料金額の増減を決める要素についてご紹介します。
 

1.協議離婚の慰謝料金額の相場

 
そもそも慰謝料は、精神的苦痛に対する賠償金額になるため、法律で金額が定められているわけではありません。
そのため、慰謝料は請求者の言い値で請求することができます。
しかし、過去の裁判判例などを参考にした慰謝料の相場金額があるため、その相場金額を参考にして慰謝料請求を行うことが一般的です。
 
不法行為であれば、慰謝料の相場金額は100~300万円ほどです。
不法行為は離婚しない場合でも慰謝料請求することができますが、不法行為が原因で離婚する場合はより高額な慰謝料を請求することができます。
 

2.慰謝料金額の増減を決める要素について

 
慰謝料金額の金額は、夫婦関係の状態や不法行為の悪質性などさまざまな事情が考慮されて決まります。
婚姻期間が長い場合や子供がいる場合には、精神的苦痛が大きいと判断されるため慰謝料金額も高額になる可能性が高まります。
 
また、不法行為の悪質性が高いほど慰謝料は高額になるでしょう。
相手の社会的地位や資産なども考慮され、収入が多いほど慰謝料の増額に影響すると考えられます。
 

協議離婚で慰謝料を請求する方法

 
協議離婚で慰謝料を請求したいと考える場合、どのように慰謝料請求をすればいいのでしょうか?
協議離婚で慰謝料を請求する方法として、次の3つの方法が挙げられます。
それぞれどのようなメリットや注意点があるのか見ていきましょう。
 

1.当事者同士の話し合い

 
離婚について話し合いを行うと同時に、慰謝料を請求したい旨を相手に伝えます。
離婚における財産分与と慰謝料は別物になるので、慰謝料を別途支払って欲しいという内容で話し合いを進めます。
話し合いで相手が合意すれば合意書を作成し、慰謝料を支払ってもらいましょう。
 
口頭で慰謝料請求や支払いの約束を行うこともできますが、口頭だけでは後で「言った・言わない」のトラブルに発展する恐れがあります。
相手と対面して話し合って請求する場合でも、慰謝料請求する旨を記載した書面や合意書を準備するようにしましょう。
 

2.内容証明郵便で慰謝料を請求する

 
慰謝料請求は口頭やメールなどでも行うことができますが、内容証明郵便で請求を行うことが一般的です。
内容証明郵便とは、郵便物の内容を証明することができる郵便サービスです。
内容証明郵便で慰謝料を請求すれば、慰謝料をいつ誰に対して請求したのか証拠として残すことができます。
また、相手が受け取っていることも確認できるため、相手が慰謝料請求を無視することの予防にも繋がります。
 

3.弁護士を代理人に立てる

 
協議離婚で慰謝料を請求したい場合、弁護士に依頼して慰謝料請求することも可能です。
弁護士に依頼すれば、内容証明郵便の用意や発送、相手との交渉、合意書の作成まで全ての工程を任せることができます。
当事者同士で話し合いや交渉を行うことは、互いに感情的になってしまうためスムーズに進まないことも珍しくありません。
 
弁護士が代理人になることでスムーズに話し合いを進め、適切な慰謝料請求を行うことができます。
何よりも、弁護士に依頼することで精神的負担が大幅に軽減されることが大きなメリットであると言えます。
 

協議離婚で少しでも高額な慰謝料を請求するためにすべきこと

 
協議離婚で慰謝料を請求するのであれば、少しでも高額な慰謝料を請求したいと考えることは当然でしょう。
裁判ではなく協議で慰謝料を請求する場合、慰謝料の金額は準備や交渉によって金額が大幅に変わってくる可能性があります。
少しでも高額な慰謝料を請求するためにも、次のことを行うようにしましょう。
 

1.証拠を揃えておく

 
慰謝料請求で最も大切なことは、証拠を揃えておくことです。
慰謝料請求することになった事由に対する証拠がどれだけあるのかによって慰謝料金額も変わってくるでしょう。
反対に、証拠がなければ相手は「知らない」と否定することができ、慰謝料を支払ってもらえない可能性があります。
もし裁判になったしても、証拠がなければ慰謝料の支払いは認めてもらえません。
そのため、証拠はできるだけ多く集める必要があります。
1つの証拠では立証が弱い場合でも、複数の証拠を合わせることで立証できるような場合もあります。
証拠を集めていることが相手にバレてしまうと証拠を隠される恐れがあるので、バレないように証拠集めを行いましょう。
 

2.離婚調停や裁判も視野に入れていると伝える

 
慰謝料請求を行う場合、調停や裁判も視野に入れていることを相手に伝えると効果的です。
なぜならば、裁判は時間や手間がかかるため、避けたいと考える方が多いからです。
 
話し合いがまとまらない場合や、相手が支払いを拒否しているような場合には、調停や裁判など法的手続きを行う旨を伝えれば、相手の対応が変わる可能性があります。
内容証明で郵送する場合には、「1週間以内に返答がない場合には法的手段を利用します」といった内容を記載すれば、相手が無視することを防ぐことができるでしょう。
 

3.弁護士に依頼する

 
少しでも高額な慰謝料を請求したい場合には、ご自身で請求を行うよりも弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士は過去の判例などから状況に合った慰謝料の相場額を調べることができ、状況に応じた慰謝料金額で請求することができます。
また、交渉力にも長けているため、ご自身で請求するよりも高額な慰謝料で合意されることが期待できます。
 

協議離婚で慰謝料以外に請求できるもの

 
協議離婚で請求できるものは慰謝料だけではありません。
離婚する際には、婚姻中に夫婦で築いた財産を「財産分与」として請求することができます。
財産分与の対象は現金だけではなく、家や車、家財道具、退職金などが該当します。
 
また、夫婦の間に子供がいる場合には、非親権者は養育費を支払う義務があります。
その他にも、離婚するまでに別居をしていて生活費をもらえなかった場合には婚姻費用も請求することが可能です。
離婚後の新しい生活に備え、離婚の際には慰謝料以外の請求に関しても事前に調べて適切に請求できるように準備しておきましょう。
 

まとめ

 
今回は協議離婚における慰謝料請求について解説しました。
 
協議離婚で慰謝料請求を行う場合、当事者同士で話し合うようなケースも多いですが、慰謝料の金額が相場よりも少なくなってしまうことや、なかなか合意を得られずに話が進まないようなケースも珍しくありません。
スムーズに慰謝料の合意を得て新しい生活をスタートさせるためにも、協議離婚に関する慰謝料は弁護士に相談しましょう。
慰謝料だけではなく、財産分与や養育費など離婚に関することも併せて相談することができます。

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