慰謝料は一括払いしかできない?一括で払えない場合の対処法を解説

慰謝料は一括払いしかできない?一括で払えない場合の対処法を解説

不倫や誹謗中傷、モラハラなど他人の権利や利益を故意や過失によって不法に侵害すれば、慰謝料を請求されることになります。(民法第709条)
慰謝料の金額は数十万円~数百万円になることが多く、決して安い金額ではありません。
そのため、慰謝料を一括で支払うことが難しいようなケースもあるでしょう。
慰謝料は必ず一括でしか払うことができないのでしょうか?
 
今回は、慰謝料を一括払いで払えない場合の対処法について解説します。
慰謝料を請求されたものの支払うことができずにお悩みの方は、参考にしてください。
 

慰謝料は一括払いしか認められないのか?

 
あなたが故意や過失によって不法行為を行ってしまった場合、被害者から不法行為によって受けた精神的苦痛による対する損害賠償として慰謝料を請求されることになります。
この慰謝料の支払いは、一括払いだけではなく分割払いにも対応してもらうことができるのでしょうか?
 

1.原則的には一括払い

 
法律上、慰謝料は一括で支払わなければならないというルールはありません。
しかし、原則的に慰謝料は一括払いです。
裁判で慰謝料請求を争った場合、和解や判決で慰謝料を支払うことが決まれば、一括で支払うように命じられます。
このことから、慰謝料の支払いは一括払いが原則になっていると言えます。
また、分割払いは支払いが滞るかもしれないという請求者側のリスクがあることも、慰謝料の一括払いが原則になっている原因の一つでしょう。
 

2.協議ならば分割払いを相談できる

 
慰謝料請求はいきなり裁判によって請求されるのではなく、当事者同士の協議で請求されることが多いです。
そして、協議の場合であれば分割払いを相談することが可能です。
本来であれば慰謝料は一括で支払われることが好ましいですが、支払い能力がなければ一括で支払うことはできません。
慰謝料の請求者が分割払いに合意をすれば、分割で慰謝料を支払っていくことができます。
そのため、一括払いが難しい場合には相手に交渉して分割で支払っていくようなケースもあります。
 

慰謝料の一括払いが難しい場合にすべき対処法

 
慰謝料の支払いは高額になるようなケースもあり、一括払いをするにはある程度の財力が必要になると言えます。
慰謝料の請求をされたものの一括で払うことが難しい場合には、次のような方法で対処することができます。
 

1.そもそも慰謝料の支払い義務はあるのか確認する

 
慰謝料を請求されたからといって、必ずあなたに慰謝料を支払う義務があるとは限りません。
慰謝料の支払い義務が発生するのは、あなたが不法行為を行った場合です。
不法行為とは、他人の権利や利益を故意や過失によって侵害する行為になります。(民法第709条)
まずは、あなた自身に慰謝料の支払い義務があるのかどうか確認するようにしましょう。
また、相手はあなたが不法行為を行ったという証拠を準備せずに慰謝料を請求しているようなケースもあるため、証拠の確認を行うことも大切です。

 

2.慰謝料金額が適切か検討する

 
慰謝料は不法行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。
損害によって支払うべき金額は異なり、法律上で金額が定められているわけではありません。
そのため、まずは慰謝料の請求者の言い値で請求が行われます。
慰謝料の金額は法律で定められていないものの、不法行為による慰謝料は50~300万円が相場だと考えられています。
この相場金額を超えるような場合は高額請求だと考えられるため、減額交渉ができるでしょう。
また、不法行為の内容やその背景によって慰謝料の金額は異なるため、まずは請求された慰謝料の金額が適切であるか判断することが大切です。
慰謝料の金額の適切性に関しては、専門家である弁護士に相談してみることをおすすめします。

 

3.減額交渉する

 
請求された慰謝料の金額が適切ではない場合、適切な金額を提示して減額してもらうように交渉することができます。
相手が減額交渉に応じずに裁判に発展することになったとしても、高額すぎる慰謝料であれば裁判で適切な慰謝料金額の支払いが命じられることになります。
 

また、適切な金額の慰謝料だった場合には、支払いが難しいことを説明して相手に減額してもらうようにお願いをすることができます。
給料や生活状況などを説明することで相手が理解してくれれば、協議で減額交渉に応じてもらえるようなケースもあります。
 

4.分割払いを相談する

 
相手が減額交渉に応じない場合には、分割払いの相談をするという選択肢があります。
一括で支払うことが難しい旨を伝え、分割ならば支払えることを相手に伝えます。
相手は慰謝料を全額支払ってもらえるのであれば分割でも良いと考えて合意してくれるようなケースもありますが、分割払いにはリスクもあるので合意を得られないようなケースもあるでしょう。
相手にとっては最後まで支払ってもらえるのかという不安があるので、必ず支払うことや支払いが遅れた場合のペナルティなどを約束して相手を安心させることが大切です。
 

5.借金する

 
減額交渉や分割払いに応じてもらえない場合、借金をして慰謝料を支払うという方法もあります。
親族や友人などに借金することが難しい場合は、消費者金融や銀行に借りることになります。
借金をすれば慰謝料を支払うことはできますが、その借金の返済目途がない状態で借金をすることは危険です。
もし借金を返済できなくなれば、自己破産しなくてはならない事態に陥るケースもあります。
借金をする場合は、返済の目途を立ててから借りるようにしましょう。
 

慰謝料を一括払いできないからといって払わなかった場合のリスク

 
慰謝料を一括払いできないため、慰謝料請求を無視しようと考える方もいるかもしれません。
しかし、慰謝料請求を無視したり、合意書通りに支払わなかったりすれば、あなたが不利になってしまいます。
慰謝料を払わなかった場合に起こり得るリスクについて知り、適切に対応するようにしましょう。
 

1.裁判になる

 
慰謝料請求の無視や、約束通りに支払いを行わない場合には、相手が裁判所を通して請求を行う可能性があります。
裁判になれば確実に何らかの結果が出ることになり、裁判所の和解や判決には従わなければなりません。
そして、裁判は月に一度の期日で互いに主張を行うため、解決までに時間を要します。
裁判が長引くほど精神的な負担も大きくなると考えられるでしょう。

 

2.財産を差し押さえられる

 
裁判所の和解や判決に従わない場合、強制執行による財産の差押えが行われてしまいます。
差し押さえられる財産は、預金や家、車、有価証券、給与などが挙げられます。
差し押さえられた財産は換価され、慰謝料として相手に支払われることになります。
裁判を行っていない場合でも、強制執認諾文言付きの公正証書で示談書を作成していた場合は裁判の和解書や判決書と同様の効力を持ちます。
そのため、裁判を行わずに強制執行による財産の差押えを行うことができるため注意が必要です。

 

3.会社に慰謝料を支払っていないことを知られる

 
慰謝料を支払わずにいることで財産を差し押さえられることになれば、給与も差押えの対象になります。
給与が差し押さえられれば、会社に慰謝料を支払っていないことやトラブルになっていることを知られてしまいます。
給与の差し押さえが原因で会社を解雇されることや減給されることはありませんが、あなたの会社での信用は落ちてしまうことが予想されます。

 

4.遅延損害金を支払うことになる

 
慰謝料を支払うことを約束していたのにも関わらず、支払いをしなければ遅延損害金も請求されることになります。
遅延損害金とは、債務の履行が遅れた場合に損害を賠償するために支払われる金銭です。
簡単に言うと、支払いが遅れたことに対するペナルティです。
示談書に遅延損害金について取り決めをしていた場合には、その取り決め通りに遅延損害金を支払わなければなりません。
もし示談書で遅延損害金について取り決めを行っていなかった場合でも、遅延損害金を支払う義務は発生します。
この場合、法律で定められている法定利率が適用されるため、遅延損害金は年3%の法定利率で算出されます。
遅延損害金は一日でも支払いが遅れれば発生するので注意が必要です。

 

慰謝料を一括払いから分割にしてもらうためのポイント

 
慰謝料の一括払いが難しい場合でも、支払いを拒否や無視すればトラブルが大きく発展してしまいます。
一括払いが難しくても分割払いであれば慰謝料を支払っていけるという場合には、分割払いの交渉を行ってみましょう。
分割払いの交渉を行う際には、次のポイントを押さえて交渉を行ってください。
 

1.支払いが難しいことを具体的に説明する

 
分割払いに合意してもらうためには、支払いが難しいことを説明する必要があります。
給与や生活状況などを具体的に説明し、一括で支払うことが困難だということを相手に理解してもらいましょう。
具体的な説明をすることで相手は納得し、分割払いに合意する可能性があります。
 

2.支払いが遅れた場合のペナルティを決める

 
相手にとって分割払いはリスクが高いため、避けたいと考える支払い方法です。
最後まで慰謝料が支払われなかったり、途中から支払いが遅れてしまったりすることを想定し、分割払いを懸念する方が多いでしょう。
そのため、必ず支払うことを約束するだけではなく、支払いが遅れた場合のペナルティを決めておきます。
ペナルティがあれば相手を安心させることができます。
遅延損害金や罰金、残りの慰謝料の一括払いなどがペナルティとして挙げられます。
ただし、ペナルティを約束すれば、支払いが遅れた場合には必ずペナルティ通りに支払いを行わなければならないことを忘れてはなりません。
ご自身で対応できる範囲のペナルティを約束することが大切です。

 

3.合意書を作成する

 
慰謝料の分割払いに合意してもらった場合には、合意書を作成します。
書面に慰謝料金額や今後の支払い方法などについて残しておけば、「言った・言わない」というトラブルを防ぐことができます。
そのため、合意書の作成は慰謝料の請求側と支払う側のどちらにとっても大切な書面であると言えます。
合意書を作成すれば、相手も証拠を手元に残せるので安心するはずです。
合意書の作成はとくに決まった形式はないため、当事者が自由に作成することができます。
 

慰謝料の一括払いが難しい場合は弁護士の相談すべき理由

 
慰謝料の一括払いが難しい場合にはご自身で相手に交渉するだけではなく、弁護士に相談するという方法で問題解決の方向性を探ることができます。
弁護士は法律と交渉の専門家なので、相談や依頼することには多くのメリットがあります。
慰謝料の一括払いが難しい場合に弁護士に相談すれば、次のようなメリットが期待できます。
 

1.適切な慰謝料を知ることができる

 
慰謝料を請求された場合、まずは慰謝料の適切な金額を知ることが大切です。
慰謝料の金額はケースバイケースになるため一律ではありません。
そのため、弁護士に状況を説明し、過去の判例などから適切な慰謝料の金額を算出してもらいましょう。
適切な金額を知ることができれば、相手に減額交渉を行いやすくなります。
 

2.交渉を代わりにしてもらえる

 
弁護士に依頼すれば、減額や分割など慰謝料に関する交渉を任せることができます。
当事者同士で交渉を行えば、感情的になってしまうことも少なくなりません。
そうなれば、話し合いがスムーズに進みにくくなり、大きなトラブルに発展してしまう恐れもあります。
弁護士が介入すれば相手も落ち着いて交渉することができ、解決までスムーズに進みやすくなるでしょう。
法的な観点から減額や分割に関する主張を行うことができるため、相手が合意してくれる可能性も高まります。

 

3.手続きを全て任せられる

 
弁護士に依頼すれば、慰謝料請求に対する回答書や示談書などの手続きも全て任せることができます。
とくに示談書は不利にならないように内容をしっかりと確認して作成するべきです。
弁護士ならば示談書の作成も多く経験しているため、適切な内容の示談書を作成することができます。
また、裁判に発展する際にも裁判手続きなど全てを任せられるため、日常生活を過ごしながら問題解決を目指せるというメリットがあります。

 

まとめ

 
今回は、慰謝料の一括払いができない場合の対処法について解説しました。
慰謝料は原則的に一括払いですが、相手が合意すれば分割で支払っていくことができます。
また、相手が高額な慰謝料を請求していれば、減額交渉することで慰謝料を一括払いできる可能性があります。
まずは、弁護士に慰謝料金額の適切性や支払いへの対処法について相談してみましょう。
一括で払えない慰謝料金額の場合でも、弁護士が介入することで減額や分割によって問題を解決できる可能性が高まります。

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