浮気が発覚して暴力をふるわれた場合は慰謝料請求できる?

浮気が発覚して暴力をふるわれた場合は慰謝料請求できる?

あなたの浮気が配偶者に発覚してしまった時に、配偶者から暴力をふるわれたりしていませんか?
浮気の発覚により悲しみや怒りを抱える配偶者の気持ちも理解できますが、暴力は決して行ってはいけない行為です。
暴力をふるわれてしまった場合には慰謝料を請求することができますが、浮気をしていたことが暴力の原因だった場合に慰謝料は請求できるのでしょうか?
今回は、浮気の発覚によって暴力をふるわれた場合の慰謝料請求について解説します。
 

浮気が発覚して暴力をふるわれた場合について

 
配偶者の浮気が発覚すれば、裏切られたと感じて怒りを覚える方も多いでしょう。
その怒りが爆発してしまい、暴力に繋がるようなケースもあります。
浮気をした配偶者にも非がありますが、暴力を受けた場合はどちらに非があることになるでしょうか?
 

1.暴力は犯罪であり、不法行為

 
そもそも暴力はどのようなことが原因であったとしても、犯罪行為であることに違いはありません。
夫婦だからという理由で暴力が許されるわけでもなく、「暴行罪」や「傷害罪」が成立する可能性があります。
暴力によってケガをしなかった場合でも、暴力を受けた事実があれば「暴行罪」に該当し、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に科せられます。(刑法第208条)
一方で、暴力によって負傷した場合は「傷害罪」に該当し、15年以下の懲役または50万円以下の罰金という暴行罪より重い刑罰が科せられます。(刑法第204条)
 

また、暴力は民事上の不法行為に該当します。
不法行為とは他人に損害を与える行為のことを指し、加害者は被害者に対して損害を賠償する責任が生じます。(民法第709条)
暴力は他人の身体を侵害する行為になるため、不法行為として慰謝料を請求することが可能です。
 

2.浮気も不法行為になる

 
浮気は法律上で「不貞」と呼ばれ、不法行為に該当します。
夫婦は婚姻生活の平和を維持するための権利や利益が法律によって守られるべきだと考えられていますが、不貞はこうした権利や利益を侵害する行為です。
そのため、不法行為として慰謝料を請求されることになります。
ただし、浮気は不法行為ですが犯罪行為ではないため、刑事罰に科せられるようなことはありません。
 

浮気が発覚して暴力をふるわれた場合の慰謝料請求はどうなる?

 
暴力も浮気も不法行為であり、慰謝料を請求することができます。
それでは、浮気が発覚したことで怒りを覚えた配偶者から暴力を受けた場合、慰謝料請求はどのようになるのでしょうか?

1.配偶者から浮気の慰謝料を請求される

あなたが浮気をしていた場合、配偶者から浮気の慰謝料を請求されることになります。
浮気の慰謝料相場は50~300万円といわれています。
婚姻期間や子どもの有無、離婚の有無、浮気の悪質性の高さが慰謝料を決める判断材料になります。
浮気によって離婚をする場合や、浮気の期間が長かった場合は精神的に受ける苦痛が大きいと判断され、慰謝料の金額が高額になる傾向にあります。
 

2.暴力をふるわれたことに対して慰謝料を請求できる

 
浮気が発覚して配偶者から暴力をふるわれた場合、暴力をふるわれたことに対して慰謝料を請求することができます。
殴る・蹴るといった行為だけではなく、髪を引っ張る・胸倉を掴む・物を投げるなどの行為も暴力に該当します。
また、身体的な暴力だけではなく、暴言や脅迫などの精神的暴力や、生活費を渡さないなど経済的暴力も暴力の一種です。
暴力に対する慰謝料は、暴力の回数や悪質性などから金額を決めることになります。
暴力で負傷しなかった場合は数十万円の慰謝料が相場になりますが、負傷した場合で通院や入院が長期化した場合は数百万円の慰謝料を請求できるケースもあります。
重大な後遺症として残った場合には、1000万円を超えるような高額な慰謝料になる可能性も考えられるでしょう。
 

3.慰謝料を合意相殺できる

 
浮気の発覚で暴力がふるわれた場合、不倫した側にも暴力をふるった側にも慰謝料の請求が発生します。
そうすると、互いに慰謝料を請求し合うようなことになってしまうという複雑な事態になってしまいます。
このように双方が慰謝料請求の権利を持つ場合、慰謝料を合意相殺できることが法律で定められています。(民法第509条)
合意相殺とは、互いにの合意で慰謝料を相殺することです。
どちらか一方の意思で合意相殺を行うことはできませんが、双方が合意すれば慰謝料を相殺することができます。
 

4.浮気相手の配偶者から慰謝料請求される場合もある

 
浮気相手も既婚者だった場合、浮気相手の配偶者からも慰謝料を請求される恐れがあります。
浮気相手の配偶者が浮気を知り、浮気の証拠を持っていれば慰謝料を請求される可能性があると考えられます。
浮気相手の夫婦関係が浮気によって破綻してしまい、離婚に至れば請求される慰謝料の金額も高額になってしまうでしょう。
 

浮気が発覚して暴力をふるわれた場合に慰謝料を支払わなくてもよいケース

 
浮気が発覚して暴力をふるわれた場合でも、浮気に対する慰謝料を支払わなくてもよいケースがあります。
その場合は慰謝料が合意相殺になることはなく、相手から慰謝料を受け取ることができます。
浮気の慰謝料を支払う必要がないケースは、次のような場合です。
 

1.肉体関係がない

 
配偶者が浮気だと判断していたとしても、法律上の浮気である「不貞」に該当しなければ慰謝料は発生しません。
不貞行為の判断基準は、肉体関係の有無です。
夫婦には貞操義務があり、配偶者以外の人と肉体関係を持つことが禁止されています。
そのため、配偶者以外の人と肉体関係を持つことは貞操義務違反になり、不貞行為だと考えられます。
食事などのデートをしていただけだった場合や、キスなどのスキンシップをしただけだった場合は、不貞行為と判断されずに慰謝料が発生しない可能性があります。
 

2.夫婦関係がすでに破綻していた

 
浮気が始まった時にはすでに夫婦関係が破綻していたというようなケースもあるでしょう。
この場合、法律上で守られるべき婚姻生活の平和を維持するための権利は消滅していると考えられるため、浮気の慰謝料請求も認められません。
夫婦関係がすでに破綻していたと判断される基準は、離婚協議や調停、裁判を行っているようなケースや、別居生活が長期化しているようなケースです。
ただし、双方に夫婦関係の修復の意思がないようなケースでなければ夫婦関係が破綻しているとはいえません。
夫婦の一方が夫婦関係の修復を望んでいる場合は、夫婦関係は破綻していないと判断されます。
 

3.浮気より以前からDVを受けていた

 
浮気が発覚して暴力を受けただけではなく、浮気より前から配偶者によるDVを受けていた場合は慰謝料が発生しません。
なぜならば、DVによってすでに夫婦関係が破綻していると考えられるからです。
この場合、浮気より以前からDVがあったという証拠が必要になります。
DVは身体的暴力だけではなく精神的暴力や経済的暴力なども含まれるため、日頃からDVを受けていた場合はDVの内容を日記にメモすることや録音などの証拠を残すようにしましょう。
 

4.時効が成立している

 
浮気が発覚しても、その浮気の時効が成立していれば慰謝料を請求することはできません。
不法行為に対する慰謝料請求の時効は、損害や加害者を知った時から3年間、もしくは不法行為から20年間と法律で定められています。(民法第724条)
つまり、浮気や浮気相手を知ってから3年間、もしくは浮気が始まってから20年間が経過していれば時効が成立することになります。
過去の浮気に対して慰謝料を請求された場合には、時効が成立していないか確認するようにしましょう。
 

浮気が発覚して暴力をふるわれた場合にすべきこと

 
浮気が発覚して暴力がふるわれた場合には、適切に対処することが大切です。
慰謝料請求やご自身の安全を守るためにも次のことを行うようにしましょう。
 

1.暴力がふるわれた証拠を残す

 
暴力がふるわれた場合には、暴力があったことを立証できる証拠を残すようにしましょう。
暴力がふるわれた動画や音声の録画、暴力によって生じたケガの写真、病院の診断書などが証拠として挙げられます。
継続的に暴力があった場合には、受けた暴力の内容や日時などをメモした日記も有力な証拠になります。
ただし、証拠を残す際には本人に気付かれないようにしましょう。
証拠を集めていることに加害者が気付けば、逆上して暴力が悪化してしまう恐れがあります。
 

2.身の安全を確保する

 
暴力によって身の危険を感じた場合には、すぐに避難をしててください。
身の安全を確保することが何よりも大切です。
親や兄弟姉妹、友人など頼れる人の家に避難することもできますが、配偶者も知っている人の家は居場所を突き止められてしまう恐れがあります。
居場所を知られないようにするには、シェルターなどを利用することをおすすめします。
各自治体に設置されている公的なシェルターや民間のシェルターでは、一時的な避難が可能です。
 

3.警察へ被害届を提出するか検討する

 
暴力行為は犯罪なので、暴力をふるわれた場合は警察へ被害届を提出するか検討してください。
警察へ被害届を提出すれば、暴行罪や傷害罪などの処罰を求めることができます。
また、被害届の提出は離婚や慰謝料請求、保護命令の証拠になります。
 

4.裁判所に保護命令を出してもらうことを検討する

 
配偶者の元を離れて避難をしても、配偶者が職場や自宅付近に待ち伏せしたりするようなこともあるでしょう。
こうした場合には、裁判所に保護命令を出してもらうことを検討してください。
保護命令を申し立てれば、法律によって身を守ることができるようになります。
接近禁止命令では職場や自宅など被害者へのつきまといが禁止されますし、退去命令では住居から退去して接近を禁止することができます。
また、子どもがいる場合には、子どもへの接近禁止命令を申し立てることも可能です。
保護命令の申立てを行うには、警察や配偶者暴力相談支援センターへの相談が必要です。
 

浮気が発覚して暴力をふるわれた場合に離婚することはできるのか?

 
浮気が発覚して暴力をふるわれた場合、慰謝料の請求だけではなく離婚を検討する方もいるでしょう。
浮気の発覚で暴力を受けた場合、離婚することはできるのでしょうか?
 

1.協議ならば離婚できる

 
離婚をする場合、夫婦の話し合いによる「協議離婚」から行われることが一般的です。
協議離婚では双方が合意すれば離婚を成立させることができるため、浮気や暴力といった離婚原因に関係なく離婚を進められます。
しかし、夫婦の一方が離婚を拒否していれば協議で離婚することはできません。
また、離婚話を切り出すことで暴力が悪化する恐れがあるため、弁護士など第三者に介入してもらって話を進めることをおすすめします。
 

2.裁判でも離婚できるが、有責性に注意が必要

 
協議や調停で離婚の合意が得られない場合、裁判で離婚を争うことになります。
裁判で離婚をするには、法律で定められた離婚理由である「法定離婚事由」が必要です。(民法第770条)
浮気も暴力も法定離婚事由に該当しますが、離婚が認められるかどうかは夫婦のどちらに有責性があるのかという点が重要になってきます。
浮気が先行していれば浮気をしたあなたに有責性があると判断されるため、あなたからの離婚請求は認められません。
しかし、暴力が浮気の前から行われていた場合は、暴力をふるっていた配偶者に有責性が認められ、あなたからの離婚請求は認められるでしょう。
 

浮気が発覚して暴力をふるわれた場合は弁護士に相談しましょう

 
浮気が発覚して暴力をふるわれた場合、慰謝料や離婚請求はどちらに非があるのかという点で複雑化してしまうケースも少なくありません。
当事者同士で解決を目指しても、暴力をふるわれたことで配偶者に対して恐怖を抱いてしまい、話し合いが困難になるケースもあるでしょう。
まずは弁護士に相談し、法的な観点からアドバイスを得ることをおすすめします。
弁護士に依頼すれば慰謝料や離婚に向けた交渉も任せることができるため、配偶者と直接顔を合わせる必要がありません。
そのため、精神的な負担が大幅に軽減されるでしょう。
身の安全を確保しながら慰謝料や離婚問題の解決を目指すためにも、弁護士に相談することから始めてみてください。
 

まとめ

 
今回は、浮気の発覚で暴力をふるわれた場合の慰謝料請求について解説しました。
浮気も暴力も不法行為になるため、双方が慰謝料を請求すれば合意相殺になる可能性があります。
しかし、相手の暴力が浮気の前から行われていたのであれば、浮気の慰謝料は発生しません。
むしろ相手に有責性があり、慰謝料や離婚を請求することができます。
慰謝料や離婚問題に関する悩みや疑問は、弁護士に相談してみてください。

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