慰謝料の遅延損害金はいつから発生する?遅延損害金の利率や注意点について解説
不倫
何らかのトラブルを解決するために慰謝料を支払うことに合意したものの、支払い期限にお金が用意できないような場合もあるでしょう。
または、慰謝料の支払い期限が過ぎても相手に振り込みを意図的に行わないというようなケースもあるかもしれません。
こうした場合には、請求者から慰謝料だけではなく「遅延損害金」も請求されることになります。
遅延損害金とはどういったお金であり、どのように金額は計算されるのでしょうか?
今回は、慰謝料の遅延損害金について解説します。
遅延損害金が発生するタイミングや利率、注意点なども併せて解説していきます。
慰謝料の遅延損害金とはどんなものなのか?
不法行為があった場合、損害賠償として慰謝料を被害者へ支払う義務が加害者には生じます。
この慰謝料の請求において、示談書の中や支払いの際のトラブルで「遅延損害金」という言葉を耳にすることがあるでしょう。
慰謝料の遅延損害金とはどういったお金なのでしょうか?
1.慰謝料の遅延損害金とは
慰謝料の遅延損害金とは、慰謝料の支払い期日が守られなかった場合に発生する損害賠償金です。
慰謝料の支払いでは支払い期日が定められることが大半ですが、この期日に支払いが遅れると遅延損害金が発生します。
本来であれば支払い期日に払われるべき慰謝料ですが、期日通りに支払われなかったことで被った不利益を償うという意味があります。
また、支払期日という約束を守らなかったことへのペナルティとも言えるでしょう。
2.慰謝料の遅延損害金について決めるタイミング
慰謝料の遅延損害金については、あらかじめ決められていることが多いです。
どのようなタイミングで遅延損害金に関する支払い義務や金額などについて決めることになるでしょうか?
①被害者との示談
不法行為があった場合、被害者から加害者に対して慰謝料請求が行われます。
慰謝料請求では当事者同士が協議を行い、双方が慰謝料の支払いや金額などに合意すれば「示談」という形になります。
この示談の際には示談書が作成されることが一般的ですが、示談書には慰謝料の支払い方法や支払い期日に加え、遅延損害金について記載されることが多いです。
遅延損害金について記載する理由は、慰謝料の不履行を予防するためと言えます。
②裁判の判決
慰謝料の問題が当事者同士で合意に至らない場合には、裁判へ発展してしまうことがあります。
もしくは、当事者の協議は省かれていきなり裁判で慰謝料を請求されるようなケースもあるでしょう。
裁判になれば最終的には判決で慰謝料の支払い命令が出ることになりますが、この際に遅延損害金も決定されます。
慰謝料の遅延損害金はどんな時に発生するのか?
慰謝料の遅延損害金は、慰謝料の支払いが遅れた場合に発生します。
それでは、遅延損害金はいつの時点から発生するのでしょうか?
慰謝料の遅延損害金の起算日の考え方には、主に次の3つのパターンがあります。
1.支払い期限を過ぎた日
一般的に慰謝料の遅延損害金として請求されることが最も多いのは、慰謝料の支払い期日を過ぎていた場合です。
示談によって慰謝料の支払いに合意したにも関わらず、支払い期限を守らなければ遅延損害金が発生します。
この場合、慰謝料の支払い期限に設定されている日の翌日が起算日になります。
例えば、4月25日までに慰謝料を支払うという約束だった場合には、翌日の4月26日から遅延損害金が発生します。
2.不法行為があった時
示談の有無に関係なく、遅延損害金が発生するようなケースもあります。
示談では慰謝料の支払いだけを請求して遅延損害金は別途請求されないことが一般的ですが、法的には慰謝料と別で遅延損害金を請求することも可能です。
そのため、裁判では慰謝料と遅延損害金が分けて請求されます。
そして、この場合には不法行為があったときを起算日にする場合があります。
3.訴状送達の日の翌日
慰謝料と遅延損害金を分けて請求する場合、起算点は不法行為があった日ではなく「訴状が送達された日の翌日」とされることも多いです。
例えば、不貞行為の慰謝料請求の場合、不貞行為が始まった時点と終わった時点など遅延損害金の起算日が争点になってしまいます。
こうした起算日の争点を避けるために、訴状が送達された日の翌日が設定されることがあります。
遅延損害金の金額や利率を決める方法について
遅延損害金は示談や裁判で決めることになりますが、金額や利率はどのように決められるのでしょうか?
遅延損害金の金額や利率を決める方法についてご紹介します。
1.遅延損害金を決める方法
示談の場合は、被害者側が遅延損害金に関する条件を示談書内に記載し、加害者側が検討して合意するというケースが多いです。
ただし、遅延損害金に関して好きに金額を設定できるということではありません。
遅延損害金は、「支払いが遅れたら○○円支払う」という決め方ではなく、「利率」を設定して金額を算出します。
この利率には上限が設けられており、遅延損害金の上限利率に関しては次の項で解説します。
2.遅延損害金の上限利率
慰謝料の遅延損害金に関して明確に定められた法律があるわけではありません。
しかし、利息制限法という法律によって金銭の貸し借りでは上限利率が設けられています。
- 元金が10万円未満…年29.2%まで
- 元金が10万円以上100万円未満…年26.28%
- 元金が100万円以上…年21.9%
こうした上限が設けられていますが、これはあくまでも事業者と消費者の間の契約を規制するものです。
そのため、不貞行為の慰謝料請求など個人間の慰謝料請求では適用されません。
そうはいっても高すぎる利率を定めてしまうと、公序良俗違反として無効になってしまう恐れがあります。(民法第90条)
そのため、個人間の慰謝料請求における遅延損害金は法定利率が適用されることが多いです。
3.法定利率について
法定利率は法律で定められた利率であり、裁判の判決で遅延損害金を決める時に用いられる利率です。
法定利率は年率3%と定められています。
以前までは年率5%でしたが2020年4月の民法改正によって3%に変わり、3年ごとに利率は見直される変動金利制になっています。
この法定利率は裁判の判決だけではなく、示談書に遅延損害金に関する約定がなかった場合や、高額すぎる遅延損害金の利率が無効だと判断された場合にも適用されます。
遅延損害金を支払わなかった場合に起こること
請求者から遅延損害金を請求されたものの、そのまま支払いを拒否しようと考える方もいるかもしれません。
しかし、遅延損害金を支払わないでいれば、次のようなことが起こる可能性があります。
1.残りの慰謝料を一括払いで請求される
慰謝料を一部だけ支払っていたような場合や、分割払いで支払う約束をしていた場合には、遅延損害金が発生した時点で残りの慰謝料の一括払いを請求されます。
慰謝料も債権の扱いになるため、滞納があった場合には一括請求することができるのです。
そもそも、慰謝料は基本的には一括払いで支払われるものですが、当事者間で示談した場合には分割払いで合意されるようなケースもあります。
この場合、残りが一括払いで請求されることになるので、支払いが困難になってしまう恐れがあります。
2.強制執行による財産の差し押さえが行われる
遅延損害金が発生するということは、慰謝料の支払いも滞っているということになります。
この場合、請求者が裁判所に強制執行を申立てれば、財産が差し押さえられてしまうことになります。
財産が差し押さえにあえば、自宅や車、預貯金、給料などが差し押さえ対象になってしまいます。
差し押さえになってしまえば撤回は難しいため、強制執行になるような事態は避けたいものです。
慰謝料の遅延損害金が発生した場合にできること
慰謝料の遅延損害金が発生するような事態になったということは、請求者から慰謝料の一括払いや強制執行になる可能性があるということです。
最悪の事態を避けるためにも、次の方法で対処しましょう。
1.家族や知人にお金を借りて支払う
親など家族、もしくは信頼のできる知人などにお金を借りて支払うという方法があります。
お金を借りるためには事情を説明する必要がありますが、金額によっては借りることができる可能性もあるでしょう。
この際には、あとでトラブルになってしまわないように借用書を作成するようにしましょう。
2.金融業者にお金を借りて支払う
家族や知人にお金を借りることが難しい場合や、事情を説明することに抵抗がある場合には、金融業者にお金を借りて支払うという方法があります。
ただし、金融業者から借りてしまうと利息が発生しますし、返済が滞ってしまえば借金の返済を一括請求されることになります。
最終的には破産に追い込まれるなどという事態に発展する恐れもあるため、無理のない返済プランなのか検討してから契約すべきでしょう。
3.請求者に相談する
慰謝料の残金と遅延損害金の支払いが難しい場合には、請求者にまずは連絡をしましょう。
支払期限を過ぎてから連絡をするのではなく、期日前に連絡をすることが理想です。
請求が困難である理由を説明し、謝罪もきちんと行えば、相手も理解してくれる可能性があります。
そうすれば、支払いを少し待ってもらうことや、支払い方法の変更などの提案に繋がるかもしれません。
法外な遅延損害金を請求された場合にはどうすべきか?
遅延損害金を請求するのは不法行為に遭った被害者なので、慰謝料の支払いが遅れるような事態に腹を立ててしまう恐れがあります。
そうすれば、法外な遅延損害金を請求してくるようなケースもあるでしょう。
明らかに高額すぎる遅延損害金や、納得のできない遅延損害金を請求された場合にはどのように対処すべきなのでしょうか?
1.法定利率について相手に説明する
相手から請求された遅延損害金が高額すぎる場合には、相手に法定利率について説明を行いましょう。
もしかすると法定利率について知らずに請求を行っている可能性があります。
また、高すぎる利率は公序良俗違反になることも伝え、考え直すようにお願いしてみてください。
この際に、相手に対して高圧的な態度や感情的に話してしまうと、トラブルが大きくなってしまう恐れがあります。
あくまでも冷静に話すことと併せ、慰謝料の支払いが遅れている旨についても謝罪などを行うべきでしょう。
2.弁護士に相談する
遅延損害金が高額すぎるものの相手が金額の変更はないと言い張っているようなケースでは、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は法的な知識があるだけではなく、交渉力もあります。
そのため、相手を怒らせないように説得することができ、適切な遅延損害金の金額の支払いで合意を得られる可能性が高いです。
また、支払いの遅れている慰謝料に関しても支払い方法について相談できる可能性があります。
示談の時の取り決めが大切
慰謝料の遅延損害金が発生しないようにするためには、示談の時点で慰謝料の金額や支払いについてきちんと検討しておく必要があります。
収入や生活状況などから考えて、どうしても請求されている慰謝料を支払えないような場合には、示談で合意する前に減額交渉や分割払いについて請求者と交渉を行うべきです。
そうすれば、慰謝料の遅延損害金が発生するような事態を避けられます。
しかし、直接当事者同士で協議を行えば、感情的になって交渉がこじれてしまうようなケースも珍しくありません。
そのため、慰謝料の交渉や示談に関する取り決めは、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば慰謝料の減額も期待でき、無理のない範囲で支払えるように示談できる可能性が高まります。
まとめ
今回は慰謝料の遅延損害金について解説しました。
慰謝料の支払いが遅れてしまえば遅延損害金が発生し、相手は遅延損害金を請求する権利があります。
そのため、請求された場合には支払わなければなりません。
ただし、支払いが難しいようなケースや、遅延損害金の請求金額に疑問がある場合には、言われるままに支払うのではなく弁護士に相談してみることをおすすめします。
放っておけば財産の差押えられてしまうような事態に発展する恐れもあるので、早めに相談するようにしましょう。
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