離婚調停中に配偶者の不貞行為が発覚!慰謝料請求はできるのか?

婚姻生活に終止符を打つために離婚調停を行っている時に、配偶者の不貞行為が発覚するような場合もあります。
不貞行為は夫婦にとって裏切りといえる行為であり、離婚調停中とはいえ離婚はまだ成立していないのだから慰謝料を請求したいと考える方も多いかもしれません。
離婚調停中の不貞行為の発覚に対して慰謝料は請求できるのでしょうか?
 
今回は、離婚調停中に発覚した不貞行為への慰謝料請求について解説します。
 

離婚調停中に不貞行為が発覚したら慰謝料請求はできるのか?

 
離婚調停中に相手の不貞行為が発覚すれば、慰謝料請求をしたいと考える方もいると思います。
しかし、離婚調停中はまだ離婚が成立していない状態とはいえ、離婚に向けた話し合いを行っている段階です。
こうした状況で不貞行為が発覚すれば、慰謝料を請求することはできるのでしょうか?
 

1.不貞行為とは

 
不貞行為とは法律上の言葉であり、一般的に「不倫」と呼ばれる行為です。
法律における不貞行為は、配偶者以外と肉体関係を持った場合になります。
 
不貞行為は不法行為に該当し、被害者に対して賠償責任を負うことが民法709・710条に定められています。
そのため、配偶者以外の人物と肉体関係を持っていたことが判明すれば、不貞行為を行った配偶者に対して慰謝料を請求することが可能です。
 

2.慰謝料請求できるかどうかはケースバイケース

 
不貞行為があった場合には慰謝料請求を行うことができます。
しかし、離婚調停中の場合は慰謝料請求できるかどうかはケースバイケースと言えます。
不貞行為の慰謝料で大きなポイントになる部分は、「不貞行為の事実」と「夫婦関係の状態」です。
そもそも不貞行為があったという事実がなければ慰謝料請求はできないため、肉体関係のある関係があったことを立証する必要があります。
 
また、不貞行為を立証できる証拠があったとしても、夫婦関係が破綻していれば慰謝料請求はできません。
夫婦は婚姻共同生活の平和を維持する権利や利益が法律によって守れていますが、まだ離婚をしていない状態でも夫婦関係が破綻していたのであればこれらの権利や利益は存在しないと判断されるため、慰謝料請求が認められない可能性があります。
 

離婚調停中に不貞行為が発覚しても慰謝料請求できないケース

離婚調停中に配偶者の不貞行為が発覚した場合、慰謝料請求できるかどうかはケースバイケースになります。
離婚はまだ成立していない状況であっても、次のような場合には慰謝料請求することはできません。
 

1.離婚に合意している場合

 
すでに双方が離婚に合意しており、離婚手続きを進めているような段階で配偶者に交際相手ができたのであれば慰謝料請求をすることはできません。
双方が離婚に合意した時点で夫婦関係が破綻していると判断され、離婚手続きが終わっていない状態であったとしても夫婦が法律上で守られる権利や利益は存在しないと考えられます。
 
そのため、離婚の合意後に配偶者が他の人物と肉体関係を持ったとしても不貞行為とは認められず、慰謝料を支払う義務は発生しません。
 

2.別居が長期化している場合

 
夫婦の別居期間が長期化している場合、夫婦関係は破綻していると考えられます。
そのため、相手が他の人物と交際をしていたとしても慰謝料請求することはできないことが一般的です。
 
ただし、仕事による単身赴任や、子供の受験や教育のための一時的な別居、病気による長期入院など、やむを得ない別居の場合には夫婦関係の破綻は認められないので慰謝料請求が可能です。
 

3.不貞行為とは認められない関係の場合

 
不倫の基準には個人差があります。
自分の中の不倫の基準に該当しているような場合でも、法律上では不貞行為として認められないような場合もあります。
法律上の不貞行為は、「配偶者以外と肉体関係を持つこと」です。
つまり、食事などのデートをすることや、キスなどのスキンシップだけでは不貞行為とは認められないため、慰謝料請求をすることはできません。
 
ただし、肉体関係がなくても長期間に渡ってデートを繰り返し、二人の関係性が深いと判断されるような場合には慰謝料請求が認められる可能性もあります。
 

4.不倫相手に故意や過失がない場合

 
不貞行為は共同不法行為であり、不貞行為を行った二人に共同で責任が生じます。
そのため、不貞行為を行った配偶者だけではなく、不倫相手にも慰謝料請求をすることが可能です。
しかし、不倫相手に故意や過失がなければ慰謝料を支払う義務は発生しません。
 
不貞行為に対する故意や過失とは、配偶者が独身だと偽っていた場合や、既婚者であることを隠していた場合のことを指します。
このような場合には不倫に相手に慰謝料請求をしても認められず、反対に不倫相手から配偶者に対して「貞操権の侵害」として慰謝料を請求去れる可能性があります。
 

離婚調停中に不貞行為が発覚して慰謝料請求できるケース

 
離婚調停中に不貞行為が発覚しても慰謝料請求をできないケースを紹介しましたが、慰謝料を請求できるようなケースもあります。
慰謝料請求できるケースに該当すれば、離婚調停を進めながら慰謝料請求も行うことが可能です。
 

1.一方だけが離婚を主張している場合

 
夫婦の内、一方だけが離婚を主張しており、もう一方は婚姻関係の継続を望んでいる場合には、婚姻関係が破綻しているとは言い切れません。
 
婚姻関係の破綻は、夫婦関係の修復が難しく、夫婦どちらにも婚姻生活を継続する意思がない状態を指します。
そのため、夫婦のどちらか一方が婚姻生活の継続を望んでいるのであれば、夫婦関係が修復できる可能性はあると判断されます。
 
夫婦関係が破綻していると認められないのであれば、配偶者以外と肉体関係を持つことは不貞行為に該当し、不貞行為が発覚した場合には慰謝料を請求することができます。
 

2.離婚調停前から不貞行為があった場合

 
離婚調停の前の夫婦関係が破綻する以前から不貞行為があった場合には、慰謝料を請求することができます。
不貞行為は夫婦関係を破綻させる原因であり、不貞行為を行った配偶者は有責配偶者として慰謝料を支払う義務が生じます。
 
離婚調停中に不貞行為が発覚した場合でも、離婚調停よりも以前から不貞行為が行われていた可能性があります。
そのため、不貞行為の始まった時期の分かる手がかりを探ることが離婚調停中の慰謝料請求では重要なポイントになってくると言えるでしょう。
 

不貞行為の慰謝料はどれくらい請求できるのか?

 
不貞行為に対する慰謝料を請求するのであれば、どれくらいの金額が請求できるのか知っておきたいという方も多いでしょう。
相場金額を知っておけば、慰謝料請求の際に金額を設定しやすくなります。
慰謝料金額の相場と、慰謝料が高額になるケースについてご紹介します。
 

1.慰謝料の相場金額

 
不倫の慰謝料金額は、法律で細かく定められているわけではありません。
そのため、慰謝料は被害者の言い値で請求されることになります。
しかし、慰謝料は過去の裁判の判例から相場があるため、相場金額よりも少し高い金額で請求して交渉をすることが一般的です。
 
不倫の慰謝料金額の相場は、50~300万円です。
夫婦関係の状態や不倫の内容など総合的な判断で金額が決まるため、相場金額には開きが生じます。
 

2.慰謝料が高額になるケース

 
不倫の慰謝料金額は、さまざまな要素を考慮して定められます。
「夫婦関係」と「不倫の悪質性」が慰謝料金額を決める要素になります。
 
夫婦関係では、次のような要素があれば慰謝料金額が高額になると考えられます。
 

  • 婚姻期間が長い
  • 年齢が高い
  • 不貞行為が行われる前の夫婦関係が良好だった
  • 夫婦の間に子供がいる

 
婚姻期間が長いほど精神的苦痛は大きくなると判断され、高齢になるほど離婚後の再出発が簡単なものではなくなることから慰謝料金額は増額される傾向にあります。
また、夫婦関係が良好だった場合や子供がいた場合にも精神的苦痛が大きいと判断されるため、慰謝料が高額になると考えられます。
 
そして、不倫の悪質性では、悪質性が高いと判断される要素が多いほど慰謝料金額は高額になります。
次のような場合には、不倫の悪質性が高いと判断され慰謝料が高額になると考えられます。
 

  • 不倫相手との交際期間が長い
  • 不貞行為が発覚しても謝罪をしていない
  • 不貞行為を隠して離婚しようとしていた
  • 不貞行為がないと偽証し、証拠を隠そうとしていた
  • 不倫相手が妊娠した

 

離婚調停中に不貞行為が発覚した場合にすべきこと

 
離婚調停中に不貞行為が発覚した場合、相手を問い詰めたくなると思いますが、我慢をして冷静に対処することが大切です。
不貞行為が発覚した場合には、次のことを行うようにしましょう。
 

1.不貞行為の証拠を集める

 
まずは不貞行為の証拠を集めます。
不貞行為の証拠がなければ相手が不貞行為を否定する可能性があり、慰謝料請求を行うことが困難になります。
証拠を集めていることが相手にバレてしまえば証拠隠滅される恐れがあるので、バレないように証拠を集めましょう。
 
不貞行為の証拠は、肉体関係のあることが客観的に立証できる証拠が望ましいです。
ホテルに出入りしている写真や、性行為の動画や画像、肉体関係があることの分かる内容のメッセージなどが証拠として挙げられます。
また、プレゼントやデートのレシートや通話履歴なども組み合わせれば証拠として認められることがあるので、証拠はたくさん集めておきましょう。
 

2.不倫相手にも慰謝料請求する場合は相手の情報も集める

 
不貞行為の慰謝料請求は、配偶者だけではなく不倫相手にも行うことができます。
不倫相手にも慰謝料請求を行う場合には、相手の名前や住所などの情報が必要になります。
内容証明郵便で慰謝料を請求することが一般的ですが、名前と住所が分からなければ相手に送付ができないからです。
 
住所が分からない場合でも、勤務先が分かっていれば勤務先に送付することも可能です。
また、電話番号が分かっていれば、弁護士に依頼することで電話番号から住所を調べることができます。
 

3.弁護士に相談する

 
離婚調停中に不貞行為が発覚した場合には、まず弁護士に相談することをおすすめします。
複雑な状況下での慰謝料請求になるので、弁護士に相談することで今後の手続きや対処について法的なアドバイスを受けられます。
 
不倫慰謝料請求は当事者間で行うと感情的になってしまい、話し合いが進まないようなケースも珍しくありません。
スムーズに話し合いを進めることや、少しでも高額な慰謝料を獲得するためにも専門家である弁護士に任せましょう。
 

離婚調停中に発覚した不貞行為への慰謝料請求を行う場合の注意点

 
離婚調停中に不貞行為が発覚し、配偶者に慰謝料を支払う義務が生じるような場合には、離婚後の生活のためにも慰謝料請求をしたいと考える方も多いでしょう。
慰謝料請求を行えば、相手も何らかの対策を講じてくることが予想されます。
慰謝料請求を行う際には次のことに注意してください。
 

1.夫婦関係の破綻を主張される可能性がある

 
不貞行為が始まった時期には夫婦関係が破綻していたと配偶者が主張する可能性があります。
夫婦関係が破綻していたのであれば、慰謝料を支払う義務が生じないからです。
 
夫婦関係の破綻を主張されても対処できるように、不貞行為が始まった時期の分かる証拠や、不貞行為が始まった時期には夫婦関係が破綻していなかった証拠を準備しておきましょう。
不貞行為の始まった期間が分かれば、期間が長いほど高額な慰謝料を請求できる可能性が高まります。
 

2.不貞行為の開始時期を偽証される可能性がある

 
不貞行為の開始時期を偽証し、離婚の合意後や離婚調停が始まっていた時期だと偽証するようなケースもあるでしょう。
 
こうした偽証を防ぐためには、しっかり証拠集めを行っておくだけではなく、証拠を集めていることを相手に知られないようにすべきだと言えます。
ご自身で証拠を集めることが難しい場合には、探偵や興信所に相談してみましょう。
 

まとめ

今回は離婚調停中の不貞行為に対する慰謝料請求について解説しました。
 
離婚調停中に相手の不貞行為が発覚した場合には、婚姻関係が破綻しているかどうかが慰謝料請求で大きなポイントになってきます。
離婚調停を進めながら不貞行為への慰謝料請求も行うことになれば、精神的にも負担が大きくなることが予想されます。
ご自身で対応するには複雑な状況になってしまうため、専門家である弁護士に相談しましょう。
 
弁護士に相談すれば、証拠集めのアドバイスを受けることもでき、慰謝料請求の手続きや交渉なども任せることができます。

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