セックスレスで不倫した場合、慰謝料請求の支払い義務はあるのか?
不倫夫婦生活が長くなると、セックスレスになってしまう夫婦も少なくありません。
セックスレスでも家庭が円満なケースもありますが、セックスレスが原因で不倫してしまうようなケースもあります。
不倫をした場合には慰謝料の支払い義務が生じる可能性があるということをご存知の方も多いと思いますが、セックスレスが原因の場合の不倫でも慰謝料の支払い義務は生じるのでしょうか?
今回は、セックスレスで不倫した場合の慰謝料請求の支払い義務について解説します。
セックスレスで不倫は許される?
配偶者とセックスレスになってしまったからといって性欲が減退しているというわけではありません。
そのため、性欲を満たすために不倫をしてしまうというようなケースもあるでしょう。
セックスレスが原因で不倫をすることは許されるものなのでしょうか?
1.セックスレスの基準とは
そもそもセックスレスとは、どれくらいの期間パートナーとの性行為を行わないことを指すのでしょうか?
日本性科学会によると、セックスレスとは「病気などの特別な事情がないにも関わらず、1カ月以上性交渉のないカップル」としています。
しかし、セックスレスに明確な基準はないため、「カップルのどちらかが性交渉を望んでいるにも関わらず長期間できない状態」に陥っていればセックスレスであると言えるでしょう。
仕事や育児などによる日常生活の忙しさや、一緒に生活していく内に異性としての魅力を感じなくなったなどということが原因になり、セックスレスになってしまう夫婦は多いと言えます。
2.セックスレスは離婚原因として認められる
夫婦がセックスレスになってしまった場合、離婚問題に発展する場合があります。
当事者同士の協議による協議離婚であれば、理由に関係なく双方が合意すれば離婚することができます。
しかし、どちらかが離婚に合意しない場合には裁判で離婚を争うことになり、裁判で離婚するには法律で定められた離婚事由が必要です。
法定離婚事由にはいくつかの種類がありますが、セックスレスは「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
セックスレスが原因で夫婦関係が破綻してしまっているような場合であれば、裁判で離婚が認められる可能性が高いでしょう。
3.セックスレスと不倫は別問題
配偶者とセックスレスになっているのだから不倫をしても問題ないだろうと考える方もいるでしょう。
セックスレスは法定離婚事由として認められる可能性がありますが、だからといって不倫が許されるわけではありません。
セックスレスは不倫とは別問題として考えられ、どんな理由であっても不倫をした場合には慰謝料や離婚請求される可能性があります。
セックスレスで不倫した場合に請求される可能性のあるもの
セックスレスで不倫してしまった場合、離婚や慰謝料などを請求される可能性があります。
具体的にどのようなものを請求される可能性があるのかみていきましょう。
1.配偶者からの離婚料請求
セックスレスで不倫した場合、配偶者から離婚請求される可能性があります。
協議による離婚であなたが離婚を拒否したとしても、裁判で離婚が認められてしまう可能性があります。
前述したようにセックスレスは法定離婚事由に該当する可能性がありますが、セックスレスで不倫をした場合には不倫に焦点が当てられることになるでしょう。
なぜならば、不倫は法定離婚事由に該当するからです。
裁判所が不貞行為(不倫)があったと判断すれば、あなたが離婚に合意しなくても法律上で離婚が成立することになってしまいます。
2.配偶者からの慰謝料請求
セックスレスで不倫をした場合、精神的苦痛を受けたとして配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。
不倫は法律上で不貞行為を呼ばれ、不法行為の1種です。
不法行為を行えば、被害者に対して加害者は損害を賠償する責任が生じることが民法第770条に規定されています。
そのため、不倫をすればセックスレスなどの理由は関係なく、慰謝料を支払う義務が生じることになります
3.不倫相手、もしくは不倫相手の配偶者からの慰謝料請求
セックスレスで不倫をした場合、自身の配偶者だけではなく、不倫相手が既婚者であれば相手の配偶者からも慰謝料を請求される可能性があります。
どちらの配偶者からも慰謝料を請求されれば、最終的に支払う慰謝料金額は高額になってしまうことが予想されます。
また、不倫相手が未婚の場合でも、慰謝料請求されるようなケースがあります。
それは、貞操権を侵害した場合です。
貞操権を侵害したと言えるケースは、独身と偽って相手と性的関係を持った場合や、もうすぐ離婚するなどと言って相手を積極的に騙して関係を持ったような場合が該当します。
セックスレスで不倫して慰謝料請求された場合、支払い義務はあるのか?
セックスレスで不倫して慰謝料請求をされた場合、全ての場合に慰謝料の支払い義務が生じるというわけではありません。
慰謝料の支払い義務について知るためにも、不倫の定義について知っておきましょう。
1.そもそも不倫とは
不倫の基準に対する考え方には個人差があります。
異性と連絡を取っているだけで不倫と考える方もいれば、二人きりで食事を繰り返し行っている場合には不倫だと考える方もいるでしょう。
夫婦には貞操義務があり、配偶者以外の人と性的関係を持つことは禁じられています。
そのため、法律上における不倫は「配偶者以外の人と性的関係になること」を指すことが一般的です。
2.不倫前から夫婦関係が破綻していたら支払い義務はない
不倫をした原因は関係なく、不倫をすれば慰謝料の支払い義務を負うことになります。
しかし、不倫前から夫婦関係が破綻しているような場合には慰謝料の支払い義務は生じません。
なぜならば、夫婦は婚姻生活の平和を維持する権利や利益が法律によって守られていますが、夫婦関係が破綻していればその権利や利益は存在しないと考えられるからです。
そのため、配偶者以外の人と性的関係を持っても不貞とは認められない可能性が高いです。
セックスレスで不倫しても慰謝料の支払い義務が発生しない場合とは
セックスレスで不倫しても、慰謝料の支払い義務が生じないようなケースもあります。
具体的にどのようなケースであれば慰謝料の支払い義務が生じないのでしょうか?
1.別居期間が長くなっていた
夫婦は同居し、互いに協力して扶助しなければならないことが民法第752条に定められています。
しかし、別居をしていれば夫婦としての同居義務を守れていないことになるの夫婦関係が破綻していると考えられます。
夫婦関係が破綻していれば、不倫慰謝料の支払い義務は生じません。
別居期間が短い場合には夫婦関係の修復ができる可能性があるため、別居期間が長くなっている場合でなければ夫婦関係が破綻しているとは認められない可能性があります。
夫婦関係が破綻していると認められる別居期間は、5年前後が一般的です。
ただし、療養や子供の就学、単身赴任など正当な理由のある別居の場合は、夫婦関係が破綻しているとは認められません。
2.一緒に住んでいたものの、すでに夫婦関係が破綻していた
別居はしていないものの、家庭内別居のような形で夫婦関係が破綻しているようなケースもあるでしょう。
この場合も、夫婦関係の破綻が認められる可能性があります。
お互いに顔を合わせることもなく、全く口も聞いていないような状態が何年も続いているのであれば夫婦関係の破綻が認められる可能性が高いと考えられます。
3.配偶者が勝手に家を出て行ってしまっている、生活費をもらっていなかった
不倫をする前から配偶者が勝手に家を出て行ってしまっているようなケースや、配偶者が働いているにも関わらず生活費をくれなくなってしまっているようなケースもあるでしょう。
このようなケースは法定離婚事由の1つである「悪意の遺棄」に該当します。
同居や協力して扶助するという夫婦の義務を果たしておらず、婚姻生活は破綻していると判断される可能性が高いです。
4.相手とはプラトニックな関係だった
不倫慰謝料を請求されたものの、不倫したとされる相手とはプラトニックな関係だった場合には慰謝料の支払い義務は生じません。
なぜならば、法における不貞は「配偶者以外の人と性的関係を持つこと」と考えられているからです。
そのため、連絡を交換していただけの場合や、数回食事などのデートをしただけでは不倫だと判断されません。
ただし、性的関係のない場合でも、何度もデートを重ねて親密な関係である場合や、二人の関係性が深いことが原因で婚姻生活が破綻した場合には慰謝料の支払いが認められるようなケースがあります。
セックスレスで不倫をして慰謝料請求された場合の慰謝料の相場額とは
セックスレスで不倫をした場合の慰謝料の相場額は、100~300万円と言われています。
セックスレスなど不倫の原因に関係なく、不倫の慰謝料相場額です。
不倫の慰謝料金額は法律で決められているわけではありませんが、過去の判例などを参考にして金額が決められます。
慰謝料金額の増減を決める際には、夫婦の関係性や不倫状況などが反映されます。
婚姻期間が長い場合や、子供がいる場合などは精神的苦痛が大きいと判断されるため、慰謝料も高額になる傾向にあります。
また、不倫が判明しても離婚しない場合に比べると、離婚する場合には慰謝料金額は高くなります。
その他には、不倫期間や性的行為を行った回数、相手の妊娠の有無、反省の態度なども考慮され、不倫の悪質性が高いと判断されるほど慰謝料は高額になると考えられます。
セックスレスで不倫をして請求された慰謝料を減額する方法とは
不倫慰謝料を請求された場合、慰謝料の支払い義務が生じるケースであれば慰謝料の支払いを拒否するわけにはいきません。
もし慰謝料の支払いを拒否すれば、裁判に発展することが予想されます。
しかし、請求された慰謝料の金額が高額であれば減額できないものかと考えるものです。
そこで、不倫慰謝料を請求された場合に減額する方法についてご紹介します。
1.請求された金額の妥当性を考える
慰謝料を請求された場合、まずは請求された慰謝料金額の妥当性について検討してみましょう。
不倫慰謝料の相場金額は100~300万円ですが、300万円になるケースは婚姻期間が長くて不倫の悪質性がかなり高いような場合だと考えられます。
そして、慰謝料請求では多くの場合、減額交渉が行われることを見越して最初の請求金額は高めの設定にされています。
そのため、相場金額よりもかけ離れたような金額を請求された場合には減額交渉を行うことができる可能性が高いです。
2.減額交渉を行う
請求された慰謝料金額が妥当な金額だった場合でも、減額交渉を行うことで慰謝料の金額を減額できる可能性があります。
まずは相手に誠意を込めて反省の意を伝え、減額したい理由を述べましょう。
ご自身の支払い能力を考え、どれくらいならば支払えるのか具体的に相手に提示します。
慰謝料の支払いは一般的には一括で支払うものですが、相手が合意すれば分割で支払うことも可能です。
支払方法も含めて相手と話し合う必要があります。
3.弁護士に相談する
不倫の慰謝料請求をされた場合には、まずは専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで慰謝料の支払い義務の有無や、請求された慰謝料金額の適切性などを知ることができます。
さらには、相手との交渉や書面の作成など全てを任せることができるため、精神的な負担も大幅に軽減されるでしょう。
当事者同士の話し合いは感情的になってしまうため、スムーズに進みにくいものです。
弁護士が代理人になることで話し合いは進みやすいですし、ご本人が交渉するよりも減額交渉が成功する可能性が高まります。
また、離婚に発展するような場合には財産分与や養育費なども含めた手続きも任せられますし、裁判になった場合には代理人として裁判手続きや出廷などを任せることができます。
まとめ
今回は、セックスレスで不倫をした場合の慰謝料請求について解説しました。
セックスレスが原因だから不倫をしても仕方がないというわけではなく、不倫はどんな理由であっても許されません。
不法行為や法定離婚事由になってしまうため、慰謝料や離婚請求に発展する可能性があります。
不倫による慰謝料を請求された場合は、まずは弁護士に相談して今後の見通しを立てるようにしましょう。
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