不倫相手が配偶者と同性だった場合に慰謝料は請求できる?裁判の実例を紹介

配偶者が不倫をした場合、精神的に受ける苦痛に対して慰謝料を請求することができます。
 
もし不倫相手が配偶者と同性だった場合、慰謝料請求はどうなるのでしょうか?
同性との不倫であっても心に傷を負うことは変わりないため、慰謝料請求をしたいと考えるでしょう。
同性との不倫の慰謝料請求は認められるのでしょうか?
 
そこで今回は、不倫相手が配偶者と同性だった場合の慰謝料請求について解説します。
また、同性カップルの場合のパートナーの浮気に慰謝料請求についても併せてご紹介します。
 

不倫相手が配偶者と同性だった場合は不倫慰謝料を請求できるのか?

 
不倫というと、結婚しているにもかかわらず配偶者以外の人と交際をすることを指します。
もし交際相手が配偶者と同性だった場合、不倫として認められるのでしょうか?
不倫や不倫慰謝料、同性同士の不倫慰謝料、それぞれの考え方について見ていきましょう。
 

1.不貞行為の考え方について

 
そもそも不倫とは、どのような行為をすれば不倫になるのでしょうか。
不倫慰謝料を請求するのであれば、まずは不倫の概念について知っておかなければなりません。
 
不倫は法律上では「不貞行為」と呼ばれています。
夫婦には貞操義務が存在し、配偶者以外の人と肉体関係を持つことが禁じられています。
つまり、法律において不倫は「配偶者以外の人と肉体関係を持つ」ことになります。
配偶者が他の人とデートやキスをしただけの場合、不倫にはならないのです。
 

2.不貞行為の慰謝料とは

 
配偶者が不貞行為を行った場合、慰謝料を請求することができます。
慰謝料とは、不法行為によって受けた精神的な苦痛への損害賠償金のことを指します。
不貞行為は夫婦関係の破綻の原因となる行為であり、法で守られている婚姻関係共同生活の平和を維持する権利を侵害する行為です。
 
そのため、不貞行為は違法に権利を侵害する不法行為であると言え、民法第709条に規定される通りに損害賠償である慰謝料を支払う義務が生じます。
そして、不倫は配偶者と不倫相手の二人で行う共同不法行為です。
不倫をした二人に共同で責任を負う義務が生じるため、不倫慰謝料は配偶者と不倫相手の二人に対して請求することができます。
 

3.同性との性的行為も不貞行為に該当する

 
配偶者の不倫相手が異性ではなく同性だったというケースもあるでしょう。
この場合、同性相手でも性的行為が行われたのであれば不貞行為であると言えます。
そして、不貞行為なので慰謝料請求することが可能です。
 
不倫相手が同性であった場合でも、夫婦の平穏な共同生活を維持するための権利を侵害し、精神的苦痛などの損害を与えたということには変わりありません。
そのため、配偶者の不倫相手が異性でも同性でも関係なく、不貞行為があった場合には損害賠償の義務を負うことになると考えられます。
 

同性同士の不倫の慰謝料請求が認められた裁判例

 
配偶者の不倫相手が同性だった場合の不倫慰謝料請求は実際に裁判でも請求が行われたことがあります。
裁判の実例を参考に裁判でどのように考えられ、どのような判決が出ているのか見ていきましょう。
 

1.変化してきている裁判所での考え方

 
今では「LGBT」という言葉も浸透し、性的少数者へのへの理解が深まっている世の中であると言えます。
しかし、昔は性の多様性への理解や配慮は少なく、そのことが裁判にも反映されていました。
あくまでも不貞行為は異性間に限るものであるという考え方であり、同性間の不倫は不貞行為に該当しないという見解だったのです。
そのため、同性間の不倫を不貞行為とし、慰謝料請求をすることは難しいと考えられていました。
 
昭和47年2月29日判決の名古屋地裁では、同性同士の性的行為は不貞行為には該当しないという判断がされたという実例もあります。
こうした性の多様性への理解も時代と共に変化していき、現在は裁判においても理解や配慮が得られるようになっています。
 

2.同性同士の不倫慰謝料請求の実例

 
実際に、同性同士の不倫も民法上の不貞行為であるとして不倫慰謝料の請求が認められたという裁判の実例は近年増加しています。
 
東京地裁平成16年4月7日判決の裁判では、同性同士で性的関係を持つことも不貞行為に含まれるという判断が認められました。
この裁判では、妻が3人の女性と性的関係を持ち、夫が慰謝料請求を行った裁判です。
妻が女性たちと性的関係を持ったことは不貞に該当し、妻は夫に対して慰謝料の支払い義務があるという判決が出ています。
 

同性カップルの場合の不倫慰謝料はどうなるのか?

 
夫婦における不倫の場合、不倫相手の性別は関係なく性的関係があれば不倫慰謝料の請求は認められる世の中になってきています。
それでは、同性カップルの場合はどのような扱いになるのか疑問に思う方もいるでしょう。
もし同性カップル間でパートナーの浮気が生じた場合、慰謝料の請求は可能なのでしょうか?
 

1.同性カップルも内縁関係が認められる

 
世界で同性婚を認める国は増えていますが、日本ではまだ同性婚が認められていません。
しかし、2015年からパートナーシップ制度の導入が自治体ごとに始まり、パートナーシップ制度を導入する自治体が増えています。
 
パートナーシップ制度とは、同性カップルを婚姻に相当する関係と自治体ごとに認める制度です。
これにより、社会保障や税制上の優遇などを受けることができるようになります。
パートナーシップ制度に法的な拘束力はないため法律婚とは言えないものの、同性時カップルも内縁関係と呼べる関係が認められてきているのです。
 

2.内縁関係であれば慰謝料請求が可能

 
不貞行為による不倫慰謝料の請求は、法律婚だけではなく内縁関係でも認められます。
内縁関係とは、法的な婚姻手続きを行っていないものの、双方が婚姻の意思を持って共同生活を営んでいることを指します。
 
内縁関係は法律上の婚姻に準じる関係として扱われるため、内縁関係のパートナーが浮気をすれば不貞になります。
そのため、不貞行為を行ったパートナーには慰謝料を支払う義務が生じます。
 

3.同性カップルにおける不倫慰謝料請求の裁判の実例

 
同性カップルにおける不倫慰謝料請求の裁判も、多くはないものの実例があります。
 
東京高裁令和2年3月4日判決の裁判では、同性間でも婚姻に準ずる関係として法律上保護されるべきだという判断が下されています。
この裁判は同性カップルの女性が不貞行為をしたことを理由とする慰謝料請求を行ったもので、一審の宇都宮地裁真岡支部の判決を二審の東京高裁も支持するという結果になりました。
同性カップルにも男女の内縁関係と同様の法的保護が認められた実例であり、同性カップルへの法律の理解が変化していることが分かる裁判であると言えます。
 

不倫相手が配偶者と同性だった場合の不倫慰謝料の注意点

 
不倫相手が配偶者と同性だった場合の不倫慰謝料請求では、いくつか注意したい点があります。
一般的な不倫慰謝料請求の際に注意すべき点と共通する部分もありますが、同性同士の不倫では複雑になってくる部分もあります。
そのため、慰謝料請求を行う前に事前に注意点について知っておきましょう。
 

1.どこからが性的行為と考えられるのか?

 
同性同士の不倫で最も複雑だと考えられる部分は、不貞行為が成立するかどうかという部分です。
配偶者以外の人と肉体関係を持つことが不貞行為ですが、同性同士ではどのような行為を肉体関係と呼ぶのか判断が難しいと考えられています。
 
過去の裁判では、複数回にわたるペッティング行為に及んだことをもって性的関係を結んだと判断されています。(東京高裁令和2年3月4日判決)
つまり、同性同士では性器の挿入を行わないペッティング行為が不貞だと判断される可能性が高いということになります。
 

2.夫婦関係が破綻していれば慰謝料請求はできない

 
一般的な不倫慰謝料の請求でも共通することですが、不倫前から夫婦関係が破綻しているような場合の慰謝料請求は認められません。
 
夫婦は共同生活を平穏に過ごす権利が法律によって守られていますが、夫婦関係が破綻していれば、この権利は存在しないことになります。
不貞行為は夫婦の権利を侵害する行為だとして損害を賠償する責任が生じるものですが、夫婦関係が破綻しているのであれば侵害される権利もないと判断されるため、不倫慰謝料を請求しても認められないのです。
 

3.配偶者が独身と偽っていれば慰謝料請求できない

 
配偶者が独身と偽って不倫相手と肉体関係を持った場合や、夫婦関係が破綻していると偽っていた場合、不倫相手に対して慰謝料を請求することはできません。
なぜならば、相手に故意や過失が認められないからです。
 
不貞行為は故意や過失があった場合に成立します。
もし相手が既婚者ということを知らない状態で肉体関係を持ったのであれば、配偶者に過失はあっても不倫相手に過失はないということになります。
この場合、配偶者に対してのみ慰謝料を請求することができます。
 

4.異性との不倫よりも慰謝料請求が複雑

 
同性同士の不倫の場合、異性との不倫よりも慰謝料請求は複雑になりやすいと言えます。
なぜならば、肉体関係があったという証明が難しいからです。
 
ホテルに出入りしている写真があったとしても、「飲みすぎて泊っただけ」「ただの友人」など言い訳することができます。
そのため、異性同士の不倫よりも不倫を立証すべき証拠を多く集めなければなりません。
解決までに時間を要す可能性が高いため、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
 

不倫相手が配偶者と同性だった場合の不倫慰謝料請求の手順

 
不倫をした相手の性別を問わず、不倫が事実だった場合には配偶者や不倫相手に対して慰謝料を請求することができます。
不倫慰謝料請求は、次のような手順で行いましょう。
 

1.不貞行為の証拠を集める

 
不倫慰謝料を請求する場合、まずは不貞行為の証拠集めから始めます。
証拠がなければ相手は不貞行為を否定する可能性もありますし、裁判に発展する場合には必ず証拠が必要です。
 
不貞行為の証拠としては、ホテルに宿泊したことが分かる写真や動画、肉体関係があったことを推測できる内容のメッセージ、性行為中の写真や動画などが挙げられます。
ただし、同性同士の不倫の場合は、ホテルに宿泊した証拠だけでは不貞行為として認められない可能性があります。
そのため、不倫をした二人が恋愛関係であることが分かるような証拠も探すようにしましょう。
 

2.相手の素性を探る

 
不倫相手に対して慰謝料を請求する場合には、相手の情報が必要になります。
なぜならば、内容証明郵便で慰謝料請求を送付する際や、裁判を申立てる際に、相手の名前と住所が必要になるからです。
 
住所が分からない場合は、勤務先に送付することや、弁護士に依頼して電話番号から住所を割り出すこともできます。
不倫相手を特定できない場合には、探偵や興信所などに依頼するという手段もあります。
 

3.慰謝料を請求する

 
必要な情報を収集したら、慰謝料の請求を行います。
慰謝料請求を行う方法は、次の通りです。
 

①内容証明郵便を送付する

 
慰謝料を請求する方法に決まりはないため、電話やメールで請求することもできますが、内容証明郵便で送付することが一般的です。
内容証明郵便で請求を送付すれば、裁判に発展した場合に証拠として提出することができます。
そして、相手に慰謝料請求が届いた後は、電話や書面、直接会うなどして協議を行います。
当事者同士の協議は感情的になりやすく、話し合いが進まないというようなケースも珍しくありません。
冷静に落ち着いて対処するようにしましょう。
 

②弁護士に依頼する

 
慰謝料請求は個人で行うこともできますが、弁護士に依頼することもできます。
弁護士に依頼すれば、慰謝料請求の書面作成や内容証明郵便の送付、相手との交渉など全てを任せられます。
とくに相手との交渉は精神的に負担が大きいものなので、弁護士が代理人として行うことで負担が軽減されます。
また、相手と合意に至らず裁判に発展する際にも、そのまま裁判を任せることができます。
 

まとめ

 
今回は配偶者の不倫相手が同性だった場合の不倫慰謝料の請求について解説しました。
 
同性同士の不倫も法律上の不貞行為であり、慰謝料を請求することができます。
また、同性カップルでも内縁関係が認められれば、慰謝料の請求が可能です。
 
性の多様性への理解が広まってきているとはいえ、同性同士の不倫に対する慰謝料請求は複雑なものだと言えます。
同性同士の不倫に対する慰謝料請求を考えている場合には、専門家である弁護士にまずは相談してみてください。

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