婚約破棄されてしまったら慰謝料請求はできる?慰謝料の相場額や注意点を解説

婚約していた相手に婚約破棄されてしまった場合、精神的な苦痛を受けることでしょう。
そのため、慰謝料を請求したいと考える方もいるはずです。
婚約破棄で慰謝料請求は可能なのでしょうか?
今回は、婚約破棄における慰謝料請求が可能なケースや請求できないケースについてご紹介します。
また、慰謝料の相場額や注意点なども併せて解説していきます。
 

婚約破棄されたら慰謝料を請求できるのか?

 
婚約破棄された場合、婚姻破棄で生じた損害に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
ただし、慰謝料などの損害賠償を請求するには「婚約」が成立している必要があります。
婚約破棄とはどのような状態を指し、どのような損害賠償を請求できるのでしょうか?
 

1.婚約破棄とは

 
婚約とは、将来結婚することを約束することです。
婚姻届けのように書面を書いて提出するわけではありませんが、婚約は契約の1種になるため、婚約破棄は契約の不履行に該当します。
婚約解消と婚約破棄はどちらも婚姻が取り消しになることを指しますが、言葉の意味が異なります。
婚約解消は、双方の合意の上で婚約を取り消す際に使用する言葉です。
一方で、婚約破棄の場合は、片方の一方的な婚約の取り消しが行われる際に使用します。
 

2.婚約破棄で請求できる損害賠償の種類

 
婚約破棄はさまざまな理由で行われますが、場合によっては相手に損害賠償を請求することができます。
婚約破棄で請求できる損害賠償は、次の2種類が挙げられます。
 

①財産的損害の損害賠償請求

 
婚約破棄における財産的損害とは、結婚準備に向けて支出した財産の損害を指します。
指輪の購入費、新居の購入もしくは賃料、新居のための生活用品の購入費などが婚約破棄によって無駄になってしまいます。
また、結婚式場や披露宴を予約している場合はキャンセル料が発生するでしょう。
こうした結婚に向けて準備していた際に発生した費用は、婚約破棄を申し出た相手に対して損害賠償請求することができます。
 

②精神的損害に対する慰謝料請求

 
婚約破棄された場合、精神的な苦痛を受けることになります。
その精神的苦痛への損害賠償が慰謝料です。
ただし、慰謝料を請求できるかどうかはケースバイケースになります。
不当な理由で婚約破棄された場合には精神的苦痛を受けることになるため、慰謝料請求を行うことが可能です。
 

婚約破棄で慰謝料請求ができるケースとは

 
婚約破棄であればどのようなケースでも慰謝料請求を行えるわけではありません。
正当な理由なく相手が婚姻の約束を履行しなかった場合や、相手による不法行為があった場合に慰謝料を請求することができます。
婚約破棄で慰謝料請求ができる具体的なケースは次の通りです。
 

1.相手の浮気

 
婚約しているにも関わらず、他の相手と浮気をしていた場合には慰謝料を請求することができます。
ただし、浮気とは法律上の「不貞行為」に該当する場合のみに適用されます。
不貞行為とは、パートナーが自分以外の相手の肉体関係を持つことを指します。
肉体関係を持っていたことが分かる証拠を集め、慰謝料請求を行いましょう。
不貞行為は共同不法行為に該当するため、婚約者だけではなく浮気相手に対しても慰謝料請求を行うことが可能です。
 

2.DVやモラハラ

 
婚約者からDVやモラハラを受けていた場合には、不法行為があったことを理由に慰謝料を請求することができます。
DVやモラハラを受けて医療機関に通院した場合には、その通院費用も併せて請求することが可能です。
医師の診断書などDVやモラハラがあったことを立証できる証拠を集めましょう。
 

3.正当な理由のない婚約破棄

 
正当な理由なく婚約破棄をすれば、婚姻の予約契約の不履行になります。
不当な婚約破棄では契約を不履行にした側が相手に生じた損害を賠償する責任が生じます。
正当な理由のない婚約破棄には、次のことが挙げられます。
 

  • 婚約をしたけれど、気持ちが変わってしまった
  • 他に好きな人ができてしまった
  • 自分の親が結婚に反対している
  • 婚約したものの性格が合わないと思えてきた

 
こうした理由は婚約を破棄する正当な理由ではないと考えられます。
 

婚約破棄で慰謝料請求できないケースとは

 
婚約破棄で慰謝料請求できるケースもありますが、場合によっては慰謝料請求できないこともあります。
婚約破棄で慰謝料請求したいと考えている場合は、慰謝料請求できないケースに該当していないか確認しましょう
 

1.婚約していることを証明できない場合

 
婚約していることを証明できない場合、慰謝料請求することは難しい可能性があります。
相手が「婚約はしていない」と主張すれば、婚約を証明できない限りは慰謝料請求ができません。
そのため、婚約破棄で慰謝料請求するには婚約していることが客観的に見て分かるような証拠が必要です。
慰謝料請求を行う前に婚約していることが立証できる証拠を集めるようにしましょう。
 

2.自身に婚約破棄の原因がある場合

 
婚約破棄の原因が相手ではなくご自身にある場合には、慰謝料請求を行うことはできません。
反対に、相手から慰謝料請求されてしまう恐れがあると考えられます。
浮気をしてしまった場合や、モラハラなどで相手を虐げる発言があった場合などは慰謝料請求を受ける可能性があります。
 

3.双方が婚約破棄に合意している場合

 
当事者同士が互いに婚約を取り消すことに合意しているのであれば、婚約破棄とは言えません。
この場合、婚約解消になります。
婚約解消であればどちらかが損害を賠償する責任は生じないため、慰謝料請求を行うことは出来ません。
 

婚約破棄による慰謝料金額はどれくらいが相場になるのか?

 
婚約破棄の慰謝料請求を行う場合、どれくらいの金額を請求すべきなのか悩む方も多いでしょう。
婚約破棄による慰謝料金額の相場や、金額の増減を決める要件についてご紹介します。
 

1.慰謝料金額の相場について

 そもそも慰謝料は、精神的苦痛に対する損害賠償なので法律で金額が細かく定められているわけではありません。
損害を受けた側が言い値で請求することができます。
しかし、慰謝料にも相場金額はあります。
過去の判例などから相場金額を請求することが一般的であり、婚約破棄の慰謝料金額は50~200万円と言われています。
あまりに高額な請求を行えば相手が支払わないように抵抗するため、調停や裁判になる恐れもあります。
そのため、適正な金額を請求することが大切です。
 

2.婚約破棄の慰謝料の増減を決める要件

 
婚約破棄の慰謝料の相場は50~200万円と幅広くなっていますが、さまざまな事情を考慮して慰謝料の金額は決められます。
慰謝料の増減を決める要素として、次のことが挙げられます。
 

  • 交際期間
  • 婚約期間
  • 妊娠や出産の有無
  • 婚約破棄の理由
  • 社会的地位や資産

 
交際期間や婚約期間が長いほど精神的苦痛は大きいと判断され、慰謝料は高額になることが予想されます。
また、妊娠や出産を伴っていた場合にも、慰謝料は高額になります。
婚約破棄の理由も考慮され、悪質性が高いと判断されれば慰謝料は高額になることが予想されます。
その他にも、社会的地位や資産も慰謝料に考慮される場合があります。
 

婚約破棄による慰謝料請求を行う際の注意点

 
婚約破棄による慰謝料請求を行う場合、やみくもに慰謝料請求を行っても慰謝料請求が上手くいかない可能性があります。
慰謝料請求を行う場合には、しっかりと準備をしておく必要があるのです。
婚約破棄による慰謝料請求を行う場合には、次のことに注意しながら準備を行いましょう。
 

1.婚約の成立を立証する必要がある

婚約破棄による慰謝料請求をするのであれば、まず婚約が成立していたことを証明する必要があります。
婚約は口約束であり、明確に結婚の約束を書面にするわけではありません。
そのため、相手が「婚約はしていない」と主張する可能性もあります。
しかし、証拠があれば婚約関係を証明することができるため、慰謝料請求は認められるでしょう。
婚約の成立を証明するための証拠には、婚約指輪や両親の顔合わせ、結納、式場の予約などが挙げられます。
客観的に見て婚約していることが分かる証拠であれば、婚約の成立が認められやすいです。
 

2.婚約破棄理由の証拠も必要になる

 
婚約破棄の理由が不当であることや、不法行為の場合には慰謝料請求を行うことができます。
しかし、証拠がなければ「婚約破棄には正当な理由がある」と相手が主張する可能性があります。
そのため、婚約破棄に至った理由の具体的な証拠も集めましょう。
不貞行為の場合であれば、ホテルに出入りしている写真や、ホテルや旅行の領収書、肉体関係のあることが分かるメッセージ内容などが証拠として有効です。
また、DVやモラハラの場合には、被害を受けている録音や録画、医師の診断書などが証拠として認められます。
 

3.当事者同士の交渉は難航しやすい

 
婚約破棄による慰謝料請求は、当事者同士で交渉を行うとスムーズには進まずにトラブルに発展することも少なくありません。
相手が慰謝料の支払いを拒否するようなケースもあれば、婚約関係自体を否定するケースもあります。
そして、当事者同士が顔を合わせて話し合いを行えば、感情的になってしまうため言い争いになって話が進まなくなることも多いです。
当事者同士で交渉を行うことは難航しやすいため、専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。
 

4.合意した場合には合意書を作成すべき

 
婚約破棄の慰謝料請求の話し合いがスムーズに進んだとしても、相手が慰謝料を支払うまでは問題が解決したとは言えません。
もし口約束であれば、後から「慰謝料を支払う約束はしていない」と相手が主張する可能性があります。
そのため、婚約破棄の慰謝料請求で合意した場合には、必ず合意書を作成するようにしましょう。
合意書があれば相手が慰謝料の支払いを拒否した場合、裁判で合意したことの証拠として提出することができます。
 

結婚破棄による慰謝料請求を行う方法

 
結婚破棄による慰謝料請求を行う場合、どのように請求すべきか悩む方も多いでしょう。
慰謝料請求を行う機会は日常生活の中では少ないため、どのような手段で行えばいいのかご存じない方も多いはずです。
慰謝料請求を行う方法は、大きく分けると次の3種類があります。
ご自身に合った方法を検討してみてください。
 

1.当事者同士の話し合い

 
まずは、当事者同士で行う慰謝料請求です。
電話やメールなどでも慰謝料請求を行うことはできますが、内容証明郵便を使用して相手に郵送で送ることが一般的です。
内容証明郵便を使用することで、慰謝料請求を行ったことや、相手が慰謝料請求の書面を受け取ったことを証明することができます。
そして、慰謝料金額や支払い方法など当事者同士で話し合いを行い、合意に至れば合意書を作成します。
当事者同士の話し合いで行う慰謝料請求は費用が発生しませんが、話し合いが難航しやすいというデメリットがあります。
 

2.弁護士を代理人に立てた交渉

 
弁護士に依頼して慰謝料請求を行うという方法もあります。
弁護士に依頼すれば、内容証明による請求手続きや交渉など全てを任せることができます。
弁護士が代理人になることで相手に本気度も伝わりますし、話し合いをスムーズに進めやすいというメリットがあります。
また、弁護士は法的な知識や交渉の経験などにも長けているため、ご自身で行う慰謝料請求よりも高額な慰謝料の請求が期待できます。
相手と合意に至らずに裁判へ進む場合にも、そのまま裁判手続きも依頼することが可能です。
 

3.裁判による請求

 
裁判所に申立てを行い、慰謝料請求することも可能です。
しかし、多くの場合は当事者同士の話し合いや弁護士との交渉で合意に至らなかった場合に利用されます。
もちろん最初から裁判で請求してはいけないという決まりはないので、最初から裁判で請求することも可能です。
裁判で請求を行えば適正な慰謝料金額を請求することができ、判決や示談で確実に結果を得られるというメリットがあります。
裁判所の結果に反して相手が慰謝料の支払いを行わなかった場合には、財産の差し押さえを行うことができます。
 

まとめ

 
今回は婚約破棄の慰謝料請求について解説しました。
婚約破棄の理由が不当な場合や、不法行為であった場合には慰謝料を請求することができます。
しかし、婚約破棄による慰謝料請求は、婚約の成立の証明や相手との交渉など、ご自身だけの力では難しい点も多いものです。
少しでも早くスムーズに解決できるように、弁護士のサポートを受けることを検討してみてください。

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