妻の不倫が発覚したら|慰謝料請求が可能な場合と相場を解説

「妻の不倫が発覚し、慰謝料を請求することを考えているが、実際にどれくらい請求できるのだろう?」
「不倫した妻や不倫相手に慰謝料を請求したいが、実際、どのようにすればよいのだろう?」
妻や不倫相手に怒りを覚えながら、慰謝料を支払わせることで、何とか解決しようという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
不倫に関する問題はなかなか他人に相談しづらく、誰にも相談できないまま、一人で抱え込んでしまう方も多くいらっしゃいます。
 
今回は、妻の不倫で慰謝料が請求可能な場合、妻が不倫した場合の慰謝料の相場、慰謝料請求する方法、妻との離婚を考える際の注意点などについて解説します。
 

妻の不倫で慰謝料が請求可能な場合とは

 
妻が不倫していたからといって、必ずしも慰謝料を請求できるわけではありません。請求が認められるには、次に挙げる要件に当てはまる必要があります。
 

1.妻の不貞行為を立証できる証拠がある場合

 
特に裁判になった場合、慰謝料の支払いが認められるためには、不貞行為があったことを立証できる証拠が必要です。妻と不倫相手との間に、肉体関係があったことを客観的に証明できるものを準備しておかねばなりません。
裁判に至らなくても、相手に不倫の事実を認めさせたり、交渉を有利に進めたりするためには、できるだけ言い逃れできないような決定的なものを用意しておくのが望ましいでしょう。
具体的には、妻と不倫相手がホテルを出入りするところを撮影した写真や動画、肉体関係があったことが伺える内容のメールやSNSの文面、不倫の事実を認めた会話や通話の録音データ、二人でホテルを利用したり、旅行に行ったりしたことがわかる領収書やクレジットカードの明細などが有効です。
 
自分で証拠を準備するのが難しい場合は、弁護士に相談してみることをおすすめします。ここで例として挙げたもの以外にも、証拠として有効なものを教えてもらえることもありますし、職務上の権限によって証拠となる資料を取り寄せてもらえることもあります。
さらに、提携している探偵事務所に依頼して、調査の上、証拠となる写真や動画を撮影してもらえることもあるでしょう。
 

2.不倫以前の夫婦仲は良好であった場合

 
慰謝料の請求が認められるのは、不倫発覚前の夫婦仲が良好である場合に限られます。
以前から、夫婦仲が悪かった場合は、慰謝料の請求は難しいか、金額が相場よりも低くなる可能性が高いでしょう。妻の不倫によって、夫婦に与えた損害は小さいとみなされてしまうためです。
特に、妻が不倫関係を持つ以前から別居していた場合など、既に夫婦関係が破綻していたとみなされる場合は、慰謝料の請求は難しいでしょう。
 

3.時効が成立していない場合

 
時効が成立している場合は、慰謝料の請求はできません。時効については、民法第724条で次のように定められています。
 
「第724条 【不法行為による損害賠償請求権の期間の制限】
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。」
 
つまり、妻が不倫していることが発覚した時点から、3年が経過している場合(消滅時効)と、妻が不倫をしてから20年以上経過している場合(除斥期間)は、時効が成立しているため、慰謝料の請求はできません。
 

4.自由意思に基づいて関係を持った場合

 
慰謝料の請求は、妻が自分の意思で不倫することを選び、相手と関係を持った場合に限り可能です。暴行や脅迫によって、無理に関係を持たされた場合は、慰謝料は請求できません。
また、不倫相手についても同様で、妻が相手を脅迫するなどして無理に関係を持った場合は、慰謝料の請求はできません。
 

5.不倫相手に請求する場合、相手に故意・過失があること

 
不倫相手に慰謝料を請求する場合、相手に故意や過失があったことも要件となります。これは、慰謝料の支払いの義務について定めた同法第709条に依ります。
 
「第709条(不法行為による損害賠償) 第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
 
つまり、慰謝料の支払いは、不倫相手が、「法律上保護される利益」である夫婦の利益を、故意又は過失によって侵害した場合に、認められるのです。ここでいう故意とは、不倫相手が、妻が既婚者であることを知っていたのに関係を持ったことを、過失とは、不倫相手が、妻が既婚者であると確認する機会は十分あったはずなのに、それを怠ったことをいいます。相手に故意や過失があったことが認められれば、慰謝料の請求は可能です。
 

妻が不倫した場合の慰謝料の相場とは

 
妻が不倫した場合に請求できる慰謝料の金額は数十万円から300万円程度が相場です。その金額は、さまざまな要因によって増減します。
 

1.慰謝料金額について定めた法律はない

 
慰謝料金額をどのように算出するのかについて、明確に定めた法律はありません。そのため、いくら請求しようと法律上は問題ないことになります。
しかし、あまりに高額な金額を請求しても、相手の支払い能力の問題もあり、あまり現実的ではありません。
また、弁護士に依頼したり、裁判になったりした場合は、過去の類似事件の裁判例を参考に算出されます。
 

2.不倫の慰謝料相場は数十万~300万円程度

 
不倫による慰謝料の相場は数十万円から300万円程度です。金額に開きがありますが、これは次項で挙げるような、さまざまな要因によって金額が決められることに依ります。
 
芸能人が離婚する際に、莫大な金額の慰謝料の支払いが報道されることもあるため、意外と相場が低いと感じる方もいるかもしれません。しかし、芸能人の場合でも、不倫の慰謝料としての支払い金額はそこまで高額ではないはずです。財産分与の金額も含めて、慰謝料と報道してしまうため、そのような莫大な金額となっているのです。
 

3.慰謝料金額が増減する要素とは

 
慰謝料の金額は、さまざまな要因によって決定します。ここで挙げる以外にも、増減の要素となり得ることはあるので、気になる場合は、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
 

①不貞行為発覚後の夫婦関係

 
妻の不貞行為が発覚した後に、夫婦関係がどうなったかは慰謝料金額に大きく影響します。発覚後も、夫婦関係が継続しているなら、不倫によって受けた損害は小さいと判断され、慰謝料金額は数十万~100万円と低くなります。
一方、発覚後に別居や離婚に至った場合は、不貞行為が夫婦関係に与えた影響は甚大であると判断され、100~300万円程度と高額になることが多いでしょう。
 

②不倫発覚前の夫婦関係

 
妻の不倫が発覚する以前の夫婦関係も影響します。夫婦関係が円満だった場合は、増額傾向に、破綻寸前であった場合は減額傾向にあります。
 

③婚姻期間

 
婚姻期間が長いほど、不倫によって被る精神的苦痛が大きいとみなされ、慰謝料は増額となることが多いでしょう。逆に、婚姻期間が3年以下など短期間である場合は、減額になる傾向があります。
 

④不倫期間や回数

 
不倫期間が1年以上、回数が20回を超えている場合は、悪質であるとみなされ、慰謝料は増額傾向にあります。一方、不倫期間が数カ月から1年未満と短く、不貞行為を働いた回数も数回程度と少ない場合は、悪質性は低いとみなされ、減額となることが多いでしょう。
 

⑤夫婦間の子の有無

 
夫婦の間に、特に幼い子どもがいる場合は、不倫をされた側の受ける精神的苦痛が大きいと判断され、増額傾向になることが多いでしょう。
 

⑥不倫相手との子の妊娠の有無

 
妻と不倫相手との間に子どもができた場合、夫が受ける精神的苦痛は、極めて大きいものと推察されます。そのため、慰謝料は増額となることが多いでしょう。
 

⑦妻や不倫相手の支払い能力

 
どんなに増額要素が重なって、慰謝料金額が大きくなっても、請求相手に支払い能力がなければ、減額になることがあります。逆に、支払い能力が十分にあると判断される場合には、増額になることもあります。
 

⑧浮気の否認

 
不貞行為があったことを裏付ける、決定的な証拠があるにもかかわらず、不倫の事実を認めない場合は、夫の心情を踏みにじったと判断され、増額となることがあります。
 

⑨夫側の落ち度

 
モラハラをしていたとか、過去に浮気をしていたなど、夫側にも落ち度があり、妻が不倫に走ってしまった事情も、ある程度の理解を得られるような場合には、慰謝料は減額になる傾向にあります。
 

4.慰謝料の二重取りはできない

 
不倫とは、妻と不倫相手による共同不法行為です。慰謝料金額は、不倫という不法行為について算出されるもので、その支払い義務は、妻と不倫相手が連帯して負うことになります。
 
たとえば、慰謝料金額100万円とされるケースでは、妻に対して100万円、不倫相手に対しても100万円の合計200万円を支払わせる二重取りはできません。
この場合、どちらが負担しようと、また、どんな負担割合であろうと、請求できる慰謝料は合計100万円となります。
 

実際に慰謝料請求するには

 
それでは、実際に慰謝料を請求するには、どのような手順で行えばよいのでしょうか。自分で請求する場合でも、弁護士に依頼する場合でも、まずは相手方との交渉からスタートします。話がまとまらなければ、訴訟提起するのが一般的な流れです。
 

1.まずは当事者間で交渉

 
慰謝料を支払ってもらうためには、まずは、当事者同士で交渉することから始めます。交渉は電話やメールで行ってもかまいませんし、直接会って話してもかまいません。
しかし、互いに感情的になりやすいこともあり、直接会ったり電話で話したりするよりは、手紙やメールなどの文書でやり取りをする方が無難でしょう。文書でやり取りをすれば、後でトラブルになった際にも、証拠として使えます。
 
手紙の場合は、内容証明郵便を利用するのも一つの方法です。
内容証明郵便とは、郵便局が、「いつ、だれが、誰に対して、どのような内容の文書を送ったか」ということを証明してくれるもので、裁判に発展した場合には、有効な証拠にもなります。普通の書簡を出すのとは異なり、決められた形式に則って準備する必要がありますので、利用する際には、郵便局のホームページで確認するようにしましょう。
また、郵便局に足を運ばなくても、インターネットを利用して内容証明郵便を投函できる、電子内容証明のサービスもあります。
 
交渉がまとまった場合は、後からトラブルになるのを防ぐためにも、必ず示談書を作成するようにします。慰謝料金額や支払い期日、支払い方法、その他の条件など、話し合いで決まった内容をもれなく、明確に記載しておきましょう。
また、自分で示談書を作成する場合は、内容に不足があったり損をしたりしないためにも、一度弁護士に相談することをおすすめします。
 
参考サイト
内容証明|日本郵便株式会社
 
e内容証明(電子内容証明)
 

2.交渉がまとまらなければ裁判

 
当事者同士での交渉が決裂した場合は、裁判を起こして解決を図ります。裁判になると、判決までに1年以上要することがほとんどです。ある程度の時間がかかることは覚悟しておいた方がよいでしょう。
また、裁判手続きは、自分で行うことも可能ですが、裁判所へ提出する文書を準備する必要があったり、判決までに何度も裁判所へ出廷したりする必要があり、時間と労力を要します。
 
特に裁判になった場合は弁護士への依頼を検討することをおすすめします。弁護士に依頼すれば、すべての手続きを弁護士が代理で行ってくれますし、有効な証拠を適宜用いて効果的に主張し、裁判をより優位に進めてくれるでしょう。問題に費やす時間や労力が格段に減り、望む結果を得られやすくなるのです。
 

4.妻との離婚を考える際の注意点

 
不倫した妻とは、離婚を考えているという人も少なくないでしょう。ここでは、離婚するにあたって知っておくべき注意点を紹介します。
 

1.別居中も婚姻費用を負担する必要がある

 
妻との別居を考えている場合、別居期間ができるだけ短くなるよう、可及的速やかに離婚を成立させることをおすすめします。妻の収入が少ない場合、婚姻関係が続く限り、別居期間中も婚姻費用を分担する必要が生じるためです。
離婚に向けての話し合いが難航し、長期化しそうな場合は、裁判所に調停や訴訟を申し立てて、できるだけ早期解決を図るのがよいでしょう。
 

2.財産分与に応じる必要がある

 
離婚理由が妻の不倫だけであり、こちらに全く落ち度がなかったとしても、離婚の際は財産分与に応じる必要があります。不倫と離婚による財産分与は、法律上は別に考えるためです。
財産分与の割合は法律で定められているわけではありませんが、裁判になった場合は、婚姻後に築いた財産を1対1の割合で分け合うことになるでしょう。
 

3.子の親権獲得は難しいことも

 
子どもがいる場合、離婚にあたって、どちらが親権を取得するかという問題も浮上します。法律上は、どちらが取得しても問題ありません。しかし、裁判になった場合は、父親が不利となることが多いでしょう。令和元年度の司法統計によると、裁判離婚において、父親が親権を獲得している割合は、全体の1割程度にとどまります。もちろん、取得している事例もあるので、全く希望がないわけではありませんが、難しいのが実情です。
 
参照サイト
『離婚』の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち『子の親権者の定め』をすべき件数  親権者別  全家庭裁判所(裁判所ホームページ)
 

4. 親権者が妻の場合、養育費を渡す必要がある

 
さらに、親権者が妻となった場合、養育費として毎月、一定の金額を妻に支払うことになることが多いでしょう。養育費は、経済力のある方が支払うことになるため、大抵の場合、夫が支払うことになるためです。
金額については、法律で定められているわけではなく、それぞれの収入や実際に支払い可能な金額、子どもに必要な額など、さまざまな要素を考慮して決められます。
 
妻に支払っている気がして、不満に思うこともあるかもしれませんが、子どものためと割り切るしかありません。
また、養育費を支払う代わりに、子どもとの面会交流を確保するといった取り決めができることもあります。
養育費や面会交流など、子どもに関することで妻との話し合いが上手くいかない場合は、弁護士に相談してみるのもよいでしょう。経験豊富な弁護士に依頼すれば、できるだけ希望が叶うよう、代わりに妻と交渉してくれます。
 

まとめ

 
今回は、妻の不倫で慰謝料が請求可能な場合、妻が不倫した場合の慰謝料の相場、慰謝料請求する方法、妻との離婚を考える際の注意点などについて解説しました。
 
妻の不倫が発覚したら、慰謝料を支払って償わせることで、区切りを付けたいと考える人も、多くいらっしゃるでしょう。慰謝料をきちんと支払わせるためには、請求可能かどうかを確認の上、決定的な証拠を準備の上行うことが必要です。
 
また、納得のいく結果を得るためにも、早めに弁護士に依頼するのもよいでしょう。離婚や不倫問題に精通した弁護士に早めに依頼すれば、相場よりも高額の慰謝料を勝ち取ってもらえることもあります。相手と接触する必要もないので、精神的な負担もかなり取り除かれるはずです。
妻の不倫によって慰謝料の請求を考えている場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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