不倫の誓約書には効力がある?誓約書を作成するメリットや作成時のポイントを解説

不倫の誓約書には効力がある?誓約書を作成するメリットや作成時のポイントを解説

配偶者が不倫をしていた場合、不倫を理由に離婚することができます。
しかし、離婚しないで夫婦関係の修復を目指すのであれば、「二度と不倫はしない」といった内容の誓約書を作成することが多いでしょう。
また、不倫相手にも不倫関係を清算するように誓約書を書いてもらうようなこともあります。
こうした誓約書に効力はあるのでしょうか?
 
今回は、不倫の誓約書の効力や作成時のポイントについて解説します。
不倫の誓約書を作成する前に、こちらの記事を読んで参考にしてください。
 

不倫誓約書に効力はあるのか?

 
配偶者や不倫相手に誓約書を書いてもらおうと考えているものの、誓約書にどれくらいの効力があるのか疑問に思う方も多いでしょう。
不倫誓約書を書けば、必ずその内容を守らないといけないという効力はあるのでしょうか?
不倫誓約書の効力について解説していきます。
 

1.法的効力はない

 
不倫誓約書は、「不倫関係を清算する」「不倫の慰謝料を支払う」といった不倫問題を解決するための約束事を記載した契約書の一種です。
契約書のようなものなので裁判の判決書のような法的効力はなく、約束を守るという意思表明を記したものだと言えます。
そのため、相手が約束を守るように強制することはできません。
 

2.裁判をすれば有力な証拠になる

 
不倫誓約書自体には法的効力がありませんが、裁判の有力な証拠になります。
相手が誓約書内容を守らなかった場合には、裁判になるようなこともあるでしょう。
その際に誓約書を提出すれば、不倫を認めたことや慰謝料を支払う約束をしたことを証明することができます
そのため、不倫誓約書は後から役に立つ可能性も高く、作成しておくべき書面だと言えます。
 

不倫誓約書を作成するメリットとは

 
不倫誓約書には法的効力がなくても、作成しておくメリットが多数あります。
不倫誓約書を作成するメリットを知り、そのメリットを生かせるような誓約書内容を作成するようにしましょう。
 

1.不倫があった事実を証拠として残せる

 
不倫があったという事実を誓約書に記載しておけば、不倫があったという証拠として残すことができます。
不倫の事実関係の記載では、「誰が」「いつ」「誰と」「どれくらいの期間、どのくらいの回数」不貞行為を行ったのかということを具体的かつ簡潔に記すことが大切です。
具体的に記しておけば、将来的に離婚や慰謝料を請求することになった際に不倫の証拠として提出でき、有利に進めることができるでしょう。
 

2.不倫関係の清算を約束してもらえる

 
不倫誓約書に不倫関係の清算条項を加えることで、不倫関係を解消してもらう約束を取り付けることができます。
不倫発覚後も配偶者と離婚しないのであれば、不倫関係の清算は誓約書に入れておくべきだと言えます。
なぜならば、口頭で「二度と会わない」と約束をしても、言った・言わないというトラブルが将来的に起こる可能性が残ってしまうからです。
 
また、「正当な理由のない連絡や接触を認めない」といった接触禁止条項も加えておけば、不倫相手が配偶者に連絡をしたり近づいたりすることを防げます。
不倫関係の清算や接触禁止条項をより効果的にするために、「罰金○○円」「賠償金○○円」などのペナルティも記載しておくとよいでしょう。
 

3.不倫の再発予防になる

 
一度不倫が発覚すれば、再び不倫をするのではないかと不安に思う方も多いのではないでしょうか。
配偶者が再び不倫をしないように、誓約書に「次に不倫をすれば離婚に合意して慰謝料を○○円支払う」「不貞を再び行った場合には、慰謝料として○○円の支払いを約束する」などという記載をしておくとよいでしょう。
書面に残しておくことで配偶者も不倫しないように心掛ける可能性が高まり、不倫の再発防止に繋がると考えられます。
 

4.精神的プレッシャーを与えられる

 
口頭での話し合いだけではなく、誓約書として書面を作成することは不倫をした当事者に対して精神的なプレッシャーを与えることができます。
口だけならば何とでも言うことができますし、口約束や話し合いだけでは相手が真剣に捉えない可能性もあります。
しかし、不倫の事実を認める内容の文書を作成するということは、慰謝料の発生する不法行為を行った証拠を残すことです。
そのため、自分に非があることや過ちを実感し、誓約書内容を守らなければならないという気持ちが強まると考えられます。
 

5.慰謝料の支払いに合意した証拠になる

 
相手が不倫を認めて慰謝料の支払いに合意した場合には、誓約書に慰謝料金額や支払い方法を決めて記載しておきましょう。
そうすれば、慰謝料の支払いに相手が合意したという証拠になります。
もし相手が約束通り慰謝料の支払いをしなかった場合には、裁判で慰謝料の支払いに合意したという証拠として提出することができ、裁判でも有利になるでしょう。
 

6.将来的に離婚する場合は有利に交渉できる

 
不倫誓約書を作成した時には夫婦関係を修復しようと考えていたとしても、関係修復が上手くいかずに離婚に至ってしまうようなケースもあります。
そうした場合には、誓約書を証拠として有利に使うことができます。
結果的に配偶者の不倫が離婚の原因になるため、配偶者が離婚を拒否しても裁判で離婚を請求することが可能です。
また、不倫を理由に慰謝料の請求もできるため、離婚を有利に進められるでしょう。
 

不倫誓約書を作成する場合のポイント

 
不倫誓約書を作成する場合には、あとから後悔することやトラブルが起こらないようにするために、慎重に作成する必要があります。
不倫誓約書を作成する前に、次のポイントを押さえておきましょう。
 

1.相手が合意しなければならない

 
誓約書はあくまでも相手が誓約書内容を理解し、その上で合意しなければなりません。
無理強いして誓約書にサインをさせるようなことがあれば、その誓約書内容は無効になってしまいます。
 
また、脅迫してサインさせるようなこともあってはなりません。
脅迫は犯罪であり、刑事罰が科せられてしまう恐れがあります。
誓約書の作成時には相手に必ず内容を理解してもらい、合意を得るようにしましょう。
 

2.法外な慰謝料の金額は無効になる可能性がある

 
誓約書の作成時に相手が慰謝料の支払いに合意していたとしても、誓約書に従わずに支払いを拒否すれば、裁判で争うことになります。
この際に、法外な慰謝料の請求を行っていた場合は、裁判で無効になってしまう恐れがあります。
なぜならば、法外な慰謝料は公序良俗違反と判断されてしまう可能性があるからです。
公序良俗違反とは倫理や正義に反する行為のことを指し、公序良俗に違反する事項を目的とする法律行為は無効になることが法律で定められています。(民法第90条)
 
不倫慰謝料の相場は50~300万円になるため、800万円や1000万円など高額すぎる慰謝料を請求していた場合には公序良俗違反と判断されてしまう恐れがあります。
結果的に相場金額での支払いになる可能性があるため、最初から法外な慰謝料の金額の請求は避けるべきだと言えるでしょう。
 

3.違反した場合のペナルティについて記載する

 
誓約書を作成しても、誓約書自体に強制力はないため約束が守られないようなケースもあります。
こうしたトラブルを避けるために、違反した場合のペナルティを決めておくことをおすすめします。
「違反があった場合は罰金○○円を支払う」などペナルティを決めておけば、相手は誓約書内容に違反しないように努める可能性が高まるでしょう。
もし違反行為があったような場合には、誓約書内容の通りに罰金などのペナルティを求めることが可能です。
 

4.署名や押印は必ず本人にしてもらう

 
誓約書には、必ず本人の署名や押印が必要です。
せっかく誓約書を作成しても、署名や押印など本人の名前の記載がなければ「誰と」誓約をしたのか明確にすることができません。
そうすれば、誓約書内容が認められずに無効になってしまうでしょう。
 
また、本人ではなく他者が署名や押印を偽造すれば、私文書偽造として訴えられてしまう恐れがあります。
署名や押印は本人が誓約書内容に合意した証になるので、必ず本人から署名と押印をもらうようにしてください。
 

5.不倫相手には求償権の放棄に合意してもらう

 
不倫相手に誓約書を書いてもらう場合、求償権の放棄に合意してもらうようにしましょう。
求償権とは、自分の責任を超える損害賠償を支払った場合、共同不法行為者に支払いすぎた損害賠償金を請求することができる権利です。
例えば、本来であれば不倫慰謝料が100万円だった場合、不倫相手と不倫した配偶者の二人が100万円の慰謝料を50万円ずつなど分担して支払います。
 
しかし、配偶者と離婚しない場合は不倫相手にだけ慰謝料を請求することになるため、慰謝料の全額である100万円を請求するケースもあるでしょう。
この場合、不倫相手が求償権を行使すれば、払いすぎた50万円を不倫した配偶者に支払ってもらうことができます。
こうした求償権のトラブルを避けるためにも求償権の放棄に合意してもらい、誓約書に記載しておくことが大切です。
 

不倫誓約書の内容が守られなかった場合はどうなるのか?

 
不倫誓約書を作成したものの、相手が必ず約束を守るとは限りません。
誓約書内容に違反する行為があった場合、どのように対処することができるのでしょうか?
不倫誓約書の内容が守らなかった場合の対処法として、次の3つの対処法が挙げられます。
 

1.相手に誓約書に書かれたペナルティを要求できる

 
誓約書の作成時に、違反行為があった場合のペナルティを決めているケースもあるでしょう。
この場合、誓約書に書かれたペナルティを相手に要求することができます。
ただし、誓約書には法的拘束力があるわけではないため、ペナルティの実行も強制することは出来ません。
相手にペナルティに応じてもらうように要求し、相手が応じるのであればペナルティの罰金などを受け取ることができます。
 

2.相手が応じない場合は裁判で請求できる

 
誓約書を作成したにも関わらず相手が慰謝料の支払いなどに応じない場合には、裁判で請求することが可能です。
裁判の際には誓約書を有力な証拠として提出することができます。
不倫の事実を記載して慰謝料の支払いに合意している内容の誓約書であれば、誓約書内容の通りに慰謝料を支払うように裁判で認められる可能性も高まります。
 
裁判の和解や判決で慰謝料の支払いが決まったにも関わらず相手が従わない場合には、強制執行により相手の財産を差し押さえることが可能です。

 

3.弁護士に依頼して請求してもらえる

 
誓約書内容が守られない場合には、弁護士に依頼して請求してもらうという方法もあります。
ご自身で請求するよりも弁護士が請求する方が、心理的なプレッシャーを与えることができるというメリットがあります。
そして、法的な観点から相手を説得できるため、問題解決をスムーズに目指しやすくなるでしょう。
相手が応じない場合でも、弁護士に依頼していればそのまま裁判手続きなども任せることができます。
 

不倫誓約書の効力を高めるためにできること

 
不倫誓約書の作成時には、誓約書の効力を高めるためにできることがあります。
相手が誓約書内容に応じないというトラブルを予防するためにも、誓約書の作成時には次の方法で作成することを検討してください。
 

1.公正証書で作成する

 
公正証書とは、公証役場で作成することができる誓約書です。
公正証書で作成すれば公文書として扱うことができるため、ご自身で作成するよりも証明力が高まります。
また、慰謝料の支払いに関する誓約書内容の場合は、強制執行認諾文言付きにすることで裁判の判決書や和解書のような法的効力を持つようになります。
そのため、相手が慰謝料の支払いを行わない場合、裁判をすることなく強制執行による差押えが可能です。
 

2.弁護士に相談する

 
不倫誓約書の作成は、弁護士に依頼して作成してもらうことも可能です。
弁護士が作成すれば、将来的なトラブルを避けるために法的な知識を踏まえて必要な条項を誓約書に取り込むことができます。
誓約書内容を決めるために相手と行う協議なども任せることができ、慰謝料に関する交渉も有利に進めやすくなるでしょう。
 

まとめ

 
今回は不倫誓約書の効力や、誓約書作成時のポイントについて解説しました。
不倫誓約書は将来的に起こり得るトラブルを防ぎながら、夫婦関係の修復を目指すための大切な書類です。
相手が誓約書内容を守ってくれない場合には、裁判で有力な証拠として提出することができます。
しかし、まずはトラブルが起こらないように誓約書を適切に作成することが重要なので、不倫誓約書の作成時には弁護士のサポートを受けましょう。
また、不倫誓約書作成後に起こったトラブルも弁護士に相談することが可能です。
誓約書に関する悩みや問題は一人で抱え込まずに、法律の専門家である弁護士に相談してみてください。

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