不貞行為とは?不貞行為の基準や不貞行為により起こり得るトラブルを解説
不貞行為とは、「不倫」の法律用語です。
配偶者が不貞行為をしているかもしれない、配偶者が不貞行為を行った、など不貞行為に関する悩みを抱えている方もいるでしょう。
不貞行為の基準は法律上で明記されているわけではありませんが、過去の判例などから判断することができます。
今回は不貞行為の基準や、不貞行為によって起こり得るトラブルについて解説します。
不貞行為とは
不貞行為とは、婚姻関係を結んでいる者が配偶者以外の異性と自由意志により肉体関係を持つことを指します。
法律で夫婦には貞操義務があると考えられており、配偶者以外と肉体関係を持つことは認められません。
夫婦は平穏に婚姻生活を維持する権利が法律上で守られていますが、不貞行為は権利を侵害する行為となり、民法709条に定められている「不法行為」に該当します。
不貞行為の基準
不倫や浮気というと個人によって判断基準は異なるものです。
しかし、個人の基準が法律上で不貞行為として認められるわけではありません。
法律で不貞行為の基準が細かく設定されているわけではありませんが、不貞行為の判断基準は次の通りになっています。
1.婚姻関係や内縁関係の有無
不貞行為として認められるには、法律上で保護される婚姻関係があることが前提になります。
結婚をしていない恋人関係の場合、恋愛は自由意志の基で行われるため、法律による規制はありません。
そのため、恋人関係の場合には不貞行為が成立しないことになります。
一方で、夫婦関係は法律で保護されているため、不貞行為が成立します。
内縁関係(事実婚)も法律婚と同様の関係として扱われるため、パートナーが他の人と肉体関係を持つことは不貞行為だといえます。
また、恋人関係でも婚約関係であれば不貞行為として認められますが、婚約しているという客観的事実や証拠が必要です。
2.肉体関係の有無
不貞行為の判断基準では、肉体関係の有無が大きな目安となります。
夫婦には貞操義務があるという考えから、配偶者以外の人と肉体関係を持つことを不貞行為だと判断します。
そのため、ただメッセージのやり取りをしている関係や、キスや手を繋ぐなどのスキンシップだけでは不貞行為とは認められません。
ただし、肉体関係がない場合でも関係性が深いと判断されれば、不貞行為が認められるケースもあります。
3.不貞行為前の夫婦関係の状態
不貞行為前から夫婦関係が破綻している状態であった場合、不貞行為は認められません。
夫婦は「婚姻共同生活の平和を維持する権利や利益」が法律上で守られています。
しかし、夫婦関係が破綻していれば、法律上で守るべき権利や利益は存在しないことになります。
そのため、配偶者が他の人と肉体関係を持った場合でも、権利の侵害にはならないので不法行為である不貞行為とは判断されません。
こんなケースは不貞行為として認められる?
不貞行為の基準について紹介しましたが、実際にどのようなケースで不貞行為が認められ、どのようなケースでは不貞行為が認められないのでしょうか?
不貞行為が認められるのかどうかケース別に見ていきましょう。
1.肉体関係はないがデートをしていた場合
配偶者が他の異性と肉体関係はないものの、デートをしていた場合はどのようになるのでしょうか?
ただデートをして、手を繋いだりするくらいのスキンシップを行っただけという場合であれば不貞行為とは言えません。
しかし、肉体関係がなくても婚姻関係を破綻させるような関係では不貞行為が認められたケースもあります。
何度も長期間に渡ってデートを繰り返し行い、相手と婚姻の約束をして配偶者に対して離婚を要求してきたような場合であれば、婚姻関係を破綻させる不法行為であると認められる可能性が高いでしょう。
2.一度きりの肉体関係だった場合
たった一度きりの肉体関係であった場合でも、配偶者以外の異性と肉体関係を持って夫婦の貞操義務に違反したことには変わりありません。
そのため、一度きりでも不貞行為として認められます。
ただし、一度だけの関係であることを相手が主張していたとしても、実際には複数回の不貞行為を行っている可能性があります。
そのため、一度きりという主張をそのまま信用するのではなく、証拠を集めて判断するようにしましょう。
3.別居中だった場合
不倫開始前に夫婦が別居していた場合には、夫婦関係の状態が判断基準とされます。
夫婦関係がすでに破綻しており、離婚に向けた別居中なのであれば、婚姻共同生活の平和の維持の権利や利益は存在しないと判断されるため、配偶者以外の異性と肉体関係を持っても不法行為は成立しません。
しかし、夫婦関係を修復するための別居中である場合や、単身赴任などやむを得ない事情により夫婦が別に生活をしている場合には、配偶者以外の異性と肉体関係を持つことは不法行為になります。
4.結婚していないが同棲している場合
法的な婚姻関係を結んでいないものの同棲をしているという場合には、内縁関係(事実婚)や婚約関係があれば不貞行為による不法行為は成立します。
しかし、婚約関係もなく、恋人関係の場合にはパートナーが他の異性と肉体関係を持ったとしても不法行為にはなりません。
不貞行為が発覚した場合にできること
配偶者の不貞行為が発覚した場合、どのようなことができるのでしょうか?
不貞行為が事実であれば、法律に基づいて次のことを行うことができます。
1.離婚
法律上で離婚が認められる原因を「離婚事由」と呼び、民法770条に5つの離婚事由が定められています。
その離婚事由の1つが不貞行為です。
離婚をする方法は、夫婦が合意に至れば離婚理由は関係なく、話し合いで離婚をすることができます。
しかし、一方が離婚を拒否すれば裁判で離婚をすることになり、離婚事由が必要になります。
不貞行為は離婚事由に該当するため、配偶者が離婚を拒否したとしても法定上で離婚することが可能です。
2.慰謝料請求
不貞行為は夫婦の権利や利益を侵害する不法行為です。
不法行為とは故意や過失により相手に損害を発生させる行為であり、その損害を賠償しなければならないことが民法709条に定められています。
不貞行為の場合は、不貞行為により精神的苦痛を受けることになるため、慰謝料を請求することができます。
また、不貞行為は共同不法行為になるため、不貞行為を行った当事者二人に責任が生じます。
そのため、配偶者と不倫相手の二人に慰謝料を請求することができます。
3.不倫相手に故意や過失がなければ慰謝料は請求できない
不貞行為が事実であれば、配偶者だけではなく不倫相手にも慰謝料を請求することができます。
しかし、不倫相手に故意や過失がない場合には、不法行為とは認められないため慰謝料を請求することができません。
不貞行為における故意や過失とは、既婚者であることを知らずに肉体関係を持ってしまった場合や、既婚者であること知り得ることができなかった場合を指します。
つまり、配偶者が独身であると偽って肉体関係を持った場合や、独身であると思わせるような行動を取りながら関係を継続していたような場合には不倫相手に故意や過失がないため慰謝料を請求することはできません。
不倫慰謝料の相場と金額の決め方
不貞行為が発覚したため慰謝料を請求したいと考える場合、請求する慰謝料の金額を決めなければなりません。
不倫慰謝料はどのように金額を決めているのでしょうか?
慰謝料請求の相場を知り、慰謝料請求をする際の参考にしてください。
1.不倫慰謝料の相場とは
不倫の慰謝料の金額の決まりは明確に法律上で定められているわけではありません。
不倫慰謝料の相場金額は50~200万円となっており、金額の幅が大きくなっています。
不倫慰謝料の場合、不倫の悪質性や夫婦の状態など総合的な部分を考慮した上で金額が決まります。
精神的苦痛が大きいと判断されるほど慰謝料金額は高額になり、精神的苦痛が少ないと判断されれば慰謝料金額も少なくなります。
2.慰謝料の増減を決める要素について
不倫慰謝料の金額の増減を決める要素は、大きく分けると「夫婦の関係性」と「不倫の状況」の2種類になります。
夫婦の関係性では、不倫発覚後に離婚や別居をするのであれば精神的苦痛が大きいと判断されるため、慰謝料は増額傾向にあります。
また、不倫前の夫婦の関係性や子供の有無、婚姻期間の長さなども慰謝料に反映されます。
不倫の状況では、不倫期間の長さや回数、妊娠の有無、不倫への積極性が慰謝料の増減に反映されます。
不倫の悪質性が高いと判断されるほど慰謝料は増額される傾向にあります。
不貞行為が発覚した場合に行うべきこと
配偶者の不貞行為が発覚すれば、怒りや悲しみなどで冷静にはいられなくなってしまうものです。
しかし、不貞行為にきちんと対応するためには冷静に対処することが大切です。
配偶者の不貞行為が発覚した場合には、落ち着いて次のことを行いましょう。
1.不倫の証拠を集める
不貞行為が事実であるのか確認するためにも証拠を集めましょう。
証拠がない状態で相手に問いただしたとしても否定されてしまう可能性が高いですし、証拠を隠滅する恐れもあります。
そのため、相手に問いただすよりも前に証拠を集めることが大切です。
また、慰謝料請求や離婚を行う場合には、不貞行為が立証できる証拠が必要になります。
相手と肉体関係があることを証明するための証拠として、ホテルに出入りしている写真や、旅行やホテルのレシート、肉体関係があることが分かるメッセージなどが挙げられます。
通話記録やメッセージのやり取り、プレゼントや食事などデートに行ったレシートなど小さな証拠も組み合わせることで有効な証拠になります。
2.今後の対応について考える
配偶者が不貞行為を行った場合、配偶者と不倫相手に対して慰謝料請求を行うことができます。
ただし、配偶者と離婚しない場合には配偶者に慰謝料請求を行っても家計から支払われることになるので、メリットは少なくないと言えます。
また、不貞行為は法定離婚事由になるため、配偶者の同意を得られなくても裁判で離婚をすることが可能です。
離婚をする場合には離婚したい旨を相手に伝える前に、財産の確認や離婚後の住まいや仕事の確保など、離婚に向けた準備を行っておきましょう。
とくに子供がいる場合には、親権や養育費などについてもしっかり考えておかなければなりません。
3.不倫相手の情報を集める
不倫相手に慰謝料請求を行う場合には、不倫相手の情報が必要です。
慰謝料請求はメールや電話でも行うことができますが、一般的には内容証明郵便を使って行うことが多いです。
内容証明郵便は裁判になった際に証拠として提出することができ、相手に裁判前の段階であることを伝えることができます。
内容証明郵便や裁判で慰謝料請求を行う場合には、相手の名前と住所(住まいが分からない場合は勤務先でも可能)が必要です。
もし相手の住所が分からない場合には、電話番号が分かっていれば弁護士に依頼することで弁護士照会を利用して住所を調べることができます。
4.弁護士に相談する
配偶者の不倫が発覚した場合、少しでも早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
慰謝料請求や離婚をする際の手続きや交渉だけではなく、今後の対処について法的なアドバイスをもらうことができます。
ご自身で慰謝料請求や協議離婚を行うことも可能ですが、弁護士が介入することで話し合いがスムーズに進みやすくなっています。
当事者同士の話し合いは感情的になりやすく、トラブルが深刻化してしまう恐れもあります。
円滑に手続きを進め、少しでも有利な条件で交渉するためにも専門家である弁護士にサポートしてもらいましょう。
まとめ
今回は不貞行為について解説しました。
配偶者が不貞行為を行っていたことが判明すれば感情的になってしまいがちですが、慰謝料や離婚をするのであれば冷静に対処することが大切です。
一人で全てを解決することは精神的な負担も大きくなってしまうため、不倫に詳しい弁護士に相談してサポートしてもらうことをおすすめします。
相談で話すだけでも気持ちは軽くなりますし、今後の対処についても心強いサポートを受けられます
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