内縁関係の相手が浮気したら|慰謝料請求の条件と相場・手順を解説
不倫「内縁関係にあるパートナーが浮気した。慰謝料を請求できるのか知りたい」
「内縁関係のパートナーの浮気が発覚し、慰謝料を請求したいが、どのような条件を満たせば請求できるのだろうか」
内縁関係にあるパートナーが浮気していたことを知り、怒りや悲しみなどのつらい気持ちを何とか晴らそうと、苦しんでいる人もいるのではないでしょうか。
内縁関係のパートナーの浮気に関する問題は、他人には相談しづらいものです。かといって、自分一人で解決するのも難しいもので、つらく苦しい気持ちを抱えながらも身動きが取れずにいる方も多くいらっしゃいます。
今回は、内縁関係とはどのようなことをいうのか、浮気をされたら内縁関係でも慰謝料請求はできること、内縁関係で慰謝料請求をするのに必要な条件、慰謝料を請求できない可能性が高い場合、内縁関係で浮気された場合の慰謝料の相場と請求方法などについて解説します。
内縁関係とは
内縁関係とは、法律上はどのように捉えられるのでしょうか。まずは、内縁関係の定義と、婚姻関係や同棲との違いについて確認しておきましょう。
1.内縁関係の定義
内縁関係とは、婚姻届の提出はしていないものの、共に生活し、夫婦同然の関係にあることをいいます。
より具体的には、次のような状態であることが挙げられます。
- お互いに結婚するつもりがあること
- 生計を同じにしていること
- 住民票や社会保険など、公的機関に提出する書類に「未婚の妻(夫)」又は「見届けの妻(夫)」などと届け出ていること
- 互いの親戚と付き合いがあり、周りに夫婦として認識されていること
入籍していないものの、社会的には夫婦として認知されている状態であると捉えるとよいでしょう。
2.婚姻関係との違い
婚姻関係と内縁関係の決定的な違いは、婚姻届を提出しているかどうかということです。
婚姻届を提出していない内縁関係の場合、法律上は夫婦ではありませんから、パートナーが本来受けられるはずの利益を受けられないこともあります。たとえば、遺産相続を必ずしもできるとは限りませんし、遺族年金を受け取れないこともあります。
また、内縁関係にある二人の間にできた子は、内縁の夫の非嫡出子とされ、子どもの親権は必ず内縁の妻に帰属することになるのも、婚姻関係を結んだ場合との大きな違いです。
一方、法律上の夫婦でなくても、夫婦としての義務は発生するとみなされます。民法第752条で定められた同居義務、協力義務、扶助義務の他、貞操義務を負います。そのため、どちらかが不貞行為をした際には、不法行為による損害があったとして、慰謝料を請求することができるのです。
さらに、内縁関係解消に至った場合には、法律婚をしている夫婦が離婚する場合と同様、内縁関係中の共有財産について財産分与が認められます。
3.同棲との違い
同棲と内縁関係との大きな違いは、本人たちに婚姻の意思があるかどうか、周囲から夫婦として認知されているかどうか、にあるといえます。
同棲とは、双方に婚姻の意思があることは確認できず、また、周囲からも夫婦とはみなされていない状態で、一緒に暮らしていることをいいます。
たとえば、一緒に暮らし、生計を共にしていても、法事など、お互いの親族行事に参加することはせず、結婚式を挙げたこともなければ、周囲は夫婦としてはみなしにくく、単なる同棲と判断されるでしょう。
また、住民票などの公的機関への届け出書類や、部屋の賃貸借契約書など、何らかの契約を締結する際に作成する書類の続柄欄の記載も同棲と内縁関係では異なります。
同棲の場合は、「同居人」と記載することが多く、婚姻の意思がそこにあったとは認めがたい表記をします。
一方、内縁関係の場合は、「夫(未届)」、「妻(未届)」というように、婚姻届は未提出であるものの、既に夫婦として届け出をすることが多いでしょう。
浮気をされたら内縁関係でも慰謝料請求可能
法律上夫婦ではない内縁関係の場合でも、婚姻の意思があること、ほとんど夫婦同然の生活をしていることが認められる場合には、法律婚と同様に貞操の義務があります。
貞操の義務は、夫婦の義務を定めた同法第752条の中には含まれていません。しかし、裁判上の離婚について定めた同法第770条一項のうちには含まれており、法律上の夫婦の義務とみなされています。すなわち、貞操義務違反は、不法行為として扱われるのです。
そして、不法行為によって被った損害について、加害者に慰謝料の請求をできることは、同法第709条と第710条で、次のとおり定められています。
「第709条(不法行為による損害賠償) 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
「第710条(財産以外の損害の賠償) 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」
すなわち、浮気をした側は、不貞行為という不法行為によって、法律上保護されるべき夫婦の利益を侵害したとして、パートナーに対し、その損害を賠償する責任を負います。ここでいう損害とは、浮気をされたことでパートナーが受けた精神的苦痛のことであり、710条にあるとおり、財産以外の損害である精神的苦痛についても、賠償の責任がある対象として認められます。
内縁関係であっても、パートナーの浮気によって精神的苦痛を受けた場合は、慰謝料を請求できるのです。
内縁関係で慰謝料請求をするのに必要な条件
内縁関係にあるパートナーの浮気が発覚した場合、実際に慰謝料を支払ってもらうためには、いくつかの条件を満たす必要があります。以下に挙げる条件のうち、どれが欠けても請求できないので、よく確認しておきましょう。
1.内縁関係にあることを証明できること
まず、二人の関係が内縁関係にあったことを証明しなくてはいけません。
特に慰謝料の支払いをめぐって裁判になった場合は、内縁関係にあったことを、ただ主張するだけでは足りず、客観的にそのことがわかる証拠をもって立証する必要があります。二人に婚姻の意思があり、周囲に夫婦として認知されていたことがわかるものを準備しましょう。
具体的に有効な証拠としては、次のようなものが挙げられます。
- 続柄の欄に「妻(未届)」、「夫(未届)」と記載のある住民票や賃貸借契約書
- 生計を共にしていることがわかる記録など
- 結婚式を挙げた場合、その写真
- 周囲に夫婦として認知されていたことがわかる証言 など
特に裁判になった場合、相手方は、内縁関係にあったのではなく、単に同居していただけだという主張をすることも少なくありません。上で紹介した証拠がある場合は有利ですが、ない場合には、内縁関係にあったことの立証は難しく、慰謝料の支払いが認められにくくなってしまうものです。立証が難しい場合は、一度弁護士に相談してみた方がよいでしょう。
2.不貞行為の事実を証明できること
慰謝料を支払ってもらうためには、相手方の行った不法行為によって損害を被ったことを示さねばなりません。すなわち、不貞行為があったことを立証する必要があります。
不貞行為というのは、肉体関係のことを指します。単に二人で食事に行っただけとか、手を繋いだり、キスをしたりしたとかいうだけでは、不貞行為とは認められず、慰謝料の請求はできません。肉体関係があったことをうかがわせるような証拠が必要です。
具体的には、次のようなものが有効でしょう。
- 内縁関係にあるパートナーと浮気相手がホテルから出るところを撮影した写真や動画
- 肉体関係があったことがうかがえる内容のメールやSNS
- 浮気の事実を認めた会話や通話の録音データ
- 二人でホテルを利用したり、旅行したりしたことがわかる領収書やクレジットカードの明細
こういった証拠の入手が難しい場合は、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。手元にあるものの中で、証拠として活用できそうなものが他にないか相談にのってもらえたり、職務上の請求権によって、自分では入手できない資料を入手してもらえたりするでしょう。
また、提携している調査会社と協力して、確実な証拠を手に入れられることもあります。
3.浮気相手に故意や過失があったこと
特に、パートナーではなく、浮気相手に対して慰謝料を請求する場合、相手に故意や過失があったことが認められなければなりません。
同法第709条で定められているとおり、慰謝料の支払いが認められる場合とは、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害」された場合に限られます。すなわち、浮気相手が、内縁関係にあるのを知りながら、又は、確認できた状況であったにもかかわらず、確認を怠って、パートナーと関係を持ったことが、客観的に見て明らかでなければなりません。
逆に、パートナーが「自分は独身である」と偽り、さらに結婚の約束までして相手と関係に及んだ場合や、パートナーが相手を脅すなどして、無理に関係を持った場合、参加条件が独身であることというお見合いパーティーなどで知り合って交際に至った場合などは、故意・過失が認められにくく、慰謝料の請求も認められないこともあるでしょう。
特に内縁関係の場合、故意や過失について争われることも多いものです。
慰謝料を請求したものの、故意や過失が認められず、徒労に終わることのないよう、あらかじめ当事者に確認してから、慰謝料の請求に向けて動くのが賢明でしょう。
また、過失があったかどうかについては、専門家でなければわからないことも多いものです。実際に、素人には過失がないと思えるような場合でも、裁判になると過失が認められず、慰謝料の請求が認められる例も多々あります。判断に迷う場合は、一度弁護士に相談し、見解を聞いてみるとよいでしょう。
4.時効が成立していないこと
有利な証拠があっても、時効が成立している場合は、慰謝料の請求はできません。慰謝料請求についての時効は、同法第724条で次のように定められています。
「第724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効) 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。」
すなわち、不貞行為があったことを知ってから三年以内、又は不貞行為があったときから20年以内に請求しなければならないのです。
内縁関係でも慰謝料を請求できない可能性が高い場合
内縁関係にあること、そして不貞行為があったことを立証できたとしても、慰謝料の請求が認められない可能性が高いケースもあります。これらのケースは、判断が難しい場合も多いので、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
1.内縁関係が破綻していた場合
不貞行為があったよりも前に、内縁関係が破綻していた場合は、慰謝料を請求しても認められる可能性は低いでしょう。パートナーの浮気によって、浮気された側が被る損害は小さいと判断されるためです。
不貞行為があったよりも前から、相当長く別居期間が続いていたり、連絡を取っておらず、互いに交流がほとんどなかったりといった場合は、内縁関係が破綻しているとみなされる傾向にあります。
しかし、内縁関係の解消については、判断が難しいこともありますので、一度弁護士に尋ねてみるとよいでしょう。
2.重婚的内縁関係だった場合
内縁関係にあったパートナーが、法律婚をしている状態でありながら、内縁関係にあった「重婚的内縁関係」の場合も慰謝料の請求は難しいことが多いでしょう。
しかし、法律婚をしている妻と既に関係が破綻した後に、内縁関係に至った場合は認められることもあります。
この場合も、判断が難しいところですので、個別のケースについては弁護士に相談してみるのが望ましいでしょう。
内縁関係で浮気された場合の慰謝料の相場と請求方法
内縁関係にあるパートナーに浮気された場合、慰謝料はどれくらい支払ってもらえるものなのでしょうか。慰謝料を請求する際の、実際の手順も併せて知っておきましょう。
1.慰謝料の相場
内縁関係のパートナーに浮気された場合、支払いを認められる慰謝料の相場は、数十万~300万円くらいです。
金額は、さまざまな要因によって増減します。その要因の一つは、浮気が発覚したことで、二人の関係にどんな影響を与えたかということです。内縁関係の解消にまで至った場合は、高くなることが多いでしょう。
その他にも、内縁関係にある期間、浮気の回数や期間、子どもの有無などが影響します。
2.慰謝料の請求手順
当事者に、慰謝料を請求するにあたって、まず大切なことは、有効な証拠を準備しておくことです。十分な証拠がなければ、相手方が事実を認めず、慰謝料の支払いを拒否する可能性があります。確実な証拠を準備の上、行動を始めるようにしましょう。
そして、相手への請求は、まず当事者同士で交渉することから開始します。相手方が交渉に応じ、無事、話がまとまった場合は、後になってトラブルが起きるのを防ぐために、示談書にして残しておくのが望ましいでしょう。相手方から慰謝料の支払いを受けたら、無事終了です。
しかし、実際には、相手方が交渉に応じなかったり、感情的な言い争いになって、一向に話が進まなかったりすることも多いものです。
当事者同士での交渉が難しいと感じたら、早めに弁護士に依頼することを検討しましょう。弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として、相手方との交渉を行ってくれます。相手方と顔を合わせたり、連絡を取ったりするストレスもなくなりますし、話し合いがスムーズに進む可能性もあるでしょう。
また、プロに任せることで、相場よりも高い金額の慰謝料を支払ってもらえるようになることもあります。
交渉がまとまらなかった場合は、裁判を起こすことになります。裁判になると、事件が終了するまで、1年以上の時間を要することも多く、解決までに時間がかかります。裁判費用もかかるので、できるだけ交渉の段階で話をまとめたいところです。
交渉で話がこじれて、裁判を起こさざるを得ない状況になる前に、早めに弁護士に依頼するのが望ましいでしょう。
まとめ
今回は、内縁関係とはどのようなことをいうのか、浮気をされたら内縁関係でも慰謝料請求はできること、内縁関係で慰謝料請求をするのに必要な条件、慰謝料を請求できない可能性が高い場合、内縁関係で浮気された場合の慰謝料の相場と請求方法などについて解説しました。
内縁関係の場合は、法律婚と異なり、不貞行為があったことに加えて、二人の関係が内縁関係にあったことを証明する必要があります。内縁関係にあったことについては、立証が難しく、実際の裁判などでは、争われることが多いものです。自分一人で解決することが難しいと思ったら、できるだけ早めに弁護士に相談しましょう。早急に、望む結果になるよう手を尽くしてくれるはずです。
つらい状況から抜け出すためにも、ぜひ、弁護士を頼ってください。
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